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★タイトル (AZA ) 12/09/06 21:29 ( 31)
本の感想>『翼のある依頼人』 永山
★内容
・『翼のある依頼人』(柄刀一 光文社)17/6452
学生の野村は、叔母がオーナーのマンションの一室で暮らしている。ある日、
叔母がシャーロキアンの友人達を招待し、野村は成り行きでその相手をしばら
くさせられることになるが、その間にマンションの一室で火災が発生。消火で
きたものの、密室状態の部屋では住人の女性が、タガネで刺されて殺されてい
た(「女性恐怖症になった男」)。シャーロキアンの松坂慶子宅周辺では小鳥
の変死が散発していた。そんな折、インコが迷い込んできた。インコのお喋り
を手掛かりに、飼い主探しを始めると、意外な事件が(「翼のある依頼人」)。
松坂家の中で、犯罪が進行中? ボクがパパとママを守るんだっ(「黄色い夢
の部屋」)。
結婚によりあの女優と同姓同名になった松坂慶子が、ナルコレプシーを抱え
つつも、お仲間たちとともに事件を解き明かしていく短編集。
以前、同短編集の「見えない射手の、立つところ」のみを読んで、感想をア
ップしましたが、この度全編を読了したので感想を追加。
読んでよかったと思える内容でした。特に最後の「黄色い夢の部屋」は、短
いながらも、この本を締めくくるにふさわしい作り。他の二編もそれぞれトリ
ックやロジックに工夫を凝らしてあり、なかなか楽しめました。ただ、そんな
ことを真っ昼間にできるだろうかとか、咄嗟にそこまで考えが回るだろうかと
いった疑問はいくつかありますが。
あと、(探偵役となる)登場人物が多いことと、描写がやや散漫なため、物
語が結末に向かって収束していく様を感じ取りづらい。最後に来て、何となく
終わっていた、てな印象を持ってしまう。作品にとって損だし勿体ない。
作者は長編『マスグレイブの館の島』から始まるこのシリーズを、コージー
ミステリとして位置づけるつもりのようですが、作品の傾向がどうも違うのも
気になります。今のところ、コージーミステリ+本格ミステリって趣き。シャ
ーロック・ホームズのマニアという設定も、あんまり活かせていないと思うの
で、方針をより明確に打ち出した方が商業的には吉かな。私は今のままでも好
きなんですけど(笑)。
ではでは。