#750/1159 ●連載
★タイトル (sab ) 09/10/21 18:20 (181)
She's Leaving Home(12)改訂版ぴんちょ
★内容
まん喫を出てもまだ7時だった。センター街の中に入って行く。お腹が減って
きた。「はなまるうどん」があった。あそこのザルうどんだったら食べられる
のだけれども、麺つゆにはカツオだしが入っている。だからampmで醤油を
買ってから「はなまるうどん」に入った。ザルうどんにマイ醤油をかけて、ア
ミノタブレットを飲んで夜ごはん終了。
文化村通りに出てドンキホーテの方に歩いて行く。だんだんどきどきしてきた
な。どんな男が来るんだろう。ドンキの隣のフレッシュネスバーガーのところ
に公衆電話があった。万が一の為にヨシコに電話をしておこうかなあ。今、話
したくない。まん喫からメールを入れておけばよかったなあ。まだ時間があっ
たのでドンキの中をうろついていたらPC売り場にネットにつながっている端
末があった。hotmailにログインしてみたら入れた。ヨシコにメールを送る。
「ちょっとこれからミッション・インポッシブルみたいな事するの まあ一応
相手の番号を教えておくね 080−**** 任務完了したらもう一回メー
ルするね 夜中の12時頃になると思うけれど 音信不通になったらマサルに
でも頼んで 親には絶対言わないで ごめんね ごめんね」怒るだろうなあ。
ちりめん亭の前で待っていたら8時ジャストに男が現れた。本当にユースケサ
ンタマリアに似ていてもっとひ弱にした感じ。あれだったらもし武力衝突になっ
ても私が勝つんじゃなかろうか。例えばヒデオだったら30秒ぐらいでバラバ
ラにしちゃうんじゃなかろうか。
「愛さん、ですよね」近寄ってきて男が言った。
「そうです」
「じゃあ行こうか」
男と私は円山町に入って行った。クラブエイジアの裏のラブホに入る。ロビー
のパネルで部屋を選んで下の取り出し口から鍵を取る。エレベータに乗ると
「緊張してる?」と男が言った。
「ちょっとは」
「じゃあビールでも飲もうか」
部屋に入ると男は枕元の所へ行って有線放送を入れた。「俺、こういうの好き
なんだよ。ラテン」
それからベッドに座ってビールを飲んだ。
「ここら辺ってホテルばっかりなんですね」
「来たことないの?」
「ないですよ」
「敬語使わなくっていいよ」
「街中がヴィーナスフォートみたい」
「彼氏居ないの?」
「居たけど別れちゃった。最初から付き合ってなかったかも知れない」
「若いといいよなぁ」
「お兄さん、幾つ?」
「幾つに見える」
「35ぐらい」
「まあそんなもんかなぁ」というと男はネクタイを外しだした。「じゃあそろ
そろいい」
私も脱ぐ。パンティ1枚になった所で「これも?」と聞いた。
「ぜんぶ、ぜんぶ」男が脱がしにかかってくる。「すっぽんぽんになって」男
は枕元のスイッチを調整して明かりを全開に明るくした。
「恥ずかしいよ」
「綺麗なおっぱいしてるねえ。こういう境目のないびーちくが若いびーちくな
んだよ」
「すけべ」
「お尻も見せて」と言うと手をまわして来てしばらくさすっていたが、お尻の
割れ目に指を入れて来てそのまま性器にまで這わせて来る。それからベッドに
押し倒されて乳首をなめられた。
「硬くなってきたよ。こうやると感じる?」唇を硬くしてこりこりはさむ。
鳥肌が立っているだけだよ。ぞっとすれば乳首は立つんだよ。それから今度は
性器を舐められた。喉の乾いた旅人が洞窟の壁をつたう一筋の水を吸うように
吸って吸って吸いまくる。1万円じゃあ安かったなあと思った。この上フェラ
しろなんて言ってきたら断ろうかなあ。しかし男はコンドームをして挿入して
30回ぐらいピストン運動をするとフィニッシュした。それから黙って冷蔵庫
からリポビタンDを2本持って来ると一本私にくれた。
「これ甘くて美味しい」私は言った。「こんなちょっとでも80キロカロリー
もあるんだ」しかしユースケは私に背中を向けて絨毯の上に胡坐をかいている。
タバコに火を付けて、有線放送のラテン音楽に合わせて鼻歌を歌い出した。な
んでさっきまであんなになれなれしくしたのに突然スルーするの? 強姦魔っ
て射精した後に突然豹変して殺人鬼になると言う。私は恐る恐る聞いた。「な
んで黙ってんの」
「うーん。男はねえ、抜けた瞬間に脳内に化学物質が分泌されてころっと人間
が変わっちゃうんだよ」
「ふーん」
「♪カーリ、パーチャンゲーロ カーリ たりらーらりーら」ラテンの曲にあ
わせて何か歌っている。
「じゃあ、私帰ろうかなあ」
「俺、コロンビアの女と結婚する積もりだったんだ」突然ユースケが言った。
「はあ?」
「愛ちゃんには全然関係ないけどね。今ちょっと脳内化学物質の変化で昔の事
を思い出してさあ。その女はコロンビアのカリって町の出身でね。結婚してい
たら今頃子供は5歳って感じかなあ。♪カーリ、パーチャンゲーロ カーリ
たりらーらりーら」
「何で結婚しなかったの」ほとんど付き合いで聞いた。
「俺には結婚する資格は無いよ」
「結婚に資格なんていらないでしょう。相手がいいっていえばそれで」
「まあなんつーかなあ。自分語りしていい?」
「いいけど。別に」
それからユースケはタバコを吸い吸い、ラテン音楽に耳をかたむけ、そして語っ
た。「結婚する資格が無いっていうのは、日本人の女に関してなんだけれども
ね。俺は本当にそう感じていて結婚出来ないでいたんだよ。結婚ってさあ、健
やかなる時も病める時も死が二人を分かつまで、って感じでしょう。俺にはそ
んな価値無いし。それにずーっと一緒にいたらすぐにつまらない男ってばれて
捨てられちゃうよ。捨てられてもいいんだけれども、この女にふられてもこの
女に限った事とはとは思えないんだよねえ。この女で駄目なら他の女も駄目だ
ろうって思えるんだよ。そうすると、なんか女全体に吟味されている気分になっ
て来るんだよねえ。そうするとそれはもうジャッジだから、審判だから。だか
らもう絶対にしくじるわけには行かない。しくじったら全ての女を失う。でも
こっちは生身の人間だからしくじる場合もあるでしょう。そうなると死が二人
を分かつまでなんて誓いはたてられないんだよ。もし俺の一生分の所得とか病
気とかが分かっていればそれに見合う女と結婚出来るだろうけれどもねえ。お
かしいだろう。まだ現実に結婚相手がいないのにその女を養う為の一生分の所
得の計算をするなんて。だけれどもこれは日本人の素人の女に限った事なんだ
よなあ。コロンビアの女だったら成り行きで結婚しても後は野となれ山となれ
でさあ。そのカリの女とはスナックで知り合ったんだけれども、下ネタ平気?
下ネタ平気?」と聞いてきた。私はうなずく。「ダイアナをね、その女ダイ
アナっていうんだけれどもね、車で連れ出したらゲロ吐かれて。でも汚くなかっ
たんだよ。本当に下ネタになっちゃうけれどもラティーナのうんこは汚くない
んだよねえ。日本風な上品な女のうんこって許せないって感じない? 鈴木杏
樹とか大塚寧寧のうんこと山瀬まみとか千秋のうんことどっちが汚いと思う?
なんとなく千秋のうんこは許せるって感じしない? やっぱり日本的な上品
なものはうんこやまんこを嫌うんだよ。そうだよ。審判をするからだよ。審判
は公正でなければならないから。死が二人を分かつまで付き合う価値があるか
どうかを審判する女は清潔でないといけないんだよ。そうだよ。間違いないよ。
すげーよ。世界広しと言えども何故うんこがくさいかを説明した奴なんて居な
いだろう。セックスのタブーだって似た様なものなんだぜ」リポビタンDが効
いたのかにわかに元気づいてきた。
「じゃあなんでそのコロンビアの女と結婚しなかったの」
「そりゃあ俺が客だったから向こうが嫌だったんじゃないの?」と言うと男は
自分の股間を見た。「又立ってきた。俺、抜かないで3回行けるんだよね」
「ダメダメ」と私。「1万だったら1回でしょ」
「あと5千円払うから」
「ダメ」
「じゃああと7千円」
「ダメ」
「じゃあいくら」
「携帯買って」と私は言った。「プリペイドの」
「ええっ。いくらするの?」
「1万5千円ぐらい」
「それじゃあホテル代入れたら3万の出費じゃない。そんな金ないよ。携帯を
買う金、半分自分で出してよ」
「なに?なに? 1万円私にくれて、そこから7500円出せって事? そう
したら2500円しか残らないじゃない」
「だって1万5千円の携帯が手に入るんだからいいじゃない」
という訳でもう一回やってからユースケとホテルを出てドンキに行った。ユー
スケはブランド品を買う時には表参道の直営店じゃなくてドンキの方がいいん
だって。店内をぶらぶらしていたらスナック菓子のコーナーがあってスナック
菓子が棚から溢れそうなぐらいにパンパンに並んでいる。それを南米系の女の
人が目を丸くして見ていた。彼女が故郷においてきた息子はバナナと川魚しか
食べたこと無いんだろうなあとユースケが言っていた。100円均一コーナー
に行ったら100円の缶詰を入念に見ているおばあさんがいて可哀想だったな
あ。100円の缶詰を買うのにも慎重にならなければいけないなんて。それか
ら100円のブドウを一房買っていた。旦那さんは先に死んじゃったのだろう
か。
携帯を買ってもらってユースケとは分かれた。それから自分の金でミックスビー
ンズの缶詰と羊羹を買って、まん喫に持ち込んで食べた。
それから私は考えた。今夜ドンキで見かけた南米の女の人の息子は可哀想だな
あ。あと100円均一のおばあさんも可哀想だなあ。あとよくネットに出てく
るバナー広告のワンクリックで救える命があるというのも可哀想だなあと思う。
でもそうやってみんなが救われれば又牛や豚が殺される。何でみんなはその痛
みには無関心なんだろうと考えた。
ブログで読んだピンさろの女ってこんな感じ。
就職する資格がないと思っている。六本木ヒルズのお仕事にびびる
六本木ヒルズのガラスは透明な結晶の様なもの
だけれども自分は動物で汗臭かったりするからヤンキーと付き合う
オートバックスなら大丈夫
ユースケってこんな感じ。
結婚する資格がないと思っている。清潔な日本女性との結婚にびびる
清潔な日本女性にうんちは似合わない
スナックのコロンビア人と付き合う
ドンキホーテなら大丈夫
ピンさろの女とかユースケの求めている世界は透明な結晶の様な星座の様な
世界で、手の油もうんちも許さない。そういう世界は牛や豚の痛みを隠すん
じゃないのか。そう考えて凄く納得した。それで寝ようと思ったが、リクラ
イニングを倒したところでヨシコに電話しなくちゃと思い出した。スカイプ
で電話する。
「もしもし、私」
「あんた」いきなりヨシコに怒鳴られた。「何やってんの。一体何やってん
の」
「今日、新しい携帯を買ったから番号を教えるよ」
「いいよ、そんなの教えないでも。そんなの聞いたらそれも言わなくちゃな
らないじゃん」
「誰に?」
「アキコの親に決まってんじゃん」
「言わないでよ」
「言うに決まってんじゃん。こんなの言わなかったらこっちまで共犯になっ
ちゃうじゃん」
「言わないでよ」
「言うに決まってんじゃん。捜索願いを出したら警察沙汰になるんだよ」
「だったらうちの親に電話するんだったら警察沙汰にしないでって言ってお
いてよ」
「なに言ってんだー、今すぐ自分で電話しろ」