AWC 本の感想>『水族館の殺人』   永山


        
#8342/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ    *** コメント #7999 ***
★タイトル (AZA     )  14/11/13  22:16  ( 40)
本の感想>『水族館の殺人』   永山
★内容
・『水族館の殺人』(青崎有吾 東京創元社)18/5562
 夏休みまっただ中、風ヶ丘高校新聞部の三人は、部活動の一環として、隠れ
人気スポットである丸美水族館の取材に訪れた。開館間もない時間帯に、館長
の案内で館内を回りながら取材をしていると、サメの水槽の前で異変が。職員
の一人が水槽内に転落し、サメに噛み付かれた!
 一見、事故死に思えたが、水槽上部のスペースに駆けつけてみると、明らか
な殺人の痕跡が。早速、警察が捜査を開始するが、被害者の上半身を丸呑みに
したサメの搬出など、普段と異なる状況に戸惑い気味。さらに、防犯カメラの
おかげで容疑者を十一人に絞り込めたのはいいが、そこからが進まない。逆に、
全員のアリバイが成立してしまった。
 刑事の仙堂と袴田は、やむなく最終手段に出る。かつて『体育館の殺人』を
解決に導いた高校生に、袴田の妹である柚乃を通じて呼び出しを掛けるのだ。
学校の開かずの部室に暮らし、アニメオタクで秀才だがだめ人間の裏染天馬は、
今回も事件を解き明かせるのか。
 鮎川哲也賞受賞の作者が放つ、館シリーズ(?)の長編第二弾。

 デビュー作『体育館の殺人』に引けを取らない、推理尽くしの作品でした。
 ロジックにこだわり抜いているんですが、アニメ絡みのネタも事件とは無関
係に多数仕込まれており、何だかガチャガチャしています。前作はまだ理解で
きるネタが多かったんですが、今回はほとんど分からなかった。それでもまあ
すらすら読めたので、文章力は前回よりだいぶ上がったのではないかしらん。
まだ巧いというレベルには達してないですけど。
 裏染の推理は主に、現場近くに残されたモップとバケツを元に展開され、こ
れでもかと言わんばかりに丁寧にロジックを組み立てていきます。それでいて、
何度かひっくり返される、つまりは間違える訳で、その間違える部分も含めて
よくできていると思います。ただ、前作が“一本の傘が手掛かりですよ。問題
点はこれこれここういうことですよ”と明確に提示されていたのに対し、本作
は“モップとバケツが手掛かりですよ。でもどこが問題なんでしょう?”って
感じだったかな。読者がもう少し参加しやすいよう示してくれたら、より楽し
めたかも。
 疑問に感じたのは、この犯行を本当にこの時間内にやりおおせるかどうか? 
幸運に助けられて、何もかもが一発で成功し、ハプニングにも瞬時に対応して、
ようやく時間内に収まる気がする〜。
 そんなこんなで、ほぼロジックのみでそこそこ楽しませてくれた物語でした
が、最後に来て大きな“爆弾”が。まさか、こんな動機だったとは……と唖然
とさせられました。
 三作目も期待大。あ、次からは脚注をつけてほしいな。アニメネタに関する
解説を(笑)。

 ではでは。




元文書 #7999 本の感想>『体育館の殺人』   永山
 続き #9191 本の感想>『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』   永山
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