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★タイトル (NKE ) 97/ 3/23 15:56 ( 48)
「おさな妻」PART1 作・山井次男 文・可愛真理子 UP中
★内容
おさな妻 平成5年 作品
作 山井 次男(50才)
文 可愛 真理子
今から十五年まえのことである。当時私は埼玉のK市R町にある鋳物工場で働いていた
。中学を出てから四つめの仕事である。
当時のR町は東北を中心に色々な流れ者が集まった謂わばドヤ街である。
元来引込み思案の私は親しい友もなく、そして酒も女も博打もやらず孤独な毎日を送っ
ていた。楽しみと言えば、くだらん三文小説を布団の中で読むくらいである。
酒は飲めず博打も知らないが、女は嫌いじゃなかった。ただ精彩にかける私と付き合う
ものずきな女もいなかったので、いつも性欲は自分で処理していた。
薄給ではあったが、これと言って趣味のない私は少しづつ小金が貯まっていた。
しかし、そんな私の虎の子を狙う連中が少なからずいた。
主に仕事仲間である彼らは、私から千円二千円の小銭をせびっては「今度の給料日には
必ず・・・」といって手を合わせた。だが金は大抵戻らなかった。
どうせ酒や博打等、その日暮らしの無計画な連中のこと、最初から返すつもりなんかな
い。
気の弱い私は、強引に取り立てる事も出来ず、いつも泣き寝入りをしていた。
松田さんもそんな連中の一人だった。
彼は私と同年配で赤ら顔の至って気のいい男だった。だから彼に拝み倒されると、どう
しても断る事が出来ず、ついつい貸してしまう。
そんなこんなで、二年に渡り彼に貸した金はついに十万円を越えていた。
十万円といえば、私の一月分の給料に相当する大金である。
さすがの私も困って、顔を会わせる度に、少しでもいいからと返済を求めた。
しかしその度に彼は辛い事情を悲しそうに語り、もう少し待ってくれを繰り返すばかり
だった。どうせオートレースでスッた事は明白であったが、これ以上のゴリ押しは出来
なかった。
そんな堕落的な彼にも家族があった。
家族と言っても、三つ年上の内縁の女房とその連れ子である。
こんな男だから家族を満足に養う甲斐性もなく、親子三人は六畳一間のボロ屋に身を寄
せて暮らしていた。
ある初夏の夜の事、松田さんが家族と共に私のアパートを尋ねてきた。
何やら心痛な面持ちで、私の部屋に入って来るなり正座すると、しばし無言だった彼は
突然私に土下座した。
「ヤマちゃん、申し訳ねぇ・・・このとおりだ、勘弁してくれ・・・」
彼の話は、金がなくて今は返せない、だから二人で出稼ぎに行って金を作って来る。つ
いてはこの子を置いて行くから借金の代わりに小間使にでもしてくれ、女の子だから何
かと役に立つ、それに子供の食費くらい送金する、金はきっと返すから、と言う事だっ
た。
私は驚いた、金が返らぬ上に子供の面倒まで押しつけられて、第一私は小間使を必要と
するような上等な暮らしはしていない。
大方、二人でとんずらするのに娘が足手まといになったから厄介払いしたいために、お
人好しの私に押しつけた様に思えた。
さすがの私も彼とその女房に激しく抗議したが、いつになく真剣な態度の彼の
二時間以上に渡る説得に負け、気の弱い私は、とうとう引受る事になった。
少女はすでにランドセルそして衣類雑貨などの入った大きな鞄とみかん箱を二つ持たさ
れていた。