AWC 遍歴                    聖 紫


        
#376/1336 短編
★タイトル (ALN     )  95/ 1/23   2: 8  ( 44)
遍歴                    聖 紫
★内容

 初めての彼女とは既に十年近い付き合いになる… 何処に行くにも付いてくる。
何時も私の側を離れようとはしない彼女はとてもスリムで可愛らしい。

 彼女と出逢い、私は寂しさを忘れ悦楽と云う世界を知った。
決して手放しはしないと心に決めた。今日までも彼女を手放しては居ないと云う事実
が、如何に私を擒にしたかを物語っている。

 しかし…
元来浮気な性格の私が、彼女1人で満足できないことは、既に6人目の彼女を我が物
顔に連れ歩いて居る事が雄弁に証明している…

 2人目の彼女は、玩具にしたあげく売り飛ばして仕舞った…
その時の心の傷は幾日も幾日も私を苦しめ続け、寂しさと後悔の日々は、3人目の彼
女を得ることで、やっとごまかす事が出来た。

 私は、売り飛ばした彼女のことを思うと、胸が痛み、3人目の彼女を激しく愛する
事で忘れようとした… しかし、それも束の間、4人目の彼女を友達から無理矢理奪
って仕舞った事から、3人目の彼女に対する愛情は日に日に薄らいで行った… そう
なのだ、人から奪い去ったと云う刺激は、お互いが求めあったと云う自然な出逢いに
比べると、想像以上の快感を与えてくれる… 勢いで、5人目の彼女をつくって仕舞
った私は何時しか3人目の彼女も邪魔になり始めていた。

 私は、地獄の闇を、或いは地獄の業火の中で悩み苦しんだ…
そして、ついに3人目の彼女までも売り飛ばして仕舞ったのだ… あぁ、私は鬼か、
悪魔か…… ただ捨て去るだけならばまだしも、いとも容易く売り飛ばして仕舞うと
は… 血も涙も無い人間なのだろう… 実はその時既に今の6人目の彼女が私の心を
誘惑しはじめて居たのであるから、非人道的な所業は否定できない事実なのであろう
事を容易に裏付けている。

 6人目の彼女を連れ歩くようになってから、5人目の彼女はしばしば体調を崩すよ
うになった。やはり、自分が既に5人目であり、2人目と、3人目の彼女は売り飛ば
されていると云う余りにも信じがたい事実と、既に新しい彼女が出来ているという事
実が、必要以上に彼女を苦しめ、心身ともに疲れさせた… と云うのが本当の所では
無かったか… ある雨の日、彼女は自殺を図って仕舞った… 未だに信じられない事
であるが、彼女は自らの生命線を破壊してしまったのだ… だが、流石に未練が残る
私は既に3カ月の間だ、未だに彼女を箱詰めにしたまま手元に遺棄している。

 総ての所業をじっと見つめ続けた、初めての彼女と、友達から無理矢理奪い去られ
た4人目の彼女… そして、今一番幸せかも知れない… 明日は我が身の6人目の彼
女に囲まれ、私は今日も次の彼女を物色している。

 次はやはり、75MHzの486が良いな…
                                 聖 紫




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