AWC 三宮晴樹とその友人達(29)           ハロルド


        
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★タイトル (GSA     )  98/ 5/13   1: 8  ( 53)
三宮晴樹とその友人達(29)           ハロルド
★内容
 晴樹はアルバイトとして、テレビ番組のスタッフに参加することがある。
 祖父の正蔵が映画製作現場の照明係だったこともあるので、そのつてを頼って照
明を業種とするポストプロダクションに照明スタッフとして参加したのがきっかけ
だった。スタッフといっても高校生の内はあまり専門的な仕事は任せられないので
VP(ビデオプロモーション)やCM撮影等で機材の運搬や後片付け、買い物等、
かなり雑用的な仕事をやるのみだったが、先輩達の仕事を見ている内にライティン
グの感覚や技術を学び、ふとしたことからレフ板の位置を変える機会に恵まれ、し
かもその位置と状況判断が的確だったことから徐々に照明機材に触れることが許さ
れるようになった。そして時折人手が足りないときは、撮影日が土日である場合、
バッテリーライト(バッテリーで点灯する手持ちのライト)等比較的取り扱いが簡
単な照明器具を扱う仕事の場合に限り、晴樹の元へ仕事の依頼の電話がかかってく
ることがある。
 今回のアルバイトもそうした仕事の一つで、情報バラエティ番組の取材班に参加
することとなった。取材班はディレクター、レポーター、カメラマン、音声マン、
カメラアシスタント(CA)、照明スタッフの六名から構成されているが、晴樹の
役割は照明で、カメラマンの横からバッテリーライトで被写体に光を当てる仕事を
担当していた。
 今回の取材先は某高級百貨店の展示会場で、現在公開中の映画「スターシップ・
トゥルーパーズ」のSFX展示会を訪れていた。今回の取材の目玉は、その映画で
特殊視覚効果を担当した米SFX界の巨匠フィル・ティペット氏が来日しているこ
とで、その来日展でのインタビューの収録が最も重要な仕事となる。

 ティペット氏へのインタビューにはまだ時間があるので、カメラマンの緒方とC
Aの宮沢、照明の晴樹は、展示物の撮影を行っていた。実際の映画に使用された衣
装や実物大の美術大道具、撮影計画のためのストーリーボード(映画のイメージを
略画で表した撮影設計表)やミニチュア模型等を熱心に撮っていた。
 撮影がほぼ終わりかけた頃、晴樹は展示会を訪れている客の中に郁太郎の姿を見
つけた。二人はすぐ目が合った。
「よお」郁太郎は声をかけた。
「何だ。お前の友達か」緒方カメラマンは笑いながら言った。
「ここで何してんの?」晴樹は郁太郎に言った。
「俺はSFX映画にはちょっとうるさいからね。フィルの奴が来日してるっていう
からわざわざこうして来てやったんだよ。ちゃんと入場料も払ってんだぞ」
「当たり前じゃないかよ」
「フィルもなあ、『帝国の逆襲』のスノーウォーカーのときは良かったし、その後
の『ドラゴンスレーヤー』でそれまでのストップモーションからゴーモーションに
変えたときまでは凄かったんだけどなあ、『ロボコップ』のED209になるとな
んか巨大な玩具みたいな感じだったし、『ジュラシックパーク』のときなんか、元
同僚ILMのデニスのCGに押されてスティーブンから馘にされそうになったんだ
ぜ。それじゃああまりに可哀相ってんでDIDなんてもん作ったんだけどCGやっ
てる奴から言わせれば只の辻褄合わせだろう。それに・・・」
 晴樹は、郁太郎のチンプンカンプンな話に相槌をうっていた。晴樹もかなりの映
画ファンではあったが、郁太郎のSF映画フリークぶりには敵わなかった。晴樹が
横を向くとディレクターの川瀬比佐子が郁太郎の話を立ち聞きしていた。
「なかなか面白そうな子じゃない」川瀬は言った。
「初めまして、お嬢さん」郁太郎は、一目で三十代半ばとわかる川瀬に言った。
「やだもう、お嬢さんだなんて、ほほ」川瀬は笑った。
<見え透いたお世辞を言う方も言う方だけどのせられる方ものせられる方だね>晴
樹は思った。
「三宮君、今何か思わなかった?」川瀬は晴樹に詰問した。
「いや別に何も思ってませんよ!」晴樹は驚いた。<何をカマかけてんだよ!>

                                                              (98/05/08)




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