AWC 熱闘!ブロンコス96(13)     Faith


        
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★タイトル (GLD     )  96/12/24  15:20  (200)
熱闘!ブロンコス96(13)     Faith
★内容
 1996年11月11日(月)、レギュラーシーズン第11週。

「なんか、巨人大騒ぎだね」
 西村のアパートに来た水上は、めぐみが片づけている床に散乱したスポーツ紙を
眺めていった。
「清原か落合か、ファンとしてはどっちがいいの」
「両方に決まってる」
 もともとFA制度は、巨人が清原欲しさに導入したなんて話もあるくらいだ。清
原の巨人入りは確実だろう。
「そんなにいい選手なのかな清原って。3割打ったこともほとんどないんでしょ」
「清原はどうでもいいから、ヒルマンを返してくれぇ」
 ロッテファンの正木が、わざとらしい悲鳴を上げた。
「伊良部がメジャーリーグに行っても、ヒルマンがいればなんとかなると思ってた
のに」
「防御率一位の伊良部と二位のヒルマンがいたのに5位になるようなチームには、
置いておくのはもったいない」
 冷たく言い放つ西村に、正木はぐうの音も出ない。
「それより今日の試合結果だ」
 今日は久しぶりに4人が揃うということで、この時間までみんな試合結果にアク
セスするのを我慢していたのだ。西村がパソコンをインタネットに接続する。
「そういえばさ、東大のアメフト部がプレイオフ決めたってね」
「マジ?」
「うん」
「わーお」
 水上が仕入れてきた情報に、一同びっくりである。
「驚くほどのことなの?」
 一人だけ状況がわかっていないめぐみが聞いた。
「すっげぇ弱かったんだよ、東大は。六大学野球と違って入れ替え戦があるから、
あんなチームはあっと言う間に二部落ちしていいはずだったのに」
「ついこの前じゃなかったっけ、リーグ戦全敗で、入れ替え戦だけ勝って一部に残っ
たの」
「えー、そんなの二部リーグのチームにしたら、いい迷惑じゃない」
「だろ?それがプレイオフに出るまでになるとはね」
 関東学生アメリカンフットボールは、一部リーグがA,Bブロックに分かれてい
る。各ブロックで総当たりの結果、Aブロック1位対Bブロック2位、Bブロック
1位対Aブロック2位で準決勝、その勝者同士で決勝戦を行う。勝った方が関西学
生リーグ・ディビジョン1の優勝チームと学生日本一を賭けて甲子園で戦うのだ。
 関西リーグでは京大が実力者で、「いつの日か、関西代表・京大、関東代表・東
大の国立大同士の夢の対決を」という声も聞こえるが、いままでは本当に夢でしか
なかった。が、関東も日大の凋落以来、法政大が主導権を握っているとは言え戦国
時代の様相。もしかしたら、東大が甲子園ボウルで戦う日がくるということも、無
きにしもあらずと言えなくもないこともなくはないんじゃないか、という気がしな
いこともなくはない。
「お、つながったぞ、どこから見る?」
「ファルコンズから行ってみよう」
「OK」
 ”Atlanta at St.Louis”(セントルイスのホームゲームでアトランタ対セン
トルイス)をクリックする。先週まで1勝8敗のアトランタ・ファルコンズの相手
は、同じNFC西地区のセントルイス・ラムズ(2勝7敗)であった。
 先週初白星のファルコンズ、連勝するには好都合の相手、だったが結果は
「16対59だってぇ」
 記録的大差での敗北であった。
「なんでそうなるのよ」
「えーと、ラムズは第1Qにタッチダウン2、第2Qにもタッチダウン2のフィー
ルドゴール1、第3Qにタッチダウン1、第4Qにタッチダウン3」
「一試合でタッチダウン8回かよ!」
「ラムズは、100ヤードラッシャーが二人も出てるぞ。ファルコンズはチーム全
体で44ヤードなのに」
 59得点とは、ただごとではない。一発でディフェンスコーディネータ(守備総
監督)の首が飛びかねない。
「今までの最高得点はどれくらいなんだ?」
「確か、ベンガルズが昔、61点とったことがあったはず。これはNFL史上2位っ
てとこだな」
「そういえば、ベンガルズも1勝6敗だったのが、ヘッドコーチがクビになって新
しい監督になったとたん3連勝中だろ。ファルコンズもヘッドコーチ交代なんじゃ
ないか?」
「あ・・・」
「ん?」
 突然、男たちが沈黙した。ファルコンズの名前が出たところで、めぐみのことを
忘れていたのに気づいたのだ。3人の背後は静まり返っている。ゆっくりと振り向
いた。
 めぐみは、しかし、にこやかな表情だった。すわ怒りを押し殺した微笑かと、却っ
て男たちの間に緊張が走ったが、めぐみはストレートのジンをグラス一杯飲み干し、
あっけらかんとして言った。
「どうせ負けるなら、これくらい威勢良く負けた方がすっきりするわね」
 3人は顔を見合わせる。めぐみの思考が読めない。
「他の一敗チームはどうだったの?」
「えーと」
 大慌てで西村が、タンパベイ・バッカニアーズとニューヨーク・ジェッツの試合
結果を呼び出した。
「バックス(バッカニアーズの略称)は延長でレイダーズに勝ち。ジェッツはパッ
ツ(ニューイングランド・ペイトリオッツの略称)に負け」
「じゃあ、まだ単独ビリではないと。あと6試合だっけ、来週の相手は?」
 けっこう、ゴキゲンな様子。
「3連敗で2勝8敗のニューオリンズ・セインツ」
「いーじゃない。来週は勝つわよ」
 にこやかなままであったが、”勝つわよ”だけがドスが効いた声だった。
 数秒間の沈黙。
「つ、次はどこを見ようか」
 水上がうろたえながら西村を振り返った。とたんにめぐみが笑い出した。
「冗談よ、冗談。あたしってそんなに怖いかな」
 またも男たちは沈黙。
「びびらすなよなぁ」
 男衆は期せずして、ハモった。

「えーと、チーフスとブロンコスは最後にするか」
「だね、次はジャイアンツにしよう」
「了解。っと、先にカージナルスを見るよ」
 ”Arizona at Washington”を選択する。カージナルスとジャイアンツは、目下
NFC東地区の最下位争いを展開中。先週の段階ではジャイアンツ4勝、カージナ
ルス3勝で一歩ジャイアンツのリードだったが。
 Arizona     37(OT)
 Washington  34
 ”OT”はオーバータイムス、つまり延長である。延長の末アリゾナ・カージナル
スの勝ち、ジャイアンツの結果次第で再び同率となる。さて、ジャイアンツは。
 西村が”N.Y.Gaiants at Carolina”を選択した。2連勝中のジャイアンツではあっ
たが、今週はアウェイで、新興チームらしからぬ好調を維持するパンサーズ戦だ。
 試合はかなり緊迫したものだった。先行したのはパンサーズだったが、ジャイア
ンツがタッチダウン2本で14対7と逆転。パンサーズが14対10と追い上げる
がジャイアンツが17対10と突き放す。が、パンサーズはタッチダウンを返して
17対17。さらにフィールドゴールで逆転した後、タッチダウンでとどめを刺し
た。
  N.Y.Giants  17
    Carolina    27
「うーむ、やはりパンサーズを止めるには、ジャイアンツでは役者不足だったか。
あれ、おい西村」
 いつの間にか、西村がパソコンの前を離れていた。正木と水上が振り向くと、西
村はせっかくめぐみが片づけたスポーツ新聞を引っぱり出し、90゜もあるロンリ
コをなみなみと注いだグラス片手に読売ジャイアンツ関連の記事を漁っている。
「うをーい、現実逃避するなよなー」

「さて、次はチーフスとブロンコスどっちの結果を見ようか」
 ブロンコスはホームでシカゴ・ベアーズ戦、チーフスはグリーンベイ・パッカー
ズをホームで迎え撃つ。
 NFCはダラス・カウボーイズとサンフランシスコ・49ersがツインピーク
ス(双璧)と呼ばれてきたが、カウボーイズは負傷者が出たり、主力選手が薬物反
応で出場停止になっていたりして、5勝4敗とどうも調子が出ない。49ersも
好調パンサーズに背後を脅かされるプレッシャーからか、6勝3敗でペースが上が
らない。
 結果、NFCの優勝は、8勝1敗とハイペースで疾走中のパッカーズではないか
との声が高まりつつある。
 おもしろいことに今年のスケジュールは、チーフスが今週、ブロンコスは第15
週にそれぞれパッカーズと対戦するのである。すでにチーフスとブロンコスの直接
対決は終わっているが、この数年の上昇機運を維持するパッカーズとの対戦結果で
最終的な順位を占えるかもしれない。
 もう一つおもしろいのは、今週ブロンコスと対戦しているベアーズと、チーフス
は来週対戦するのだ。
「やっぱりチーフスでしょ」
 水上が先手を取りたがった。チーフスに今のパッカーズを倒す力があれば、ブロ
ンコスを追い抜くチャンスはまだあると見てよい。
「OK、お先にどうぞ」
 水上相手に勝ち誇るパターンを計算した上で、正木が譲った。背後でロンリコを
あおっている西村に代わって、水上がマウスを動かす。
 ”Green Bay at Kansas City”を選択。切り替わった画面には、
 ”week 11
  Chiefs 27,Packers 20”とあった。
「やったね」
「やるじゃん」
 試合は開始早々、パッカーズとファンの度胆を抜く超ロングパスの成功を皮切り
に常にチーフスが先手先手と攻め、一時は27対6と大差を付けた。
 パッカーズのQBファーブは、若手ながら実力十分でNFLの次代のヒーローと
目されている。しかもファーブは、QBの大敵である寒さに強い。シーズン終盤と
もなるとドーム以外の球場では皮製のボールが凍ってしまうほどの寒さとなり、Q
Bはパスを投げるとき、ランナーにボールを渡すとき、指が滑りやすくなる。が、
ファーブは氷点下での試合ではルーキー以来無敗という、とんでもない奴なのであ
る。
 そのファーブが、パスを主体にチーフスを追い上げる。最終的にはパッカーズは
パスでトータル300ヤードを越えるオフェンスを展開していった。がしかし、時
間切れ。パス攻撃では300ヤードを越える成績だったが、ラン攻撃がトータル75
ヤードでは、いかに有望株ファーブといえども勝つのは難しかったようだ。それに
してもチーフスは、相変わらず地上戦の守備は強い。
「チーフスに負けてる様じゃ、パッカーズも大したことはないな」
 正木が余裕のあるところを見せる。
「あ、そーゆーこと言うんだ。ブロンコスはどうなんだよ」
 水上もチーフスの試合結果の詳細をじっくり見たいところだが、それ以上にブロ
ンコスの試合結果が気になるのは正木と同じだ。”Chicago at Denver”を選択する。
画面が切り替わって、ブロンコスのパスとランの中心選手であるシャープとディビ
スが抱き合っている写真の横に”week 11 Denver Broncos 17,Chicago Bears 12”
と表示された。
「あーっ、惜しいなあ」
 水上がマジで悔しがる。ほっとした表情の正木が画面を進める。
 追い上げるベアーズが、ブロンコスのファウルでエンドゾーン手前わずか1ヤー
ドまで前進。この時点で残り時間は40秒。がしかしブロンコスディフェンスはベ
アーズのハリスの突進を2回続けて止めた。残り9秒。すでにベアーズは、後半3
回とれるタイムアウトを使い果たしていた。
 ベアーズ3rdダウンの攻撃はフラニガンへのパス。しかし失敗、残り4秒。
 ベアーズと、そして水上の祈りの込められた最後のプレーは、エンドゾーンに走
り込んだコンウェイへのパスだった。が、キャッチすれば大逆転勝利のこのパスは、
(正木とブロンコスにすれば)危ないところでブロンコスのブラクストンがカット。
ブロンコス薄氷の勝利であった。
「でも勝ちは勝ちだもんね」
 パッとしない勝ち方ではあったが、チーフスがパッカーズを倒してくれたおかげ
で、勝率はNFL単独一位の9勝目である。AFCだけで見れば、中部地区首位の
スティーラーズが負けて7勝で止まっているおかげで、プレイオフでのホームフィー
ルドアドバンテージ争いもぐっと有利になった。
 残りは5試合。果たしてブロンコスは逃げ切れるのか。
       1位:ブロンコス   9勝1敗(地区内4勝1敗)
       2位:チーフス    7勝3敗(地区内4勝2敗)
       3位:チャージャース 6勝4敗(地区内3勝3敗)
       4位:シーホークス  5勝5敗(地区内1勝4敗)
       5位:レイダーズ   4勝6敗(地区内1勝3敗)


 次週(第12週)
 ブロンコス  対 ペイトリオッツ(ペイトリオッツのホームゲーム)
  チーフス   対 ベアーズ   (チーフスのホームゲーム)
  ファルコンズ 対 セインツ   (ファルコンズのホームゲーム)
  ジャイアンツ 対 カージナルス (カージナルスのホームゲーム)

                                                     −To be continued.−




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