AWC 本の感想>『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』   永山


        
#9191/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ    *** コメント #8342 ***
★タイトル (AZA     )  17/02/11  21:07  ( 31)
本の感想>『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』   永山
★内容
・『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』(青崎有吾 東京創元社)15/4461
 風ヶ丘高校学食の外で見付かった、食器とお盆。丼の食べ残しを見ると、こ
の“犯人”、好きな具が二つ選べる二色丼を頼みながら、ソースカツを丸々残
していた(「もう一色選べる丼」)。神社での夏祭りにやってきた面々は、あち
こちの屋台で買い物をする。そのおつりが何故か五十円玉ばかり(表題作)。
演劇部部室で見付かったノートには、五年前の卒業生・宍戸による不思議な記
述が。始業式後、部室から教室に向かった宍戸は女生徒二人が抱き合う姿を目
撃する。あわあわしつつ一旦その場を離れ数分後にまた覗きに戻ると、出入り
口から目を離していないのに、教室は無人に(「天使たちの残暑見舞い」)。音
を立てずに割れた花瓶の謎(「その花瓶にご注意を」)。
 鮎川哲也賞作家による初の短編集&日常の謎ミステリ。

 『体育館の殺人』『水族館の殺人』の二長編で、ロジカルな本格ミステリを繰り広げ
た作者が、短編ではどんな物を見せてくれるのか、またどんな日常の謎を描くのか、興
味のあるところ。蓋を開けてみると、ロジックこそやや薄めになったものの、本質は変
わらない、推理の積み重ねに拘ったミステリに仕上がっていると感じたです。ただ、短
編集としてまとめるには、格となる一本が見当たらない。表題作は、東京創元社ではお
なじみ“五十円玉二十枚の謎”を連想させるタイトルですが、それとは全く無関係な内
容で、発想は面白いものの、実際にはそううまくは行くまいという印象が強い。複数の
感想サイトで編中のベストか次点に推されている「天使たち・」は、現象は詩美性があ
ってよいのですが、体験者の宍戸はこのあと自力で何にも調べなかったのか、調べれば
すぐに分かる。分かったならこんな恥ずかしい記述、即座に破棄したに違いない。だい
たい、音で気付くはず。「もう一色・」はロジックの一つに承服しがたい点がある。
「その花瓶・」はややこしいこと考える前に匂いで気付きそうな。てことで、個人的に
は粗筋に書かなかった「針宮理恵子のサードインパクト」がいかにも青春ミステリでよ
かったかな。構造上、謎の提示がされないのは勿体ないけどしょうがない。あと、末尾
のおまけに関しては、アニメのワンシーンて感じで、“二人”の仲がこれまでの作品で
仄めかされていたほど険悪ではなく、むしろ滑稽に映ったんですが、どうなんだろう。
 てな訳で、裏染シリーズを読んできている人なら必読でしょう。

 ではでは。




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