AWC 会津旅行記『春日八郎記念館』を訪ねて(4) /竹木貝石


        
#86/598 ●長編
★タイトル (GSC     )  02/05/20  08:50  ( 90)
会津旅行記『春日八郎記念館』を訪ねて(4)  /竹木貝石
★内容
 車を呼んでもらい、来たときと同じバス停『赤城タクシー前』まで620円。
 近くの『斉藤食堂』に入り、大きなドンブリに野菜いっぱいのタンメンを美
味しく食べた。
 柳津方面行きのバスが来るまで1時間もあったが、タクシーだと3500円
になると聞き、どうせ急ぐ旅でもないから、停留所の長椅子に腰掛けて待つこ
とにする。ここも記念館も会津坂下町の内であり、坂下町は大層広い。若い頃
の春日八郎がどんな心境でこの付近を歩いたのかと想像すると、彼の存在が身
近に感じられて不思議だ。
 おばあさんが二人バスを待ちながら会津弁で話していて、何とも言えぬ情緒
があり、タクシーやバスの運転手も年輩者が多く、東北弁が温かい。
 郷戸行きのバスに乗って柳津温泉に向かう途中、狭い山道でバスがすれ違う
べき場所をうっかり通り過ぎてしまったらしく、反対方向から来たバスに向か
ってこちらの運ちゃんが謝っていたが、私の知らない方言だった。
『一王町』でバスを降りて、教えられた通り舗装された急な坂道を8分ほど登
ると。今夜宿泊する『月見ケ丘町民センター』があり、立派な建物のようだ。
 チェックインを済ませ、所定の下駄箱に靴を入れて、私達の部屋『藤』に案
内してもらう。受け付け・案内係りは男性職員で、言葉遣いや説明が丁重だ。
 部屋は和室で洗面台があり、トイレは廊下へ出なければならないが、私は和
風旅館の方が落ちつく。
 いったん荷物を置いて、見学に出た。

 受け付けで道を訊き、地図をもらって、まず圓蔵寺へ。石段を下り、坂を登
って、今度は石段をかなり登った。私は運動不足と軽い心臓障害があるため、
たちまち息切れする。S君はその点元気だが、視力はかなり落ちていて、昔の
ように階段を猛スピードで駆け下りることは出来ない。S君は退職時に目の検
査をやりすぎて、片目の視力を随分落としてしまったと言う。
 山門はどんな風だったか、様子を覚えていない。
 円蔵寺は、日本三大虚空蔵尊の一体を奉ってあり、柳津はその門前町だそう
だ。
 堂内は広く、正面の段の上に、大黒さん、恵比寿さんなどの大きな像がずら
りと並び、私は背伸びするようにして、それらの仏像を観察させてもらった。
 賽銭箱に500円を入れ、垂れ下がっている綱を振ってドラを鳴らしたら、
倍音の多い重低音が響いた。
 後ろの壁際にも多数の仏像が並んでいたが、私には観察眼がなく、仏像の種
類も解らない。
 二抱えの太い大黒柱が4本もあり、いかにも頑丈な建物だ。
 お堂の外側を廻って大きさを調べたら、直径六寸の円柱が多分112本立っ
ていて、その柱と柱の間を一間とすると、間口二七間・奥行き二九間の四角い
建物である。社務所がくっついているので一周することはできなかったが、お
堂の佇まいがよく把握出来た。
 境内に牛が寝そべっていて、この牛をなでると望みが叶うと言われ、民芸品
の赤べこの元になった牛との説もある。実物大の真鍮製(?)で、手触りは滑
らかだ。牛の左後ろ付近に取り付けた賽銭箱の中や、前足に近い台の上に、小
銭がたくさん上げてあった。
 坂と石段はさらに上へ続いていて、きちんと舗装された広場や駐車場、そし
て宝物堂初め幾つかの建物が在って、今日は静かだが、お祭りなどの催し物に
は大勢の人が参詣に登ってくるものと思われる。宝物堂は六角形の古びた木造
建築で、直径六寸の柱と柱の間は1間半の幅になっていて、六角形の一片は確
か6区画(九間)だった。

 円蔵寺の石段を下り切った道路には、菓子の店が並び、『岩井屋』で粟饅頭
の4個入りを買った。
 只見川の釣り橋は堅牢で、自動車が通ってもびくともしない。この橋を渡っ
て河の広さを確かめたら、135歩あった。S君曰く、
「俺の133歩が百メートルだから、この橋は丁度100メートルある。」
 と、まるで作ったような話だ。
 この辺りは三つの橋がかかっていて、帰宅後S君に調べてもらったところ、
下記のメールを送ってくれた。
-------------------------引用ここから-------------------------
 柳津の温泉街は圓蔵寺のある山と只見川に挟まれた狭い地域に細長く広がっ
ています。道路は拡張出来ないので柳津の手前で一旦川の向こう岸に渡る「柳
津大橋」を架け、1qほど上流にもう一度こちら側に渡る「瑞光寺橋」をかけ
て温泉街を迂回しているわけです。両方の橋の中間に吊り橋の「観月橋」がか
かっています。これは温泉街と向こう岸の街を結ぶ生活道路です。
町民センターの直ぐ下に見えたのは瑞光寺橋でした。
 なお只見川は町民センターから見て左から右に流れて、最後は日本海に注い
でいるようです。
-------------------------引用ここまで-------------------------
 橋の袂から階段で『魚淵』脇の堰堤まで下りることが出来、この段数がかな
りあるので、只見川は相当に深いことが分かる。
 ここの『魚淵』はウグイの天然生息場で、季節によっては多数のウグイが見
えるそうだが、今日ははたしてどうかと、手すりから乗り出してじっと耳を傾
ける。微かに水の泡立つ音が聞こえて、これがウグイの遊泳かと思ったが、後
から来たサラリーマン風の二人連れにも、ウグイの姿は見えないらしかった。
休憩所のベンチで粟饅頭を食べ、小さな粟つぶを口に含んで、もう一度流れを
のぞき込み、淵に向かってプッと吹き出した。ウグイがこの粟の餌に寄り集ま
って来ることを期待して、何回も粟粒を流れに落としたが、先ほどの微かな泡
立ちしか聞こえなかった。
 この堰堤は綺麗なコンクリート舗装で、向こう岸まで延びている。そこを歩
いて再度反対側の岸に上がると、昨日バス停から旅館まで登った坂に出たので、
見覚えのある道を通って町民センターに戻った。

 大浴場へ行ったら、正にいい湯で、私は今回の旅行まで『柳津温泉』の名前
すら知らなかったのに、名高い温泉に比べても決して劣らぬ名泉であることを
確信した。湯量は豊富かどうか分からないが、湯の香りも泉質も温度も申し分
なく、肌がすべすべになる度合からみても、単純泉ではなさそうだ。
 夕食は品数がすこぶる多く、私は『桜の刺身』以外全部平らげた上に、ご飯
を2杯も食べた。
 部屋ではまたカラオケをし、二人で20曲ほど歌って、早めに眠った。






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