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★タイトル (KXM ) 00/ 2/10 9:55 ( 83)
演歌でえーんか 談知(KEKE)
★内容
演歌でえーんか 談知(KEKE)
演歌が衰退している。なぜだろう、という疑問もわかないく
らい衰退している。このままでは演歌は消滅してしまうのでは
ないか。そんな感じさえするくらいだ。演歌は日本のこころ。
という演歌のうたい文句はうそだったわけだ。演歌も単に歌の
いちジャンルにすぎなかったというわけだ。
なぜ演歌は衰退したのか。よくいわれるのは、カラオケの弊
害である。カラオケでは演歌がよく歌われる。あれは、一曲歌
うたび、いくらかの料金が作詞作曲者に払われるのだそうだ。
ということは、カラオケにいれてもらい、歌われることで金が
もうかるわけだ。そこで、最近の演歌は、カラオケで歌いやす
いような曲ばかりになった。どれもこれも似たような、単純な
曲ばかりになって、それが結局演歌の首をしめた。飽きられた
のである。
確かにそれもあるだろうが、私はもっと根本的な理由がある
と思う。それは、演歌で歌われている内容が、リアリティを持
たなくなったからだと思う。
「着てはもらえぬセーターを」涙をこらえて編んでいたりす
る、そんな女がいなくなった。一般的にいって、演歌のなかで
描かれている女性が、今現実の世界ではいない。そう言い切っ
てもいいと思う。
もともと、演歌の中の女性の行動は、男の理想像というか、
夢というか、要するに、男の身勝手な願望の産物だったわけだ。
それでも、世の中に多少はそういう女性もいたときは、ある程
度のリアリティをもてて、いかにも真実らしく聞こえ、歌に酔
うこともできた。 しかし、世の中男女平等の世界になり、そ
うそう男の都合だけでことははこばない。男の都合にうまくあ
わせてくれる、あわせざるえないような女性はいなくなり、お
互い対等の立場で行動する女性がほとんどとなった。
こういう現実の世界から演歌の世界をみると、まるでアナク
ロ。まるで戦前世界。時代が50年はずれている。そのアナク
ロなずれ具合が面白い、というような感じでしか、もはや演歌
は楽しめなくなった。一言でいって、どうにも嘘っぽくて、し
らじらしてしまうのである。歌っていても、聴いていても、そ
の世界に入っていけない。演歌は今の世界ではリアリティをも
ててないのである。
もっとも、リアリティといっても、現実世界をべったりと写
したというようなことではない。夢や願望もふくめて、そこに
しっかりしたありそうという感覚があればいいわけだ。たとえ
ば、70年代フォークに、「神田川」というのがある。三畳一
間に住んで、同棲している女性と銭湯に行く。というような世
界が描かれている。自宅から大学にかようひとがほとんどで、
下宿する場合でも、当時としても三畳間に住んでいるようなひ
とはほとんどいなかったと思う。それでもあの歌がヒットした
のは、こんな世界に住んで、そんな経験をしてみたいという夢
や願望をうまく刺激したからだろう。ここで大事なのは、夢や
願望を描くことは、むろん大事だが、もっと大事なのは、そん
な世界がありそうだ、と思えるかどうかなのだ。要するにリア
リティである。現実にあるかないかは、さほど重要ではない。
いかにもありそう。そう思えるかどうかなのだ。当時の若者にっ
て、「神田川」の世界は、あったらいいなという世界であり、
また現実にありそう、と思える世界だったわけだ。
今日の演歌にはそれはない。男の身勝手な願望は、昔も今も
一緒だから、演歌に描かれている女性、男の身勝手を受け入れ、
慰めてくれるような女性は、確かに男の夢や願望を刺激してい
ると思う。でも、そんな女性がいるとは、もはやとても思えな
いのである。そこで、演歌の世界はリアリティを持ち得ない。
繰り返すが、現実にいるかいないかではなく、いると思えるか
どうか、である。思えなければ、演歌の世界にリアリティはな
い。
演歌の衰退は、すばりいって、その描く世界にリアリティを
もちえないことである。そして、そうであるかぎり、演歌の持
ち直しというのは考えにくい。リアリティをもてるようにする
と、それはJポップになってしまう。
こんにち、演歌を楽しもうとすれば、演歌の描いている世界
をアナクロと思いつつ、そのアナクロぶりを楽しむ、とうこと
しかないような気がする。時代とのずれぶりににやりとして、
そのずれを楽しむ。それしかない。
いずれにしても、私自身は、アナクロだろうが、時代とずれ
ていようが、これからも演歌を聴いていくだろう。楽しんで聴
くだろう。なぜなら、私自身がアナクロで時代からずれた人間
だからだ。だから、演歌のアナクロぶりや、時代からのずれぶ
りとぴったり波長があうのである。だから、私自身は、演歌を
聴くのになんの不満も不自由もないのである。いやあ、よかっ
た、よかった、アナクロで。時代からずれていて。一生演歌を
楽しめる。演歌でえーんか。えーんである。
談知(KEKE) EmBiglobe 2.04