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The Last War 2 - 1 Marchin Muller
★内容
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国連安全保障理事会でアメリカ代表が『アメリカ軍の五0%を平和実施部隊に編
入する用意がある』という発言をしたことは大統領の英断として国連や国際関係評
論家などの声が伝えられた。しかし、これは大統領自身の意見としてよりもシムス
補佐官の意図が大きく含まれていた。
いつものように多忙な大統領が執務室の大机に向かって座り書類に目をとうして
いる。そこにシムス大統領補佐官が少し感情的になった表情をしてやってくる。
「大統領、軍の八割から七割を国連軍に編入してはどうでしょうか。だめなら五
割でもかまいません。」
「これまで愛国心から国防についてくれた彼らだ、国連のために働くなど納得し
てくれるだろうか。」
「そんな事は言ってられないでしょう。現在の経済状態が続けば国庫は破産して
しまいます。ご決断下さい。」
「分かった。来週の記者会見の時、国連軍への派兵を発表しよう。」
シムスは大統領に国連軍への派兵を過小評価した数値で示し、最低でも五0%の
派兵をしないと経済効果はないと報告していた。彼自身は二割程度の派兵で十分効
果は得られると判断していたが問題点も多く強行しなければ簡単に派兵は出来ない
と推測する事は容易であった。
シムスの予測通り大統領の『五0%発言』への反論の声は大きかった。また、そ
れまでの経済問題が影響し大統領の支持率はどんどん低下していった。支持率の低
下は議会の派兵法案の否決、大統領の経済法案への拒否権の発動と悪循環を重ねて
いった。
次の大統領選では彼は共和党候補として立つ事が出来ず本選を待たずして再選を
果たせない大統領となった。そして新人のラルフ ローガンが候補として選ばれた。
本選では前大統領の『五0%発言』が影響して共和党に不利であろうというのが大
方の予想であった。しかし、共和党候補の彼は経済再建には彼しかいないというこ
とからか圧倒的多数の支持を得て当選を果たした。
ラルフ ローガンは新任の挨拶として『五0%発言』の撤回を発表する。しかし、
同時に国連軍への派兵は継続して検討実施すると発表した。これらはすべてシムス
の予測していた通りであった。そして、シムスの大統領補佐官としての権力は強化
された。
「大統領、おめでとうございます。」
「ありがとう、これからは私を補佐して欲しい。宜しく頼む。」
「はい、分かっております。派兵が進めば経済問題も解決する事でしょう。」
「それは頼もしい。派兵問題は全て君に任せる、どんどん進めてくれたまえ。」
「はい。」
「ところで先年の太陽光発電衛星の事件の調査はどうなっているのかね。」
「調査は余り進展して居りません。CIAの報告では新興宗教の一団が関与してい
るとの報告もありますがいずれも推測の域を出ません。」
「途中経過でもいいから報告書を見せてくれないかね。」
「分かりました。明日までに報告書を作成させます。」
衛星事件の噂はこの頃がピークとなっていて、新しく発見される証拠もだんだん
と減少していた。さらに犯人に直接結びつく証拠は何一つ出てきていなかった。た
だ、クレイドルたちに言わせるとそれはシムス自身が犯人に結びつく唯一の糸口を
握っていると……。シムスはその点を敢えて無視していた。いや無視せざる負えな
かったのかもしれない。そういう点から見ればシムス自身も被害者であったのかも
しれない。
シムスは太陽光発電衛星の調査はそれほど力をいれず、派兵問題の解決に躍起に
なっていた。当初の計画通りシムスは軍の二五%を派兵する事にし、国防省に派兵
する兵士の人選等諸問題の指示を進めていった。
そして、シムスはアドリア ライト国連事務総長との会合で国連軍の軍隊組織を
編むリカ軍の組織体系を基本にするように勧めた。そして、組織化に当たっては協
力は惜しまないとも語り、事務総長に国連軍創設の意志を固めるに成功した。
5
空軍基地の一室である。部屋の明かりは暗めで、それに比して窓からは強い光が入
ってくる、まぶしいくらいだ。上空をジェット戦闘機が轟音を残して通過していく。
基地指令官が大尉を前にしている。その大尉は、前の『サンフラワー奪回作戦』に
ベイウルフのパイロットとして参加したチェイニー大尉と同期の男で名はニトムズ
といった。
「ニトムズ君、来週から少佐だ。」
「昇進ですか。」
「もっとめでたい話がある。」
「はい?何でしょうか。」
「君には国連軍へいってもらう。」
「そうですか。」
ニトムズは国連軍への派兵を知っていたので驚きはしなかった。ついに来るときが
来たと言う気持ちで受け取っていた。
「君だけじゃないぞ、君の編隊は全て派遣する事になっている。」
「そうですか、まだ未熟者ばかりなので訓練が必要です。実戦で新米に実地教育で
きて幸せです。」
「いや、君は部隊とは別れる。」
「え!、……。」
「君は特殊部隊の編隊長をやってもらう事になっている。詳しい事は私も知らん、
ペンタゴンでその辺の事は聞いてくれ。以上だ。」
「はい!」
ニトムズは敬礼をすると部屋から出ていった。
ペンタゴンの会議室である。窓はなく薄暗い部屋にニトムズが一人待っている。
ドアが開き男が入ってくる。ニトムズは見覚えがあるがすぐには思い出せない。
「ニトムズ君、早速だが……。」
ニトムズはこの男がキャドル シムスであることを思い出して、表情を少し曇ら
せた。
「君の国連軍での任務だが、空戦チームのチーフパイロット、編隊長として後輩を
育てる事だ。」
「空戦チームとは一体なんですか。」
「きみも空軍パイロットなら少しくらいは推測つくだろう。」
「はあ。」
「わが国にはブルーエンジェルス、サンダーバーズ、イギリスにはレッドアロー、
カナダにはスノーバーズ、日本にはブルーインパルス、どれも戦技研究のためのチー
ムだ。」
「それを国連軍にも作るのですか。」
「そうだ、国連軍をアッピールする場が必要だろう。」
「そうでしょうか。それで、本職は戦技研究とゆうことですか。」
「いや、それは君も知っての通り、国連軍の最高指揮官は国連事務総長だからな。
その辺はアドリア ライトに相談してくれ。」
「空戦チームというのも変ですね。もっといい名前はないのですか。」
「ああ、名前はまだ決まっていないんだ。その運営方式もな。その辺は君が中心と
なって決めてもらう事になると思うんだが。」
「わたしがですか……。」
「もちろんと言っては変だが、まだメンバーが決まっていない。君が選んで欲しい、
おもいっきりアッピールできるような人材をね。」
「そうですか……、早速、人選をしなければ。しかし、我が軍には適任者は殆どい
ないなあ……。」
翌日、ニトムズはアドリア ライトに会見した。そのときには、ニトムズの空戦
チームに対する構想は固まっていた。
「名称は決まったかね。」
「はい。」
「なんというのかな。」
「ジェットエンジェルスです。」
「ほう、ジェットエンジェルスか。いい響きだね。」
「めいっぱいアッピール出来る人選をするつもりです。」
「君の活躍を、楽しみにしているよ。」
かくしてジェットエンジェルスが誕生する。