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★タイトル (LMF ) 95/ 1/15 13:22 ( 44)
闘争からの逃走 第四章 その2 ケル
★内容
「・・・・・それで何を貴方は見たのですか?」
「い、いえ!僕が見たのは現場だけですから、犯人の姿なんかは見ていません、
その大友さん・・・でしたね?その方以上の事はなにも・・・」
「いや、別にかまわないさ、証言が正確である事を確認したいから重複しても
いいんですよ」
「で、でも・・・大友さんって人と同じ事しか、僕は知らないと思いますから」
「・・・・・そうですか・・・それでしたら無理に証言していただかなくても
かまいませんが、何か他の点で思い出されたら連絡してください」
「お役にたてませんで・・・すみませんでした・・・・・それでは、これで
失礼します・・・・・」
「あ、ちょっと待ちなさい!!」
「は、はい?」一瞬、心臓が止まるかと彼は思った。
「そういえば名前を聞いてませんでしたね?ここの生徒さんですね?」
「あ、はい・・・」
「では、すみませんがクラスと名前を・・・・・」
話の最後の方は耳に入って無かった、どう答えるのか!?彼は下腹部から
何か上がって来るような感触を堪えながら焦っていた。
「2−Bの我孫子といいます!」
とっさに浮かんだのは同じクラスの出席番号の一番最初の名前だった。
「はい、わかりました・・・」
小山田はその偽名?を手帳に書き留めた。
「それでは何か思い出したらここまで連絡して下さい」
そう言って名刺を彼にわたした。
「あ、そうそう!すみませんが生徒手帳かなにか持っていたら見せていただけ
ませんか? いえ、単なる確認のためですから、こういう場合はいつもそう
しているもんで」
彼は、立っていられない位のめまいに襲われていた。
「すいません、実は家においてきちゃったんですが・・・」
「!!・・・生徒手帳を家に置いてきてはいかんでしょう、いつも持ってなけ
りゃ・・・・・・定期券か何かはありませんか?」
「・・・・・家が近いものですから・・・歩いて、その・・・」
「ふーーむ・・・・・ま、いいか!次からは忘れないようにね」
「は、はい!どうも申し訳ありませんでした」
「はははは、別にいいですよ!私は生活指導の教師じゃありませんからね」
「ど、どうも・・・それでは失礼しますです」
「ご協力ありがとうございました」
小山田はそう言うと軽く頭を下げたので、彼もそれに習った。
既に精神状態はギリギリの所まで来ていたが、まだやる事が残っていた。
学校から速やかに脱出しなければ!!さっき無線で知らせのあった自分の
写真をあの刑事がみたら・・・・・・全てが終わる!!急ぐんだ!
だが彼は走り出すような愚は犯さなかった、小山田の視線を背中に感じて
いたからである。自制心をフル動員して歩いた、歩いた、歩いた。
どうにか人垣の所まで戻り、ようやく一息つくと警官が一人校舎から出て来た。
それが何を意味するかを考えるより早く、彼は走りだしていた。