AWC ベツレヘム777  第32話       リーベルG


        
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ベツレヘム777  第32話       リーベルG
★内容

 残った7機は、それぞれ15秒から30秒の距離をとり、接近のコースも微
妙に変化がつけられていた。先導機が破壊された瞬間、各機のOSは自動的に
針路を変更することになっていた。
 <ベツレヘム>から、再びレーザーが走った。2番機が推進系統に致命傷を
負った。その瞬間、OSは搭載している熱噴流爆薬を点火した。機体が中央か
ら裂け、プラズマで保護された6000度の高温ガス噴流が一直線に<ベツレ
ヘム>に向かって伸びていった。
「くそ」カスパルは罵り声をあげた。「高温のヘリウム/プラズマラインだ」
「どういうことだね」
「単純だが効果は高い。太陽のフレアに炙られるようなものだ。直撃すれば、
<ベツレヘム>の外部装甲などあっさり穴が開くぞ」
「防御手段は?」
「ない」
「それなら、どうしてそんなに落ち着いているのだ」
「幸い、まだ距離が遠い。絶対零度の宇宙空間では急速に冷却されて、効果を
失う。プラズマもそんなに持続しない。ここまで到達する頃には、ヘリウムは
拡散して熱が集中することはない。基本的に100キロメートル以内で使用す
る近距離兵器なんだ」
 話しているうちにも、次の機体が破壊され、同じように高温ガス噴流が生ま
れた。
「だがこのままではまずいな。余分な熱が発生しているから、照準の再計算に
時間がかかる。1、2機ぐらいは100キロ内に到達しそうだ」
「時間はどれぐらいかかるのだ?」
「20分といったところだ」
「わかった。計画の遂行を急ごう」

『何をしたのだ、小娘』
 メルキオルの声が聞こえてきた途端、サオリは立ち上がった。
「プライバシーを守っただけよ。さっさと次を入れなさいよ」
『センサーをつぶしたぐらいで、どうかなるとでも思ったのか。まあよい、少
し計画を早めさせてもらおう。次は二人のソルジャーを同時に入れる。一人が
死んだ時点で、もう一人はお前と相打ちになるように命じてある。その後、こ
ちらの男を射殺すれば、777の魂が得られる』
 サオリは床に置いたスキーピオ対人地雷を見た。ソウルズたちはカーティス
の武装を解除したものの、サオリに関しては調べようともしなかった。サオリ
はまだ戦闘ベストを着たままで、この地雷が残っていることは、サオリ自身も
忘れていた。記憶を頼りに、ソウルズが入ってくるドアの方に向けて置き、セ
イフティグリップを抜いた。自信があったわけではないが、手順が正しいこと
を信じるしかない。
「最後に教えて」サオリは叫んだ。「ナザレ計画って、一体何なの?」
『……いいだろう。LSG理論によって複製された魂は、同じDNA情報を持
つ肉体にしか宿ることはできない。異なるDNA情報を持つ肉体が、別の魂を
受け入れると、激烈な拒否反応を起こして即死するのだ。これが地球の人類が
滅びた原因だ』
「それで?」
『我々はロンギヌスの槍に残っていたジーザズのDNA情報から、ジーザズの
魂を複製した。だが、その魂は目覚めてはいない。これはDNA情報に欠落が
あったためだと思われるが、詳しいことはわかっていない。わかっているのは
777人分の殺された魂が必要だということだけだ』
「なぜ、殺されなければならないの?」
『殺された魂は、より多くのエネルギーを内包しているからだ』
「ジーザズの魂をどうするつもりなの?」
『新たな肉体に宿らせるのだ』メルキオルの声は歓喜に満ちていた。『神の子
の復活だ!』
「新たな肉体……まさか」
『そうだ。お前の弟に、ジーザズのDNA情報を持つウィルスを投与してある。
全身の細胞を攻撃して、DNA情報を入れ替える能力を持っている。我々の計
算では、34パーセント以上のDNA情報が置き換われば、ジーザズの魂を受
け入れるのに充分だ』
 サオリの全身に震えが走った。
「何て事を……何て事をするのよ、このくそじじい!それでも人間なの!?」
『神の王国を作るためだ。多少の犠牲はやむを得ない。むしろ光栄に思うべき
だぞ』
「あんたは狂ってるわ」
 そのときヴェロニカの声が聞こえた。
『ジーザズの復活……それがナザレ計画なのですか?』
『そのとおりです』
『そんなことが本当に可能だと信じているのですか?』
『可能ですとも。それはすでに実証されているのですから』
『何ですって?』
『急いでくれ』カスパルの声が割り込んだ。『防衛システムが限界だ』
『わかった。では、小娘。さらばだ』
 言葉と同時にドアが開いた。2体のソウルズの姿が見えた。その瞬間、スキ
ーピオ対人地雷が作動した。
 無数のボールベアリングが、ソウルズたちの肉体を一瞬にして引き裂く光景
を、サオリは目をそらさずに見つめた。
『なんだ?』メルキオルの狼狽した声が聞こえた。『何事だ』
 サオリはドアから飛び出した。数瞬の差でドアが閉じる。

「逃げ出しおった!」メルキオルは怒鳴った。「4人行け!構わないから、発
見次第射殺しろ。各通路を閉鎖してセンサーを活性化させるのだ」
 黒衣のソウルズたちの半分が、銃口を下ろしてドアに向かった。閉ざされて
いたドアが開く。
 その瞬間、半死半生の擬態を捨て、カーティスは全力を振り絞ってドアから
飛び出した。通路で一回転してハンドガンを構える。
 最初に飛び出してきたソウルズが銃口を向ける前に、カーティスは4発をそ
の腕に撃ち込んだ。腹部に走った激痛を無視して、ソウルズが落としたスタッ
カートをつかむと、低い位置で連射する。ソウルズは膝から下を砕かれて倒れ
た。
「カーティス!」背後からサオリの声が響く。
「近寄らないで」カーティスは安堵を感じながら呼びかけた。
 3体のソウルズが一斉に飛び出してきた。すでに予測して狙いを定めていた
カーティスの正確な銃撃が襲いかかる。ソウルズたちの持っていたスタッカー
トに3発ずつ、続いて膝の関節に2発ずつ。3体のとりあえずの戦闘能力を奪
ったのを確認して、カーティスははじめて振り向いた。
「お嬢さん、無事でしたか」思わず笑みがこぼれる。「ひどい格好ですね」
「ほっといてよ。あなたの方は大丈夫なの?傷は?」
 カーティスは最後のリーフ4を首筋に貼った。たちまち痛みが緩和されてい
く。
「しばらくは持ちます」
 そう言うと、カーティスは慎重に狙いを絞って、床を這い回っているソウル
ズの手首を順番に撃ち抜き始めた。ソウルズたちは、呆れるぐらいの生命力で
サオリたちの方に這い進んできたが、もはや脅威とはなりえなかった。
「殺すとナザレ計画を進めてやることになってしまいますからね」
「サニルを助けないと!」
「わかってます」
 カーティスは、ソウルズたちの手から弾き飛ばしたスタッカートを調べた。
どれも弾丸で破壊されているが、マガジンには傷がない。自分のスタッカート
のマガジンと入れ替えると、サオリにはハンドガンを渡した。
「あと5発あります。撃つときは慎重に」
「わかったわ。行きましょう」
 シールドアのロックは解除されたままになっていた。二人は中の様子を窺っ
て突入のタイミングを待った。

                                つづく





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