AWC The Last War  3−2  Marchin Muller


        
#3169/7701 連載
★タイトル (AAA     )  93/ 6/ 9  22:26  ( 81)
The Last War  3−2  Marchin Muller
★内容

3

 二〇二三年十一月、アーノルド ウェルスが間接的に支配してきたもう一つの軍
事企業体が新興宗教とマフィアが組んだ一団に経営権を乗っ取られてしまった。こ
の新興宗教はベルナルド スミスの教団とは全く異なる宗教集団ではあったがその
存在目的とその形態は殆ど違いがなかった。この企業体は政治、国家には中立な立
場ではあるが、その存在理由から経済のあらゆる面を押さえ政治、国家さえも動か
そうとしている。
 ウェルスの軍事企業体がウェルス共同体と呼ばれたのに対し、新興宗教の息のか
かった軍事企業体はMG連合と呼ばれた。これは企業体の中心母胎となったマクド
ネル社とグスタフ社のイニシャルから取られていた。当然、新興宗教やマフィアの
文字は一般民衆には知られる事はなかった。
 ウェルス共同体がアメリカ、日本、イギリス、フランスなどの先進国の企業を集
結したのに対し、MG連合はそれ以外のあらゆる国家の企業を集結しようとしてい
た。ユダヤ系、アラブ系などいろいろな国家とさまざまな企業体が参画した。それ
でも、ウェルス共同体に対抗するには力不足と判断するとウェルス共同体の切り崩
しと取り込みをしようと画策していた。
 JPS/Japan Platform System/にもMG連合の買収工作の魔の手が延びてい
た。先年の太陽光発電衛星の事件で死亡した竹山もJPSの社員であった。そして、
竹下と玉井二人が中心となり竹山の後を継いだ。プラント2の設計は玉井によるも
のである。プラント2の制御システムは倉田が担当した。倉田と玉井は高校時代か
らの親友であった。各企業のヘッドハンターから彼らは狙われていた。特に玉井は
プラント2の責任者として、そしてプラント3の設計オブザーバーとして活躍してい
るため高く評価されていて、他の企業に執拗にマークされている。
 ユダヤ系企業の日本支社の幹部として薬師寺と武田は情報を一手に握り全てを操
作していた。二人とも二十六歳という若き幹部であった。こんなに若い二人が幹部
であるとは誰も分からなかった。
 「やめるんだ」
 「こいつを殺せばJPSは我が陣営に入る事は間違いない」
 「無意味な殺生は許さない」
 薬師寺は武田に殺人をする事を許さなかったのには訳があった。玉井と薬師寺は
知り合いであり、JPSの情報を少なからず得てきた間柄でもあった。玉井を殺す
ことは友人を失う事であり、JPSをMG連合に参画させられぬ事とどちらを取る
べきか判断に迷っていた。さらに殺す相手が玉井である必要がないのではと疑問に
感じていた。

4

 「どうだね、マードック君」
 「完璧です」
 「そうかね、うまいったか。それは結構」
 十一月四日、霜が降りた草木に囲まれた古びたが手入れの行き届いている大きな
屋敷である。その中の一室で二人の男が大理石の机をはさみ向かい合っている。
 「これであの事件と我々を結び付ける証拠は全て無くなった訳だ」
 陸軍参謀マードックと向かい合っているのは現代史を研究している大学の教授、
ウィラートであった。彼は政治学にも通じており、その教え子にはアーノルド ウ
ェルスもいた。
 「そう、国連軍は我々の行動の妨げにわなりませんか」
 「我々にはウェルスがいる。彼の私兵とアルマド教団を使えば恐いものは何もな
い」
 「MG連合を牛耳るアルマド教団ともつき合いがあるのですか?」
 「私は現代史研究が仕事だ。誰とでも会うのさ」
 「危険ではありませんか」
 「そんなことはないだろう」
  黒い企業体の生みの親は結局のところウィラート教授の構想によるものだった。
ウェルスもアルマド教団もさらには新興宗教の指導者スミス、マードック自身もウ
ィラートの手のひらの上で舞い踊っているに過ぎない。
 マードックはこのとき初めて恐怖を感じた。「教授とは名ばかりで、テロリスト
の大ボスではないかと」そして「こいつを生かしておいては…」とも考えた。
 「最後にもう一度聞いておくが、スミスの教団は全滅したのだな」
 「この件を知るものは一人もいません」
 「知らないものは残っているのというのか。そいつは本当に知らないのだろうな」
 「支部の奴らが残っているが、そいつらはなにも知りません」
 「本当なのか」
 「全滅を免れたスミス教団の支部内を盗聴しているのですが、検討外れの会話を
しています」
 「そうか、どちらにしても監視していればよろしい」
 「何かを爆破しようとテロを企てていますが目標が何なのか未だに確認出来てい
ません」
 「要注意という事か、目標が私ではないだろうな」
 「それはありません。少なくとも目標は軍関係の施設のようです」
 「ほう、大変だな。教団本部の仕返しということか」
 「取りあえず警備を厳重にして対処するつもりです」
  「それで十分かな」
 「……」
 ピー・ピー・ピー
 マードックはギョッとした。マードックの内ポケットで携帯電話がなっていた。
 「どうしたんだ?」
 「準将、スミス教団の残党を見失いました!」
                                                   (続く)




前のメッセージ 次のメッセージ 
「連載」一覧 MARCHIN MULLERの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE