AWC 天邪降臨 序章 01            みのうら


        
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★タイトル (ARJ     )  93/ 9/13   1:44  ( 46)
天邪降臨 序章 01            みのうら
★内容

序章
 SECT  1

 しかし炎は迫っていた。
 あきらを捨てていくことは出来ない。足手まといだろうが、何だろうが。
「あきら!!」
 叫んだ。
「あきら!!!」
 もう一度。炎が耳元を過ぎていく。轟々と。
 手を延ばした。届かない。遠すぎる。
「あきら!!!」
齢五百年を越えようというが、大木が、二人の間で燃えている。向こうは火の海だ。逃
げられない。戻れない。来るしかない。
「あきら!!!」
 泣きじゃくる、小さな子供。朱音の、残された、たったひとつのもの。
 姉として過ごした、たった一月の間。
 父も母もいない。育ててくれた祖父は目の前で死んだ。
 肉親だと、引き合わされてからたったの一月。
 ああ、だけど。
 朱音は炎の中で目を凝らす。思い出す。
 ああ、ひとめ会って理解した。
 同じ女の胎内から生まれた、あたしのきょうだい。この世でたった一人、あたしとお
なじもの。
「あきら」
 朱音は再び叫ぶ。時間がない。炎に紛れて奴らが来る。
 炎を吸い込み、咳き込んだ。
 あきらは、しゃがみ込んだままだ。
 そして姉は決心した。ちからを使って、敵を呼び寄せることになろうとも。
 炎からあきらを救わなければ。
 心が決まってからは、一瞬になった。右手を振り上げ、倒木に叩き付ける。
 じうと、手のひらが焼ける間もなく。
 木は、存在しなくなった。
「あきら」
 焼けていないほうの、左手を差し出す。子供が顔を上げた。朱音とよく似た顔で、朱
音ならけっして浮かべようもない表情で、朱音を見ている。
「おねえちゃん」
 子供らしい、素直な瞳。姉も、こうなっただろうか。あきらのように、普通に育てら
れていれば。
 一族の長として、また現人神として生きていなければ。
 あきらの手を取る朱音は、あきらと二つも違わないと見えた。ただ炎が彼女の頬に投
げかける影が、その瞳をひどく大人びた、途方も無く年老い疲れたふうに見せていた。
「あきら」
 何度目か、名前を呼ぶ。
 さあ、立って。
 と、言葉は次げなかった。




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