AWC   わたしのナツメロ物語(11)    竹木貝石


        
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★タイトル (GSC     )  97/ 8/ 3  15: 9  (175)
  わたしのナツメロ物語(11)    竹木貝石
★内容

    服部良一の音楽(1)

 確か毎週1回ずつ、大阪放送局からの『関西発ラジオ深夜便』という企画があって、
今朝は『作曲家 服部良一 第一夜』を放送した。

 最初の歌は、中野ボーイズによる四重唱で『山寺の和尚さん』:

   山寺の 和尚さんが
   鞠は蹴りたし 鞠は無し
   猫を紙袋に 押し込んで
   ポンと蹴りゃ ニャンと鳴く
   ニャンがニャンと鳴く ヨーイヨイ。

 近頃、動物愛護という点で問題になりそうな歌詞だが、作曲・コーラス・伴奏の三
拍子揃った名盤である。
 かつて私が所属していた〈あけぼの合唱団〉でも、この歌を取り上げたことがある
が、我々の歌など、昭和12年当時のこのレコード演奏に遠く及ばない。各種打楽器
を加えたオーケストラの伴奏に乗って、軽快なリズムと歯切れの良い歌声が流れる。


 服部良一の2曲目は、これも確か昭和12年のレコードで、淡谷のり子の『別れの
ブルース』:

   窓を開ければ港が見える
   メリケン波止場の灯(ひ)が見える
   夜風 潮風 恋風乗せて
   今日の出船は何処へ行く
  むせぶ心よ 儚い恋よ
   踊るブルーズの せつなさよ。

 淡谷のり子が元気な頃に語っていたことだが、
「あのレコードの歌い方は駄目よ。恥ずかしくって聴いてられないわ! 第一、ブル
ースのことをブルーズって言ってるの。ブルーズなんてねえ!」
 と言うように、レコードに対する一般の人気と本人の評価とはしばしば異なるもの
で、淡谷は特にこのレコードの歌い方を厳しく反省していたようだ。けれども、さす
がヒット曲だけあって、結構上手に歌っていると思う。


 藤山一郎の『懐かしのボレロ』:

   南の国 歌の国
   太鼓を打て 拍子を取れ 楽しき今宵
   ……

 アナウンサーの説明によれば、この歌は音域が広過ぎて、歌える歌手がなかなか見
つからず、ようやく藤山一郎によってレコード録音が出来たと言う。私は絶対音感が
無いので正確なことは言えないが、低音のソ(三音列のG)から、高音の変ホ(五音
列のES)の領域を見事に歌いこなしていて、藤山の面目躍如たるものがある。


 灰田勝彦の『東京の屋根の下』:

   東京の屋根の下に住む
   若い僕らは幸福者
   ……

 東京の地名と外来語を織り込んだ新しいスタイルの音楽で、戦後の荒れた苦しい日
々の生活に希望を与える歌だった。
 灰田勝彦の独特な甘い歌声が印象的である。


 笠置シズ子の『買い物ブギ』:

   今日は朝からわたしのおうちはてんやわんやの大騒ぎ
   盆と正月一緒に来たよなてんてこまいの忙しさ
   何がなんだかさっぱり分からず
   どれがどれやらさっぱり分からず
   何も聞かずに飛んでは来たけど
   何を買うやら 何処で買うやら
   それがごっちゃになりまして
   わてほんまによう言わんわ
   わてほんまによう言わんわ

   たまの日曜サンデというのに
   何が因果というものか
   こんなに沢山買い物頼まれ
   人の迷惑考えず
   在る物無い物手当たりしだいに
   人の気持ちも知らないで
   わてほんまによう言わんわ
   わてほんまによう言わんわ

   何はともあれ買い物はじめに魚屋さんへと飛び込んだ
   鯛に平目に鰹に鮪にブリに鯖
   魚は取りたてとびきり上等買いなはれ
   おっさん買うのと違います
   刺身にしたなら美味しかろうと思うだけ
   わてほんまによう言わんわ
   わてほんまによう言わんわ

   鳥貝赤貝蛸にイカ
   海老にアナゴに鱚にシャコ
   ワサビをきかせてお寿司にしたなら
   なんぼか美味しかろ
   なんぼか美味しかろ
   お客さん あんたはいったい何買いまんねん
   そうそう わたしの買い物は 魚は魚でも
   おっさん 鮭の缶詰おまへんか?
   わてほんまによう言わんわ
   わてほんまによう言わんわ
   あほかいな!

   丁度隣は八百屋さん
   ニンジン ダイコにゴボウにレンコン ポパイのお好きなホウレン草
   トマトにキャベツに白菜に キュウリに白瓜ボケナスかぼちゃに
   東京葱々ブギウギ
   ボタンとリボンとポンカンと マッチにサイダに煙草に仁丹
   ややこしややこしややこしややこし アアややこし!

   ちょっとおっさん こんにちわ
   ちょっとおっさん これなんぼ
   おっさんいますか これなんぼ
   おっさん なんぼで なんぼで なんぼで
   おっさん おっさん おっさん おっさん
   おっさん おっさん おっさん おっさん
   おっさん おっさん おっさん おっさん
   わしゃ聞こえまへん
   わてほんまによう言わんわ
   わてほんまによう言わんわ!
   アア しんどおー。

 戦後間もなく、服部良一のブギの音楽を、笠置シズ子が激しく踊りながら歌って、
大人気となった。東京ブギ・へいへいブギ・ロスアンゼルスの買い物・セコハン娘な
ど、服部と笠置のコンビは18曲もあったそうだ。

 上の『買い物ブギ』の歌詞について若干補足しておくと、昔は鮭と言えば辛い辛い
塩鮭と相場が決まっていて、鮭の缶詰など考えられなかったのである。

 これも笠置シズ子本人の話だが、ある舞台で買い物ブギを歌っていて、途中で歌詞
を間違えたために歌えなくなってしまった。すぐに歌い続けようとしたが、伴奏の音
楽には旋律が無いので、何処から歌ってよいものか分からず困っていると、会場で子
供が、
「ア、おばちゃん、間違えた。」
 と言う声が聞こえてきて、真っ青になった。こうなったら一か八か歌うしかない!
ままよ、どうにでもなれ と、適当に歌ったら、なんとピッタリ、オーケストラと同
時に歌い終わったのでほっとしたと言う。


 高峰三枝子の『銀座カンカン娘』:

   あの子可愛や カンカン娘
   赤いブラウス サンダル履いて
   誰を待つやら 銀座の街角
   時計眺めて ソワソワニヤニヤ
  これが銀座の カンカン娘

   雨に降られて カンカン娘
   傘もささずに 靴まで脱いで
   ままよ銀座は わたしのジャングル
   虎や狼 恐くはないのよ
  これが銀座の カンカン娘

   指を差されて カンカン娘
   ちょいと啖呵も 切りたくなるわ
   家が無くても お金が無くても
   男なんかにゃ 騙されないぞえ
  これが銀座の カンカン娘

   カルピス飲んで カンカン娘
   一つグラスに ストロが二本
   初恋の味 忘れちゃいやあよ
   顔を見合わせ チューチューチューチュー
  これが銀座の カンカン娘。

 これも一世を風靡した歌で、買い物ブギと同じく、私が歌詞を全部暗唱出来るとい
うのは、よほど度々聴いたという証拠である。
 カンカン娘のような女性は現代では珍しくもなんともないが、戦後における『不良
娘』のはしりだったと言えよう。


             [平成9年(1997年)8月2日   竹木貝石]







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