AWC 二分の一と百万分の一   永山


        
#5774/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  09/10/20  21:49  ( 28)
二分の一と百万分の一   永山
★内容
 殺人を扱う倒叙ミステリを書く場合、原則として大きな要となるのは、次の
二つであると考えます。すなわち、「探偵役が犯人を疑うきっかけ」と「犯人
を特定する決め手」の二つ。事件が他殺以外の死、たとえば事故死や自殺に偽
装されているケースでは、さらに三つ目「探偵役が事件を他殺と見なすきっか
け」が加わります。
 二つの「きっかけ」が作品をスマートに見せるためだとすると、「犯人を特
定する決め手」は、ミステリとしての善し悪しの印象を左右する、文字通りの
決め手になるでしょう。

 これまで何度となく記してきているように、私は物語から偶然やご都合主義
の匂いを消したいと思う性質です。
 ですから、倒叙ミステリの決め手に関しても、できることなら偶然を排除し
たい。その日に限って列車が遅れたとか、居所に関して嘘をついたらたまたま
その場所の近くで火事が発生したとか、完全犯罪が子供のちょっとした悪戯に
よって瓦解するとか、そういった“犯人が不運だったが故の決め手”は、なる
たけ使わないようにしたい……のですが、実際はそう単純に割り切れない部分
もありまして。
 改めて書くまでもないでしょうが、一般論として、偶然絡みの決め手であっ
ても、「これは素晴らしい、面白いアイディアだ!」ってのが存在するので。
だから、単純に、偶然は絶対に用いては駄目、なんて言えません。
 ただ、そういう優れた“偶然”のアイディアを、いかにして定義なり線引き
なりすればいいのか(そもそもできるのか)が、難しい。
 これもまた、センスに関わる問題なんでしょうけど、他の諸々に比べると、
読者の感性にゆだねる部分が大きく、曖昧模糊としているような……。何せ、
二分の一の偶然よりも、百万分の一の偶然の方がご都合主義の度合いはひどい
のに、ミステリとしての評価は高い、なんてことがあるぐらいですから。

 ではでは。





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