AWC おかしまんΩ[3]/有松乃栄


        
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★タイトル (WMH     )  93/ 8/26   3:43  ( 81)
おかしまんΩ[3]/有松乃栄
★内容


 人生って何。
 そんなことは、考えるもんじゃありません。

          ☆★☆★☆

 岡史満の生活は、貧しい。
 何故だかはわからないが、貧しかった。
 仕事をしないまま食べて行けるのは、義父の残した貯金があるからであった。
 岡史満は、生まれてすぐに山中に捨てられているところを、義父母に助けられ、
引き取られ、育てられた。しかし、早い時期にその両親をも失った。以来、彼は
ずっと一人だった。
 だから、彼には正式に血のつながりのある人物、というものがいない。
 しかし、戸籍上、福良愛子とは遠縁の親戚にあたる。そして、高校時代の一年
先輩でもある。
 史満と、その部屋に入り浸る愛子との関係というものは、周りが見ても訳がわ
からないものであった。愛子は、時には史満に食べ物を持っていってやったり、
御飯を作ってやったりもしていた。
 しかし、決して恋人同士ではない。
 二十一歳の史満と、二十二歳の愛子との関係は、そういった、あいまいなもの
なのだ。

 「ずんがらぴっぴっぴー」
 「どうしたのよ、シマちゃん、いきなり」
 史満が突然、意味のわからない奇声をあげたので、愛子が驚いて言った。
 「いや、なんとなく、意味のない行動がしたくなるってことないか?」
 扇風機にあたりながら、史満が言う。
 窓辺に腰かけた愛子は、そんな史満の言葉を無視するように、バタバタと団扇
で扇いでいた。
 「しかし、暇やな」
 「そうね。いつものことだけれど」
 ありきたりな会話を交わす。
 「ねえ、シマちゃん」
 あらたまったように、愛子が話を出す。
 「この街が平和であればあるほど、あなたは無気力になっていくのね。それは
あなたがスーパーヒーローだから、活躍の場がなければ、動きようがないのはわ
かる。けれど、あなたの使命は何?」
 「何って……この街の平和と安全を守る為に、日々……」
 「日々、何かが起こるのを待って、家でゴロゴロしているだけ?」
 愛子はきちんと正座をしなおし、史満の正面に座る。それを受けて、史満も、
困ったような顔をしながらも、あぐらをかいたまま背筋を伸ばす。
 「最近、うちの商店街で、不穏な動きがあるってこと、気づいてた?」
 「何?」
 愛子の言葉に、すぐに史満が反応した。
 「……ちゃんと、街の安全を守ってくれるなら、常に情報集めぐらいしとかな
いと、ダメでしょう」
 「すまん……」
 「私は、あなたを本物のスーパーヒーローだって信じてるよ。だけど、受け身
な正義の味方なんていない。もっと、自ら歩み進んで行けるような、そんな人に
なってほしいんよ。私はね」
 なんともいえない、間が開いた。
 愛子は、史満の顔をじっと見つめていた。史満は、人に目を見られるのが苦手
だったのだ。
 「とにかく」
 場の雰囲気をかえようと、史満がきりだす。
 「その不穏な動きって、なんや?」
 「あのね、私もはっきりとしたことはわからないんだけど、花子ちゃんの家か
ら入ってきた情報なのよ」
 「おもちゃ屋のか」
 花子ちゃんとは、花宮南商店街、坂上玩具店の一人娘、坂上花子(さかうえ・
はなこ)ちゃんのことである。彼女は、レンタルビデオ屋の太郎君の同級生だ。
 「話の出処に行ってみんとな」
 「そうこなくっちゃ」
 二人は、立ち上がった。

          ☆★☆★☆

 「確かに、ふおんやな……」
 「そうね……ふおんね」
 坂上玩具店、店内、数多いおもちゃが並び、鳴り物が音を立てている中、天井
をふおんふおんと、飛びかう、飛行船のおもちゃの姿があった。
 その動きは、まったく、
 ふおん、ふおん、
 と、ふおんそのものであった。
 「ね、ふおんなのさ」
 花子が、自慢気に言う。
 なんじゃこりゃ。短くまとめたな。

                                (つづく)





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