#4937/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 08/04/30 22:43 ( 34)
本の感想>『犬はどこだ』 永山
★内容 12/12/27 21:34 修正 第2版
・『犬はどこだ』(米澤穂信 東京創元社・ミステリフロンティア)
13/3451
犬専門の調査屋として開業したばかりの紺屋のところへ、早速の依頼が来た。
が、それは専門外の人捜し。孫を捜してくれという男の頼みを断りづらく、知
り合いからの紹介ということもあって、引き受ける。
次に、高校時代の後輩・半田が雇ってほしいと押し掛けてくる。とても給与
を出せる目処は立たないが、探偵への憧れを訴える半田を前に、成り行きで雇
用する。さらに古文書の由来を突き止めるという依頼まで舞い込み、紺屋の目
論見から大きくずれる形で、調査屋はスタートした。
始めてみると、小さな田舎町でのことだからか、二つの依頼は微妙にクロス
しているようで……?
『インシテミル』の前に、同じ作者の他の長編を読んでおこうと思い、手に
取りました。
面白く読めた反面、やや散漫だった印象も抱きました。紺屋と半田の二人が、
依頼を一つずつ受け持ち、その過程を(ほぼ)交互に描いていくスタイルが取
られているのですが、あまり効果が上がらなかった感じ。むしろ、このスタイ
ルを取ったがために、読者はいらいらを募らせることに。それさえも作者の計
算という可能性ありますが、あざといし、半田が間抜けすぎる描き方になった
のは、ちょっと勿体ない。
二つの依頼が関わりを持っている点は、ご都合主義の感が拭えない。紺屋の
調査所に二つの依頼が舞い込むのはかまわないにしても、タイミングが同じと
いうのはうなずけません。すり合わせの工夫がほしかった。
他には、好みの問題になりますが、この題名から連想する物語と、実際の流
れが、途中まではまあ重なっていたのですが、インターネット云々が出て来て、
あれ?と首を捻りました。これでいいのかと。舞台にもそぐわないし、唐突か
つちぐはぐに思えてしまった。もちろん、この部分は、主人公の探偵する動機
というかモチベーションに大きく関わることであり、内容的にも説得力のある
ものなのは認めるのですが。
終盤、真相が徐々に明らかになるくだりは、サスペンスフルではあれ、ミス
テリ読みにとっては明々白々だったのでは? その欠点を補ったのが、題名の
意味が最終盤で明らかになる趣向だと言えそう。
ではでは。