#5058/7701 連載
★タイトル (AJM ) 97/ 4/28 18:39 ( 45)
新選組異聞 蒼き疾風 BY 野原向日葵
★内容
新選組異聞
蒼き疾風 <第2回>
第一章 芹沢鴨登場
(一)
時に世は幕末。浦賀沖の黒船騒動勃発から数年を経て、諸藩の若き志士たちは、直ち
に夷敵討つべしと叫びを上げた。
既に幕府の力は弱まり、志士の心は帝を奉じ、攘夷を旨とする尊皇攘夷に向かい、や
がてこれが徳川三百年の大平の世を揺るがす事になる。
「それで、決めたんですか?」
蕎麦屋の表通りに面した窓際を、二人の男が陣取っている。浪人風のいでたちではあ
ったが、この二人が後に京を震撼させる実力の持ち主になるとは、この時、誰も思わな
い。 「浪士隊の話しよ。いやだなぁ、土方さんのすっとぼけは・・・」
沖田総司は、頭を掻きながら照れ笑いをした。
「近藤さんは、その気のようだな」
「そりゃぁね。浪士隊と云っても、公方様警護が目的ですから、」
「京か・・・」
二人が蕎麦屋を出た時だった。前方に、人だかりができている。
「お侍さま、何とぞご勘弁を・・・」
「ええい!武士の命にぶつかっておきながら何をほざく。そこになおれっ!」
男は、刀を町人に向け、今にでも斬ろうと云う態度であった。
「誰だ、あれは・・・」
「さぁ、でも酷いですね」
確かに酷かった。男は酔っていた。出会い頭にぶつかったのは、この男のほうらしい
のだ。
その男の刀が振り下ろされたのと、野次馬の悲鳴が重なった瞬間___。
「土方さん___!」
刀を握る手を何者かが、抑えた。歳三である。
「貴様、邪魔をする気か!」
「邪魔をするつもりはない。やりたければ、やるといい。恥を晒したいのであれば・
・・」
「恥だと__!?」
「どう見ても、あなたが不利だ。無礼討ちと云えば格好がつくだろうが、周りはそう
思わないだろうさ。違いますか?」
「・・・・・」
歳三は、遥かに年長のこの男を冷ややかに見据えていた。
「引き上げるぞ、新見」
男は刀を納め、更に、
「名を聞いておこう」と振り向いた。
「土方歳三___。牛込の試衛館にて師範代を勤める者」
「聞かぬ、道場名だな。わしは、芹沢鴨。土方とやら、貴公の事、よく覚えておこう
」
そう云って芹沢鴨は、高笑いと共に立ち去った。
その後ろ姿を、歳三はいつまでも睨み続けていた。やがて、その手で芹沢を斬る事に
なるとは、この時、歳三は知る由もない。