AWC 夏のせいかしら  談知


        
#190/569 ●短編
★タイトル (dan     )  04/10/17  04:52  ( 28)
夏のせいかしら  談知
★内容
 「ま、そのおう」と田中角栄みたいに言ってみる。昔はよく角栄
の物まねをしたものだ。角さんと親しみをこめて言われていた。首
相になったころは今太閤とか言われたこともあった。今の若いひと
はどうだろう、角栄といっても知らないか。
 九州のワタシが生まれ育ったところに帰ってみたのは、あれはも
う数年前のことか。北九州の飯塚と直方の間にある宮田町というと
ころがワタシの生まれ育ったところだ。そこに11歳までいたのだ。
そこは炭坑の町だった。父親も炭坑で働いていたのだが、事故で死
んだ。代わりに母が働きにでた。11歳で大阪に移ってきたのは、
炭坑が閉鎖されたためだ。なにしろ炭坑しか働くところはないわけ
だから、それが閉山してしまえば、どこかへいくしかない。帰って
みた故郷は、もう炭坑を思わせるものは何もなかった。あたり一体
炭坑の住宅が建っていたはずだが、そんなものもう影もない。当た
り前だ。もう40年近くたっているわけだから。若者に炭坑のこと
を聞いたら、ここに炭坑があったこと自体知らなかった。生まれる
20年も前に閉山したわけだから当然か。変わり果てた故郷に呆然
として帰ってきたものだった。
 最後に沖縄にいったのは、もう25年も前のことだった。それま
で何度か行っていたのだが、その25年前を最後にもう行っていな
い。あのときは、沖縄本島だけでなく、その先の石垣島西表島まで
いったのだった。正月であったが、十分暑かった。現地の人は冬だ
からということで泳ぐということはなかったが、ワタシなど本土の
ひとからすると、十分泳げる気温だった。そこでひとりの女と出会
い恋をした。夏の日の恋。
 「ま、そのおう」角栄のまねをしていってみる。不思議なものだ
ね。「ま、そのおう」で時間だけがたっていく。すべては遠い過去
になってしまったのか。何だかみんな夏のせいかなと思えてくるの
だよな。





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