AWC 感想・守屋「お題>リドルストーリー>虎を右に」


        
#4375/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (mor     )  07/08/23  12:54  ( 61)
感想・守屋「お題>リドルストーリー>虎を右に」
★内容
 まずは、表記についてひとつふたつ。

>「ゲートの中について、私に教えてくれ」
>「何のためにわしとおまえの二人だけで話していると思う?

 王様が「わし」と言ったり「私」と言ったり。

>(――だめ。このままでは、撃てなくなる。早くしないと!)

 弓矢は「射つ」と書きませんか? 拳銃は「撃つ」ですが。

 以下、感想です。
 最後までひねりが入っていて先が予想できず、面白かったです。わかってみれば単純
な種明かしを、登場人物それぞれの思い込みを勢いよく書くことで、読者に忘れさせて
いるのですね。うまい構成です。
 しかも、王女さま、強気でちょっとコワイ。こんな王女さまが相手では、彼もさぞか
し苦労するでしょう。
 ラスト、立ったまま気絶している彼が、気の毒なのにおかしみを感じさせます。ユー
モラスなオチで、読後感もよかったです。

 全体としては気の利いた話だっただけに、冒頭の大臣のセリフはどうでしょうか。

>「何用でございましょう」
 王の前に立った大臣は、小さいがはきはきとした声で尋ねた。

 大臣が王に向かって、いきなりこんな発言をするとはちょっと信じられません。礼儀
を欠きすぎていて、ここだけ漫画チックです。
 つまり、「何の用だ」という質問は、「早く用件を言え」という督促でもあるわけで
す。ニュアンス的には、「オレは忙しいんだから、つまらない前置きで時間をつぶさ
ず、さっさと用件を言って解放してくれ」です。目下の者が目上の者にぶつけてよい言
葉ではありません。
 しかも、両者は現代的な会社の上司と部下ではなく、国で最も権限を持った中世の国
王と、誰よりもその権威を守らなければならない法務大臣。権威というものは、面倒な
手続きをありがたがることで演出されます。順当に考えれば、大臣の発言は「御前に
(まかりこしました)」、「お待たせいたしました」「お呼びと伺いましたが」などで
はないでしょうか。

 どうしても大臣から国王に何の用かと問わせたいのであれば、本題に入らず無駄話を
する国王と、時間もないのにといらいらする大臣というシーンの後でしょう。礼儀に反
するが、わが王は暴君ではないし、時間もないから思い切って……と、決心した大臣が
「おそれながら」と問いかけるとか。
 ついでながら、大臣が自分でノックをするのも変です。国王たるもの、近侍する者の
数がひとりふたりでは少なすぎます。誰が来たかを告げるのは、その者たちの役目のは
ず。というか、誰それがおいでになりましたと告げることだけを仕事にする者が、扉の
前後に控えているはずなのです。
 余談ながら、国王が「大臣を呼べ」と言ったとしても、言われた者が直接、廊下を走
って大臣室へ駆け込むことはありません。常時、国王の眼前に控えている役、次の部屋
で控えている役、その次の部屋へ……と伝言ゲームが続き、廊下を走る役、大臣室の扉
の前にいる役、大臣室の扉の中にいる役、と伝えられてやっと大臣に耳打ちされます。
 人払いしたという説明文もセリフもないので、

>わしとおまえの二人だけで

 の一文が出てくるまで、部屋のようすがわからず、読んでいて戸惑いました。
 室内の描写も適宜、入れて欲しかったです。豪華さをくどくど書く必要はないにして
も、周囲の説明がなさすぎるのは……。読者が勝手にイメージしてしまい、合わない文
章が出てきたところで改めて混乱するため、感情移入を妨げてしまいます。

 上記は書き直せという要求ではありませんので、そこのところ、どうか誤解なきよう
お願いします。次回作以降の参考までにと思い、違和感の大きかった箇所を書かせてい
ただきました。





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