| ちょっと恐い話 第七話 登季島 |
#4031/7701 連載 ★タイトル (LLD ) 95/ 3/ 7 22: 3 ( 29) ちょっと恐い話 第七話 登季島 ★内容 男と女が断崖に立っていた。男には妻があり、女には夫 があったが、にもかかわらず二人は愛し合った。 しかし、男は妻に、女は夫に絶対に別れないと言われて しまった。もはやあの世でいっしょになるしかないと、二 人は決めた。 「さあ、いこうか、いち、にのさんで、ね」 男が言った。女は静かにうなずいた。 「よし、目をつぶって、いち、にのさん!」 さん、というところで男の声は大きくなった。思い切っ て、というところだろうか。 しかし、男は飛び込まなかった。女とて同様である。二 人はほぼ同時に目を開け、下をのぞき込み、それから隣の 存在に気がついた。 二人は奇妙な笑いを浮かべた。 「あなたは名士だから」 と女が言うと 「君も美人だから」 男が返した。 「何か、きれいに別れられるね」 男が言うと 「本当ね」 と女があいずちを打った。 ちょっとした沈黙の後、 「駅までは送ってね」 と女が男にほほえんだ。 おわり
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