AWC The Last War 2 - 1 Marchin Muller


        
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The Last War  2 - 1  Marchin Muller
★内容
The Last War

 第1章 JetAngels

1

 クレイドルが氷が入った三杯のグラスにそれぞれウイスキーそそぎ込む。それに
水を加えて、かき混ぜながらバーンズに話しかける。
「山田は東京に着いたかな。」
バーンズはグラスを受け取りながら答える。
「今ごろは大臣にも報告を終えてゆっくり休んでいるでしょうね。」
「そうであって欲しいな。」
チェイニーは水割りで潤った口で相づちを打った。
クレイドルは一気にグラスを空け、グラスの中の氷を転がしながら、話を変える。
「全く、シムスの野郎は何か隠してるな。ジャックは最初会った時から怪しいと思
っていたんだ。今、考えるとあれは計画的な犯行だったと断言できるな。それにジ
ャックを陸軍から引き抜いてきたのはシムスだったからなあ。」
「ある!その可能性はある。しかし、シムス一人でジャックを陸軍から引き抜くな
んて事は出来ないだろう。そうすると…。この事件はかなり根が深いな。」
チェイニーが答える。
「犯人の目的は何だったんだろうな。重要人物の謀殺、衛星の破壊、または…。他
にも考えられるかな。目的が特定できれば犯人に一歩近づく事が出来るんだろうが。」
「いったい誰が…」バーンズが口をはさむ。
「いや単数ではないな、まちがいなく複数だ。シムスが首謀者でない事は間違いない。
」
「なぜですか?」
「本来、犯罪の…」
「犯罪って言葉でいいんでしょうか?」バーンズが口をはさむ。
「まあそう言わないでとりあえず犯罪としておこう。本来、計画的犯罪というもの
は犯行を考える首謀者がおり、犯行を実行する実行犯がいる。そして実際の犯罪に
よる利益はともかく計画された段階では犯罪は首謀者の利益となるように描かれて
いる。今回の事件に戻ってみると分かっている事はA.実行犯の存在とB.実際に
行われた犯行だ。これまでにAは五人確認されている。シムスも含めれば六人だが
シムスはただ操られていただけかも知れない。残りの五人とは衛星の乗組員四人と
ジャックだ。B.は衛星を破壊した事、世界各国で五万人を殺害した事、四万頭の
家畜を殺した事、一00万haの植物を消失させ植生を変え破壊したこと、ノール
ウェイのフィヨルドの氷を溶かして谷を一つ埋めた事。この事件ではシムスにはど
う考えても利益はないだろう。死者の中にシムスが消したそうな奴はいなかったし、
衛星を破壊したところで利はない。」
「するとシムスは誰かに踊らされていたと…。誰にジャックを紹介されたか聞いて
下さい。そうすればはっきりするではないですか。」
「シムスか、いやだな。」
「この際、好き嫌いを言っている場合じゃないでしょう。」
「では、提督に聞いて下さい。」またバーンズが口をはさむ。
バーンズは珍しくいいポイントに口をはさむ。よく割り込みおやじ/インタラプタ
/と言われている。
「今度、ウィル爺さんに会ったら聞いておくよ。」
「しかし、私は少し神秘的なものを感じるんですよ。つまり、衛星の犯人といいジ
ャックといい生きて帰れるとは考えていなかったでしょう。我々軍人ならまず生き
て帰れる作戦を立てるでしょう。政治家でも死ねとは言わないでしょう。」
「つまり、宗教的なものを感じると言うのだな。なるほど、確かにそんな気もするな。
」
グラスを受け取り二杯目をバーンズが入れる。今度は一つのグラスだけ薄目で入れ
る。クレイドルは酒にはさほど強くなかった。入隊の頃、訓練降下中に二日酔いで
戻した事がある。
 クレイドルは少し話し疲れたようで、ソファーに根を深くおろしている。チェイ
ニーとバーンズは話題を変えベイウルフのECMポッドの性能に付いて話している。
新しいECMポッドの開発が遅れ海軍で使用していた物がベイウルフに流用されて
いた。
「海軍にもベイウルフが欲しいな。」
「宇宙は空軍の担当だよ。」
「いやいやこれからはそうはいかないよ。宇宙船は船だから海軍だよ。」
「宇宙は平和の領域だから…。」
「しかし、核は制限されているが通常兵器は制限の対象になってないだろう。」

2

 深くソファーに沈み込み四杯目に口を付けたクレイドルはグラスの向こうに見覚
えのある人物見つけそれを見つめた。それを見た他の二人もその視線の方向を追っ
た。そこには山田が立っていた。
「どうしたんだ、国には帰らなかったのか。」
ちょっと酔っぱらい気味のチェイニーが立ち上がりながら声を掛けた。
「ジョンにここに居るんじゃないかと聞いてね。」
三人に握手をしソファーに座る。バーンズはグラスを持ってくる。
「あああいつも近く少尉だ、ここにも飲みに来れるようになるな。」
このバーは士官専用になっておりジョンはまだここに足を踏み居れる事が出来ない。
「どうしたんだ、国に帰ったんじゃないのか。」
チェイニーが同じ質問を繰り返す。
「居残りですよ、新しい任務が決まりそうです。明日、国連に顔を出していきます。」
「ほう、空軍もついに海外派兵か。」
「航空自衛隊ですよ。」
「名前なんてどうでもいいだろう。」
「まあ、近く改名されるそうです。」
「そらな、…じゃあ君は国連軍に配属される事になったのか。たいした物だ。」
「そういえば、中佐あの作戦はテストケースだと言っていませんでしたか。」
「そうだったな、シムスの話しだが軍内の交流とか言っていたな。特殊チームを国
連軍に編入するのかな。」
「国連軍なら国際混成部隊でしょう。山田一尉ともまた一緒にやれるんじゃないで
すか。」
「ほう、なるほどな。シムスはいや大統領補佐官と言い替えた方がいいな。大統領
補佐官は国連に興味があるのか。国連に深入りしないのがこれまでの方針だったは
ずだが、方針変更したのか。」
「方針変更か…。それをそそのかした奴が怪しい。」
「なんだそれは。」山田は話しのつながりが読めず問いただす。
「さっきな、ジャックの話しをしていたんだ。あいつを送り込んできた奴が怪しい
とね。今回の事件の首謀者として…。」
「ほう、それで」
「シムスは首謀者とは考えにくい。なぜなら、今回の事件でシムスの利益になるよ
うな事柄はない。とすると、ジャックを我々のチームに送り込んできた奴は誰かと
ね考えていたんだ。軍内の交流とはいい口実だね。それでシムスを釣ったんだろう。
そうやってジャックを我々の部隊にいれた。」
「なるほどな。理にかなっている。どっちにしても国連の話しは補佐官殿の考えだ
ろうがな。」
「国連か……。新しい機構を作るように進めるのかな。」
「どっちにしても、我々は軍人だ。そんな機構そのものには関われないから補佐官
に任せるしかない。」
「これまでは祖国のために、愛国心から仕事をしていたのに。国連の活動は何を根
拠に仕事をすればいいのか。」
「おい、おまえさん、ほんとにそんなに純粋な気持ちでやっていたのか。」
「そんな事もないだろう?」
「まあな。」
「しかし、どうなるんだろうな。」
「軍の二割から三割を国連軍にまわしてだな。」チェイニーはついに酒が回ってき
たのか長話を始める。
「軍隊を出さない国からはお金を集める。特に日本からわな。」
「おいおい。これから派兵するんだって。」
「そして、軍の費用を他の国から負担してもらって軍事費は縮小、軍関係産業はそ
のままの生産体勢でアメリカは黒字、国民は喜び、景気はばんばんと。」
「お前、飲み過ぎだぞ。」
「ところで、竹山はどうだった。」クレイドルはこわごわ山田に訊ねる。
「ああ…、病院で亡くなったよ。手当までが長かったからなもっと早く手術できれ
ば良かったのだが。」
「そうか…。」
「日本に帰ったら奥さんにも報告しなければな……。」
その場の雰囲気は深く海溝の底のように重苦しく誰も口を開けなくなった。

3

 国連では本格的に平和実施部隊の編成をするよう議論が始まっていた。安全保障
理事会でアメリカ代表が大統領のコメントとして『アメリカ軍の五0%を平和実施
部隊に編入する用意がある』という発言をしたことがきっかけとなっていた。これ
までに数々の平和維持活動、平和監視活動が世界の各地で行われてきたがどれも恒
久的に平和を維持できると言えるケースはなく、そのケースの半数近くが活動本来
の目的からは失敗と判断せざる負えない状態にあった。各国がともに平和を生み出
す事が出来る平和実施部隊の編成を望んでいた。ただ、平和実施部隊を編成する事
をもっとも熱心に進める人物は平和を第一に望んでいるが為にしている行為ではな
かった。
 一カ月前、国連事務総長がギリシャ人のアドリア ライトに替わった。彼は平和
実施部隊の編成や配置など実際的、具体的問題点の解決を精力的に行った。彼自身
は後に『バルカンの嵐』と呼ばれる紛争解決作戦が実施されるようにバルカン半島
の極端な緊張状態を身を持って感じており、その彼を育んだ環境が彼をして国連平
和実施軍の設立を成さしめたと言ってもいいであろう。
 後に国連軍の最高指揮官は国連事務総長としその兵力の全ては国連の下で働くと
いった細かい規定が国連憲章に追加された。初期の段階では世界各国から派兵され
た部隊を再度編成していた。アメリカ軍の二五%、ロシア軍の三0%、イギリス軍
の一0%など多数の国の兵力が混成され総計はアメリカ軍の戦力をも凌駕し人類史
上最大の戦力となったのである。もちろんその戦力は戦略兵器は入れられていない。
冷戦時代ならともかくこの頃には局地戦が殆どで長距離と言えども大陸間弾道弾を
使用するなどと言う事は考えられなかった。しかし、以前に平和維持軍として編成
された部隊の兵器に比べると数段の違いがあった。海軍力は空母を中心とした五個
艦隊二八0隻、陸軍は機動部隊、機械化歩兵部隊を合わせて三00万人一五0師団、
空軍は戦闘機、長距離爆撃機など五000機が集められた。拠点は世界各国の軍事
基地が充てれれ各国ともに最低は一箇所の拠点が設けられた。これによって地球上
のどこにでも四時間以内に緊急展開部隊を投入できるようになった。
 この頃、日本は兵器とともに派兵は行わなかった。人的資源を提供するという形
での派兵となったのである。数年後には兵器とともに派兵する事になるがこれは兵
器の輸出ではないかとする議論が高まった。
 国連軍の編成の活動についてマスコミは勝者と敗者を報告した。勝者はアメリカ
とロシア、東欧諸国であり、敗者は西欧の半数の国そして日本であった。この勝者
と敗者の選考は特に国際貢献度と経済面について重視された。貢献度では特に目に
する事の出来る派兵の兵力で比較された。経済面では派兵する事によって景気に与
える影響で比較された。アメリカやロシアは派兵する事によってこれまでの軍事費
が国連持ちとなり国庫の軍事支出が二割カット出来た。さらに兵器の需要は減らな
いため軍事産業は減産どころか増産する企業さえ多くあった。このためこれらの国
には好景気が訪れた。一方で派兵しなかったまたは国力に比して小数の兵力をのみ
派兵した国は軍事費を国連に納める事となった。このため国庫は軍事費の二重取り
と呼ばれる状態に陥っていた。景気は悪化し各国政府は方針の変更を早急に検討し
なければならなくなっていた。
 国連軍の共通語を英語とする決定にかなりの国から反対はあったものの、使用言
語を統一する事に付いては疑問の余地はなかったし、代替え案が無い点からも既に
結論の出た問題であった。指揮系統は英語で各国の部隊内では自国語が使われる事
になった。さらに兵器が他国の物であればその国の言語も学ばなければならないと
言う言語問題は単一の軍隊としてはこれまでにない問題であった。日本は初期から
英語仕様で進めており、ある意味では部隊の中でもエリートを選び、国連軍に送り
込んでいた。他の国ではあぶれ物、新米を国連軍に選抜した。中でもフランスは外
人傭兵部隊を選別し新米、落ちこぼれの兵を国連軍に回し、精鋭は自国の拠点へ配
備した。
 国連軍内部での傭兵部隊は他の兵とは別枠で扱われた。後年、国連自体が傭兵を
募る事になるが、国連が募った傭兵が部隊の多数を占めるようになった頃には傭兵
部隊は戦争屋集団となって部隊としては扱いにくい物になってしまった。この傭兵
部隊はブラックベレーともコブラとも呼ばれ危険地帯に先鋒として送り込まれる事
が多かった。





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