AWC AWCで起こったいろんなできごと(2)  ゐんば


        
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★タイトル (GVB     )  98/ 8/22   3:21  ( 88)
AWCで起こったいろんなできごと(2)  ゐんば
★内容
●1989年・続き
【7月・AWCの本幻の第1号出版】
 いよいよAWCの本が完成した。A5版106ページ定価500円、いかにも
パソコン通信の同人誌らしく文芸誌には珍しい横書きであった。CFM「空中分
解」に掲載された作品ばかりではなく、この本のために書き下ろされた作品も7
作品あった。
 出版担当のおうざきさんのもとから全国のメンバーの元に刷り上がったばかり
の「AWC 空中分解」が届けられた。
 ボードは喜びの声にあふれた。
 人によって程度の差こそあれ、アマチュアライターにとって自分の作品が本に
なるというのは感慨深いものがある。今回作品を掲載していないメンバーにとっ
ても、やはり本という実体を通してみるとボードとはまた違った味わいがある。
 かく言う私ゐんばも自分の作品こそ掲載されてないが一部買っていた。2号が
出るときは自分も掲載しようかな、などと考えながら。

 ある日私は実家から自分のアパートに帰るとき、道すがらの暇つぶしとして実
家から一冊の文庫本を持っていった。筒井康隆のショートショート集「笑うな」
(新潮文庫)である。表題作の「笑うな」や初期の傑作「客」はさすがに印象に
残っていたが、なにしろ前に読んだのが遠い昔の高校時代、読み返すと新鮮なも
のがあった。
 中程まで読み進んだところで「座敷ぼっこ」という掌編があった。二学期が始
まり先生が出席をとる。すると一学期まで51人だったはずのクラスに52人の
生徒がいる。一人一人の顔を見てもみんな一学期いたようなきがする……。
 凍る。といえばいいのかな。
 その作品は、AWCの本に収録された作品「座敷ぼっこ」と、登場人物の名前
こそ異なるものの構成からセリフまでかなりの部分が同じだったのである。
 なぜAWC本を読んだときに気がつかなかったのかわからない。筒井康隆には
珍しいメルヘン調の作品なので印象が薄かったのかも知れない。
 どうしたものか途方に暮れた。私もAWCでは、というよりパソコン通信では
まだ新参者である。結局どうしたらいいのかわからなかったので、OP代行であ
るクエストさんにこのことをメールで連絡した。
 今であれば私もそういう対応はとらなかっただろう。もちろん今は自分自身が
OPなのだからOPに相談することなどできようはずがないが。しかしそのとき
は、自分の行動がことをこじらせる元になるとは思ってもみなかった。
 相談されたクエストさんも相当苦悩したらしい。その後ちょうど関西OFFが
あり、クエストさんは出席者にこのことを相談した。
 AWC本に「座敷ぼっこ」を自分の名前で掲載した人は、少し前までAWCの
アクティブメンバーだった。初期のAWC大賞はこの人のハンドルを冠してすら
いたのである。私とは入れ替わりくらいだったが、多くのメンバーにとってはな
じみ深い人物だった。
 それもあってだろうか、問題解決は慎重に進められた。ボード上ではこの問題
はしばらく伏せられていたのである。
 それだけにことがオープンになったとき、初めてこのことを知ったメンバーに
とっては三重のショックだった。行為そのものへのショック。本に取り返しのつ
かないしみがついたことへのショック。そして、そのことが知らされなかったこ
とへのショック。
 さらにもう一つ水面下で動いていたことがあった。クエストさんから天津飯さ
んへ、SIGOP代行の引継が発表されたのだ。
 こういう重要なことをボード上以外で進めるのは問題がある、ということをお
そらく大半のメンバーがこのとき初めてわかったのかもしれない。パソコン通信
の文化はこのとき(おそらく、今も)成熟への途中だったのである。

 ボード上で改めてこの模作問題への対応が検討された。そう、この事件では最
初「模作」という言葉が使われた。それは掲載した人を悪人扱いしたくないとい
う思い入れかもしれないし、事態の印象を和らげようという配慮だったかも知れ
ない。だが、それはまぎれもない「盗作」だった。
 けじめをつけようと思えば対応は一つしかない。あとは自分たちが長い間かか
ってしてきたことを無にする決断だけだ。

 AWCの本の配布は中止された。
「座敷ぼっこ」の掲載者は結局メールに反応せず、二度とAWCに現れることは
なかった。

【10月・CFM「空中分解」代替わり】
 さて、当時ディスクはとっても高かった。
 パソコン通信大手PC−VANとて例外ではない。今のように会員にはホーム
ページエリア5MBずつあげる、なんのアサヒネットは50MBだ、なんてのは
夢のまた夢。てなわけで、ボードは2000メッセージたまると初めの1000
メッセージが削除されることになっていた。
 CFM「空中分解」もメッセージが既に1800を越えていた。このままでは
じきに削除される日が来てしまう。そこで新ボード『CFM「空中分解」2』を
起こし、従来の『CFM「空中分解」』は『空中分解ROM専用書き込み禁止』
として保存することになった。
 これによりボード構成は以下の通りになった。
   1.フレッシュボイス   2.CFM「空中分解」2
   3.「AWCの本」出版局 4.空中分解ROM専用書き込み禁止

 この年のAWC大賞は以下の通り。

大賞    栗田香織     熱帯魚
長編賞   栗田香織     熱帯魚
短編賞   五月うさぎ    ソーサラー
      ゐんば      大型料理小説「注文」
文芸賞   秋本       ビューティー・サロン秋本

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