#2351/5495 長編
★タイトル (AZC ) 93/ 9/23 18:59 ( 42)
惑星
★内容
惑星
「どうして煙草を吸うのですか。」
「吸って悪いのかね。」
「悪くはないが、それどころではないでしょう。」
「吸いたいから吸っている。それどころではないとは、どういう意味かね。」
「だってこんな星に、誰もいないのに。何ともないのですか。」
「ここにいるではないか。」
「ここで遭ったのは、たまたまでしょう。」
「たまたま以外の出逢いがあるとでもいうのですか。」
「なんですって。」
「もちろんたまたま一生誰にも出逢わなかったという場合もあるにはあるのでしょうが
。だからといってそれが煙草を吸って悪いという理屈にはならないでしょう。」
予期せぬ対話に私は苛立ちを覚えた。
「それでは、他にもこの惑星に誰かいるというのですか。」
「もちろんたくさんいるよ。ただこの星が大きすぎて見えないだけだ。」
「誰かに会ったのですか。」
「ああ、君で三人目かな。」
「いつ、どこで会ったのですか。」
「二人目にあったのが五百年くらい前かな。」
私は怒りを覚えた。
「こんなときに冗談はよしてくれ。」
「冗談なものか。僕は君の質問に正直に答えただけだ。失敬な奴だ。これで失礼する。
」
彼はまた泳ぎ始めた。私は慌てて後を追った。
「待ってくれ。私が悪かった。もう少し話をしていってくれ。」
彼は面倒くさそうな顔をしながら、とりあえずその言葉に従った。
「このまま君と別れたら、今後五百年誰にも会えないということですか。」
「そういうことかな。それ以上かもしれないな。」
「それで君はなんともないのかい。」
「会えたからどうだというものでもないだろう。」
今まで感じてもいなかったのに、私は急に肌寒さ感じてきた。相変わらず空には星々
が冷ややかにきらめいていた。
「煙草を一本くれないか。」
「君はどうやって煙草を吸うのだい。」
「どうして煙草が吸えないのか、そのほうが僕には不思議だ。」
「じゃあ君は手を使わないでも浮いていられるのかい。」
「浮くとはどういうことなのかな。僕は沈むなんてことを考えたこともないよ。」「で
も、私は泳ぐのをやめたら溺れてしまう。」
「ふうん、ひょっとしたら君はこの星の生き物じゃないのかもしれないね。」
「えっ、君は宇宙人だとでもいうのかい。」
「宇宙人は君だろう。」