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★タイトル (AZA ) 13/06/02 22:00 ( 29)
本の感想>『アルバトロスは羽ばたかない』 永山
★内容
・『アルバトロスは羽ばたかない』(七河迦南 東京創元社)18/6552
※粗筋をフェアに記すのが結構難しいため、本書のカバー折り返しから引用し
ています。
児童養護施設・七海学園に勤めて三年目の保育士・北沢春菜は、
多忙な仕事に追われながらも、学園の日常に起きる
不可思議な事件の解明に励んでいる。
そんな慌ただしい日々に、学園の少年少女が通う高校の
文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件が影を落とす。
警察の見解通り、これは単なる「不慮の事故」なのか?
だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、
学園の子ども達に関わる四つの事件に、
意外な真相に繋がる重要な手掛かりが隠されていた。
鮎川哲也賞作家が描く、季節を彩る五つの謎。
『七つの海を照らす星』に続く、清新な本格ミステリ。
前作『七つの海を照らす星』(東京創元社)を読了してからの方が、本作の
よさをより味わえるでしょう。あとは、とにかく読んでとだけ言うのが、最良
の感想かもしれない。
真相が示された瞬間、世界が反転する。ついさっき、今の今まで手の中にあ
った物が、さらさらと崩れて指の隙間から落ちていき、姿を見せていなかった
物が手のひらに残る。そんな感じ。
全体を貫く一つのエピソードの合間に、四つのエピソードがカットバックの
ような形で挟み込まれた構成。その四つのエピソードで描かれる謎と解決も、
よくできている。我が子を崖下に突き落とした母親の真意、生徒の集団消失、
読み込めないディスクの秘密、そして施設を訪れた親が刃物をちらつかせると
いうサスペンスフルな展開まで。
とてもシンプルでとても巧妙なミステリに、心地よくだまされました。
ではでは。