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天邪降臨 序章02 みのうら
★内容
SECT 2
「ああああああああ!!!」
悲鳴を上げたのはあきらだったが斬り飛ばされたのは朱音の腕だった。
あきらの、握りしめていた手が。あたたかで、力強い、救いの御手が突然硬直した。
斬り放たれ吹き飛ばされた朱音の身体が、ふいと立ち上がったかのような感覚。引か
れる腕。思わず腰が浮く。離れてゆく指と指。斬り飛ばされたのは姉の腕。
コマ送りのように事件は起こり、事実を認識する前に反射的に悲鳴した。
「あ、あああああああ!!」
甲高い悲鳴が炎のなかを駆け抜けてゆく。
大きく見開かれた目と、小さな腕に抱えられた可愛らしい頭。
白い手足。真黒い髪。炎に照らされ赤い頬。
「おねえちゃん!!」
叫びと共に、限りない恐怖が場を支配した。あきらの恐怖。純粋な、澄んだ地下水の
ようにきれいな恐怖。耳鳴りがするほど透明な恐怖。
あきらの感情を、朱音は聴いた。音楽のように美しい。純化された子供の恐怖。
腕の痛みを忘れる。頭の奥がしびれるのは、その原因は何だろう。
大量の失血か。自分と同じ生き物の、強烈な感情に酔っているのか。それとも、自分
自身の恐怖を、あきらに奏でられたことへの怒りか。
それとも、身体に刃を入れられたことの、報復への希求か。
同調している。
眩暈がするほど、強く。
その危険に、朱音も気づかなかった。
あきらとの完全な同調が意味するものは。
生まれ育った大地が焼かれ、その大いなるちからであった大木達が、次々と倒れてゆ
く。悲鳴が、聞こえるはずだった。大地の、木々の、生命の悲鳴が。
敵が迫っていた。二人の肉親を喰いつくし、強大に膨れ上がり、なお飽き足らずに、
二人共を喰おうと迫る者たちが。
「あと、3月もあれば・・・」
二人の祖父であり、前の長であった老人はつぶやいて喰われた
神であるところの朱音についていた巫の少年も見失った。
が、あきらと朱音は逃がされた。
ちからをコントロールする、その術を知らぬままに。