AWC ベツレヘム777  第33話       リーベルG


        
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ベツレヘム777  第33話       リーベルG
★内容

「二人が死んだらしいわね」バルタザールが天井の球体を見ながら言った。「
魂が入っているわ」
「武器を隠し持っていたらしいな。油断のならぬ小娘だ」
「あと二つね」
「ソルジャーたちが、あの小娘と男を殺せばよい」
「メルキオル」ヴェロニカが断固とした決意を表した。「ジーザズの復活など
神がお許しになるはずがありません。人間が踏み入れてはならない領域です」
「それが罪だというならば、私は喜んでこの身に雷を受けましょう。人類全て
の罪が許されるならば」
「すでにジーザズは一度復活されました。あなたたちは、もう一度その苦しみ
を神の子に与えようとするのですか」
「彼の苦しみは、彼の宿命なのですよ、ヴェロニカ様」
「宿命ですって?人に宿命を課せられるのは、神だけです。あなたたちが決め
るとは傲慢だとは思わないのですか?」
「思いませんな。その権利があるとすれば、この私だ」
「権利とは?」
「私はこのときを2000年待った。その苦しみがあなたに分かるか」
 ヴェロニカは、狂っているのかと問いかける目で、バルタザールとカスパル
を見た。だが、どちらもメルキオルの言葉に驚きを見せなかった。
「4機を撃破した。そろそろ危険域だ。到達するヘリウム/プラズマの波は相
当熱くなるぞ」
「外に出した4人のソルジャーはどうした?」
「わからない。廊下のセンサーが回復しない」
「殺されていれば、とっくに魂が来ているはずだ。まだ捜索しているのか」
「そのようだ」
「役立たずどもめ。時間がない」メルキオルは残った4体のソウルズに向かっ
て手を振った。「お前達も行け。奴らを殺すのだ」
 ソウルズたちが動き出した。
 ドアが開きかけた瞬間、そのわずかな間隙から数発の銃弾が飛び込み、先頭
のソウルズの膝を砕いた。ソウルズはつんのめって倒れ、後続のソウルズたち
が急停止してスタッカートを構えた。
 ドアが完全に開いた。腹這いになったカーティスが通路からソウルズたちを
狙っている。ソウルズたちが銃口を下げるよりも早く、カーティスは3点バー
ストで連射していた。スタッカートが破壊され、膝が砕かれる。たちまち2体
が倒れた。
 最後の一体はカーティスに向けてフルオートで乱射してきた。2発がカーテ
ィスの背中から右肺に撃ち込まれ、1発が左脚を貫いた。しかし、カーティス
は最後の弾丸をソウルズに叩き込んだ。
「カーティス!」サオリが悲鳴をあげた。
「大丈夫です」カーティスはスタッカートを杖にして、よろよろと立ち上がっ
た。口の端から血が流れている。「早くサニル君を……」
 サオリは涙を流しながら振り向くと、ハンドガンを構えて室内に入っていっ
た。
「死にたくなければサニルを解放しなさい」
「777の魂まで後2つだ」メルキオルは慌てた様子を見せなかった。「我々
を撃てば、その2つが揃うことになる。ソウルズは互いに殺し合うことはでき
ないが、お前が撃てば……」
「うるさい!」
「もうやめましょう、メルキオル」ヴェロニカが横から言った。「ソウルズた
ちは一人も死んでいません。逆にソウルズたちがサオリたちを殺すこともでき
ないでしょう。計画は終わりです」
「そうですかな?」相変わらず落ち着き払った態度で、メルキオルはカスパル
を見た。「カスパル、ドアを」
 カスパルはコンソールに手を伸ばした。
 とっさにサオリは銃口をそちらに向けて発砲した。最初の2発はまるで見当
違いの方向へ飛び、壁を傷つけただけだった。次の2発はやや近づいたが、や
はり外れていた。
 最後の一発が、カスパルの手元に命中した。だが、すでにカスパルは必要な
操作を終えていた。
 ヴェロニカが小さく悲鳴をあげた。
 振り向いたサオリは、ドアが閉じかけているのを見た。ドア付近には、ソウ
ルズたちの身体が重なって倒れており、そのうち一体の頭部がドアに挟まれて
いた。
 通常、シールドアには安全機構があり、人間の手などが挟まっていれば、即
座に反転するように設定されている。カスパルはその安全機構を無効化したら
しく、ドアはソウルズの頭部を挟んだまま、容赦なく閉じていった。
 ドアの向こうからカーティスが、スタッカートの銃身を挟もうと突き出した。
が、一瞬遅く、ソウルズの強靱な頭部はぐしゃりと潰れてしまった。
 同時に天井の半球に、また一つグリーンの光が満ちた。
「驚きましたか、ヴェロニカ様」メルキオルは勝ち誇ったように言った。「こ
のカスパルはホーリーソウルズの教えに帰依しているわけではないのですよ。
彼は単なる技術的な協力者にすぎない。これがどういうことかお分かりですか
な?」
「カスパルは、ソウルズを殺せるということね」ヴェロニカは震えながらも、
きっとメルキオルを睨んだ。「私を殺すつもり?私の役割とは、このことだっ
たの?」
 カスパルがどこかに隠し持っていたらしいハンドガンを手にして立ち上がっ
た。
「やれ」メルキオルが命じた。
 銃声が轟く。サオリとヴェロニカは、思わず目を閉じた。
 小さなうめき声は別の方向から聞こえた。目を開いたサオリは、バルタザー
ルが額を撃ち抜かれて倒れているのを見た。
「バルタザールの魂に祝福あれ」メルキオルは厳かにそう言うと十字を切った。
「あ、あなたは……」ヴェロニカは震えていた。「同じソウルズを……」
「彼女も覚悟していましたよ。その二人があっさり殺されていてくれれば、私
もこんなことはしたくなかったのですがね」
「なぜ、私を殺さなかったのですか!」
「あなたには、まだ果たすべき役割が残されています」
 ヴェロニカの表情が変化した。わずかに残っていた温和な部分が消え、頑な
な影が現れた。
「それがどんな役割なのか知りませんが、私はもう、ナザレ計画に協力するつ
もりなどありません」
「その話は後にしましょう」
「システム正常に稼働中」カスパルが告げた。「シークエンス異常なし。魂の
座、問題なし。主鎖−側鎖リレーション安定。AヘリックスからEヘリックス
までの各ループ、理論値プラスマイナス4の許容範囲。リボソーム、スプライ
シオソームの各分子集合体も正常」
 天井の全ての半球が暗くなっていく。内部の発光物質がどこかに吸い取られ
ているようだ。サオリもヴェロニカも息を呑んで、その光景を見つめた。
 ドアが開いてカーティスが入ってきた。
「お嬢さん……」
「カーティス、怪我は?」
「大丈夫です。どうなっているんです?」
「始まってしまったようね」
 天井が完全に暗くなった。全てのディスプレイに、無数のグラフィックが、
人間の目では捉えることが不可能なスピードで次々と表示されている。
「ビルド・シークエンス943……947……最終シークエンス完了!」
「神よ!」メルキオルは歓喜の表情で天井を仰いだ。「復活のときだ!」

                                つづく





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