AWC カセットとともに  談知


        
#203/569 ●短編
★タイトル (dan     )  04/10/31  05:59  ( 52)
カセットとともに  談知
★内容
 最近音楽はカセットで聴くことが多い。もちろんCDもたくさん
持っているのだけれど、なぜかCDでは聴く気が起きないのだよな。
どういうわけかカセットのほうが落ち着いて聴ける。
 最近電気店へいってもカセットが付いているミニコンポなどまっ
たくなくなっている。全部MDに変わっている。カセットはもう完
全に過去のものとなったのだろう。しかし、ワタシのなかではまだ
まだ現役である。
 カセットのほとんどはワタシが録音したものである。レコードか
ら、あるいはCDから録音した。FMから録音したものもある。む
ろん市販のミュージックテープもあるのだが、そのほとんどはワタ
シが録音している。つまりカセットひとつひとつにそういう歴史が
込められている。だからただ買ってきただけのCDより思いが深い
のだろう。
 カセットの出始めの頃の勢いを思うと、これがもう過去のものと
なったというのが信じられぬ思いがする。それまでの大きく重いレ
コードの代わりにカセットがでて、コンパクトで軽く音楽が聴ける
ことになった。あのハンドリングのよさはまさに新時代という気が
したものだ。
 もっともカセットは最初は音楽用ではなかった。会話を録音する
ために作られたようである。それが日本メーカーの開発で、音楽も
録音するようになった。もちろん最初はレコードなどよりかなり音
が悪かった。しかし、こんな小さなものからでるにしてはまずまず
ではないか、という評価があった。
 カセットが爆発的に普及したのは、やはりラジカセがでてからだ
ろう。ラジカセというのはラジオとカセットが一体化した機械であ
る。これによりラジオの音を録音するのが簡単になった。とくにF
Mが付くようになって、これを録音するのがもの凄く流行った。こ
れをエアチェックというのだが。エアチェックすると、音楽がただ
で録音して聴くことができた。
 当時の学生など貧乏なものである。中学生高校生でも月の小遣い
はせいぜい1000円くらいだったのではないか。ところがレコー
ドはその当時でも2000円くらいしたはず。これではレコードを
買うことなど夢のまた夢である。そんなところへ、エアチェックで
音楽を録り放題のラジカセができたのだから、爆発的に売れたのも
当然だろう。
 またカセット自体もどんどん高音質化していった。オーディオの
カセットデッキもどんどん高価に高音質になっていった。ナカミチ
というカセットデッキ専門メーカーなど50万もするカセットデッ
キを販売したこともあった。しょせんカセットに50万という感じ
もあったが、とにかくそんな感じでどんどんカセットは進化してい
った。
 ワタシ自身はせいぜいラジカセを買うのがやっとのことだったが、
しかしあのカセットが進化していく過程をつぶさに経験している。
だからカセットに対する思い入れが強いわけである。ひとは皆歴史
の子である。歴史を体験してそれに捕らわれるわけである。ワタシ
とカセットの結びつきもそういうことだ。これにくらべると、CD
というのは、明らかに途中からでてきたものである。ほとんど中年
に達してからでてきたものだ。それだけ身に付いてない。若いころ、
心が柔らかく何でも受け入れていたころでてきたカセットとは違う。
 レトロといわれようと、今後もカセットとともに生きていくのだ
ろう。カセットを聴きながら生きていくことだろう。それがワタシ
の音楽生活である。





前のメッセージ 次のメッセージ 
「●短編」一覧 談知の作品 談知のホームページ
修正・削除する コメントを書く 


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE