AWC 掲示板(BBS)最高傑作集48


        
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★タイトル (KCF     )  93/ 5/23  23:19  (197)
掲示板(BBS)最高傑作集48
★内容

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ねるとんパーティー初体験記  [5/23]
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 3月の初めに私は、いわゆる「ねるとんパーティー」なるものに初めて参加し
ましたので、今回はその時の体験についてお話いたします。
 みなさんの中には、「ねるとんパーティー」を知らない人もいらっしゃるかと
思われますので、まずはこのパーティーについて簡単に説明いたします。
 ねるとんパーティーには同人数の男女が多数参加し、食事をしながら、気に入
った異性と2人だけで、あるいはグループで話をします。そして、パーティーの
最後に、気に入った異性に愛を告白し、その相手も自分を気に入ってくれた場合
は恋人同士になれるというものです。要するに、恋人を見つけるためのパーティ
ーというわけです。

 私がこのパーティーについて知ったのは、東京にあるユースホステルにちょく
ちょく遊びに来るNさんからでした。Nさんは以前は1週間に1回くらいしかユ
ースホステルに来ていなかったのですが、2月になると頻繁に来るようになった
ので、私は理由を聞いてみました。
「Nさん。最近はユースによく来るけど、どうしたんだよ?」
「親友がガールフレンドを1度に4人も作ったから忙しくて俺に会ってくれない
んだよ。だから俺は暇になっちゃったんだ。」
 私は嫉妬心がメラメラと芽生え、再びNさんに尋ねました。
「そいつはどうやって1度に4人ものガールフレンドを作ったんだよ?」
「ねるとんパーティーって知ってる?」
「ああ。」
「あれで見つけたんだ。」
「でも、ねるとんパーティーでは恋人は1人しか見つからないんじゃないの?」
「普通はそうなんだけど、俺の親友が行ったねるとんパーティーでは複数見つか
るんだ。」
「本当かよ。俺もぜひ参加したいな。」
 私は以前からずーとねるとんパーティーに1度でもいいから出てみたいと思っ
ていました。しかしながら、誰が、どこで、このパーティーを主催しているのか
わからず、1度も参加したことはありませんでした。
  Nさんが言いました。
「行きたい?」
「うん。1回も行ったことがないからなあ。」
「じゃ、友達にどうやって参加するのか聞いてみる。」
「値段はいくらなの?」
「友達は3千円から8千円くらいって言ってたな。」
「何だよ、その格差は?」
「パーティーが行われる日時や場所によって値段がかなり違うらしいよ。」
「俺は3千円のに出たいな。」
「女の子と飲み食いして3千円なんて安いな。」
「そーだよな。Nさんも一緒に行かない?」
 Nさんはイギリス人のガールフレンドに振られてからしばらくたつので私は誘
ってみました。
「えー、俺も行くのかよ?」
「面白そうじゃないか。1度だけ体験しようよ。」
「そうだなあ。3千円なら恋人が見つからなくても、さんざん飲み食いできるだ
けで元が取れるな。」
「そうだよ。」
「よし。じゃ、一緒に行くか?」
「よし、決まった。じゃあ、友達に参加方法聞いて2人分申し込んどいてよ。」
「うん。そうするよ。」
「日時がはっきりしたらすぐに電話してね。」
「OK。」

 これで私は、その週末に、ねるとんパーティーに行けるものだと思い、ウキウ
キしながらNさんからの連絡を待ちました。ところが、その週にはNさんから連
絡はありませんでした。

 次の週の火曜日にユースホステルに行くと、Nさんがいました。すぐに私は彼
に詰め寄りました。
「ねるとんパーティー、どうなったんだよ? 連絡もよこさないで。」
「ああ。友達から申し込み先の電話番号聞いといたよ。」
「聞いたって? じゃあ、申し込んでくれた?」
「申し込んでない。」
「どうして?」
「面倒くさかったんだ。」
 Nさんという人は、とんでもなく無精な人です。手続きが面倒だからといって
自分のアパートに電話はなく、ガスも使うことができません。一応、水道と電気
だけはかろうじて使うことができます。しかし、アパートに風呂がなく、食器を
洗うのが面倒だからといって食事はすべて外食のため、水を使うのはトイレだけ
で、水道代はほとんどかからないということです。もっともNさんの場合は、働
くのも面倒だといって、ここ数年間は無職なのですから、電話やガスについてど
うこう言っても仕方がありません。
 電話がないため、私からNさんに連絡をとるには、Nさんのアパートにわざわ
ざ足を運ぶか、あるいはNさんがユースホステルに来るのを待つしかありません。
 こんな人に、ねるとんパーティーの予約を頼んだ私が間違っていました。そこ
で私は、自分で申し込むことにし、Nさんから2つのねるとんパーティーの申し
込み電話番号を聞き出しました。

  その週の平日は仕事で忙しかったため、電話することができたのは土曜日の昼
間でした。ダイヤルを回してからすぐに女が電話に出ました。
「もしもし。ムニャムニャムニャ・・・・・・」
「ちょっとよく聞こえないのですが、もうちょっと大きな声で話していただけま
すか?」
「そちらの電話が故障してるんじゃないですか?」
 非常に不愉快な女でした。普通に話せばはっきり聞こえるのに、その女は最初
にわざと小さな声で話していたのです。
「あのー、こちらでねるとんパーティーをやってるって聞いたんですが、申し込
みはこちらでいいのでしょうか?」
「そうです。」
「パーティーはいつも週末にやってるということですが、今度いつありますか?」
「あしたです。」
「場所はどこで行われますか?」
「銀座です。」
「何時から始まるのでしょうか?」
「1時です。」
「あしたのねるとんパーティーには何人くらいの参加者が来ますか?」
「60人です。」
「値段はいくらですか?」
「8千円です。」
 本当に不愉快な女です。
「あしたの1時から銀座で、参加者30名くらいの予定で行われ、会費は8千円
です。」と、ひとこと言ってくれれば済むものを、わざとこのような答え方をし
ているのです。さらにこの女は、言葉の端々に、
「ねるとんパーティーで恋人を見つけようなんて企んでるな。このすけべ野郎!」
という態度が見え隠れしているのです。
 私はこの女とこれ以上話を続けると、逆上して受話器を電話機に叩きつけてし
まい、電話機が壊れて今後はダイヤルQ2で卑猥なメッセージを聞くことができ
なくなるのではないかと恐れ、
「検討しておく。」
と言って電話を切りました。
 受話器を置いた後、私は怒りで体をわなわなと震わせていました。しばらくし
て、私は気を取り直し、もうひとつのねるとんパーティーに電話しました。しか
し、こちらのねるとんパーティーは、何度電話しても話し中なのです。結局、そ
の週末はあきらめ、次の週の平日に電話することにしました。

 火曜日の午後7時頃、話し中でつながらなかった方のねるとんパーティーに電
話しました。今度はすんなりと1発でつながりました。非常に親切そうな男の人
の声が聞こえてきました。
「もしもし、株式会社***でございます。」
「こちらで、ねるとんパーティーを行っていると聞いたのですが、」
「はい、やっております。」
「今度いつありますか?」
「今度の日曜に横浜で、午後2時からあります。参加者は男女30名ずつを予定
しております。今現在は、女性のかたの申し込みが多く、男性はチャンスですよ。」
「おいくらでしょうか?」
「8千円でございます。」
「もうちょっと安いのはないですか?」
「うちで主催しているねるとんパーティーはすべて8千円でございます。」
「そうですか。じゃあちょっと検討しますので。」
 8千円は高すぎると思ったので、結局は予約しませんでした。

 その後、私はユースホステルに行き、Nさんに会いました。彼は私に尋ねてき
ました。
「ねるとんパーティーに電話した?」
「教えてくれた電話番号、2つともかけたよ。」
「で、申し込んだの?」
「いや、申し込まなかった。」
「どうして?」
「両方とも8千円だったからさ。3千円のパーティーなんてないじゃないか。N
さんの友達、嘘ついたんじゃないの?」
「おかしいなあ。あいつ嘘ついたのかな。」
「4人のガールフレンドを見つけたっていうのも嘘じゃないの?」
「それは本当だよ。4人とも俺のアパートに連れてきたんだから。女の子はみん
な、ねるとんパーティーで知り合ったって言ってたぜ。」
「変だなあ。」
 Nさんの友達が嘘をついたかを2人で議論しても仕方がないので、私は値段に
ついては諦め、Nさんに提案しました。
「8千円でもいいから、ねるとんパーティーに1回だけ行かない?」
「8千円は高すぎるよ。5千円以下ならいいけど。」
「8千円の価値があるかもしれないよ。1回だけ出てみよーよ。」
「8千円払って恋人が出来なかったら大損だよ。」
「恋人ができなくったって、いろんな人と話ができるし、なんといっても話のネ
タになるよ。」
「俺は君みたいにエッセイなど書いていないから、話のネタなんかいらないよ。」

 Nさんは、実際には8千円が高いと思っているのではありません。Nさんは昨
年、外人の女の子がたくさん参加した「国際六本木パーティー」に2万5千円も
払ってこっそり参加していたからです。
 Nさんが「国際六本木パーティー」を知ったのは、やはりユースホステルの談
話室ででした。ちょうどその日、私もたまたまユースホステルに居合わせたので
今でもはっきり覚えています。
 その日の談話室にいたのは、私とNさん、それに日本人の男性宿泊客の3人だ
けでした。Nさんは退屈そうに、椅子に座って1人でぼけーとしていました。し
ばらくすると、日本人の宿泊客が、テーブルの上にさっきまで読んでいた雑誌を
置いたまま、談話室から出て行きました。
「あいつ、雑誌置いてきやがった。」
Nさんはこう言いながら、その雑誌を手に取り、ページをぺらぺらとめくり始め
ました。
「首都圏で行われるイベントが載ってる雑誌か。何か面白いことないかなあ。」
 Nさんは毎日やることがないため、真剣にその雑誌を読んでいました。やがて、
雑誌の中に、何かいいものを見つけたらしく、私に大声で言いました。
「お! いいのがあったぞ! 『国際六本木パーティー・・・これであなたも外
国人の恋人ができる』 これいいと思わない?」
「面白そうだけど、六本木だから高いと思うよ。」
私は、六本木ではさんざん痛い目にあってきていたので、冷めた声でそう答えま
した。
 Nさんは、すぐに私に尋ねてきました。
「参加費、いくらだと思う?」
「六本木だから1万円くらいするんじゃないの。」
「はずれ。男2万5千円、女1万5千円。」
 私はこれを聞いてびっくりし、思わず大声をあげてしまいました。
「ひえー! 2万5千円かよ! 誰がそんなパーティー来るんだよ?」
「芸能人とかの金持ちだろうな。俺達みたいな庶民じゃ絶対に行けないな。」
「金があったって、そんな馬鹿高いパーティー、普通の人間は行かないぜ。金持
ちで頭が少しいかれてる奴が行くんだろうな。でも、その値段じゃ、外人は誰も
来ないぜ。」
私は当然の疑問を抱きました。
「いや、外人は別料金と書いてある。外人の場合は、男女とも5千円ということ
だ。」

(「掲示板(BBS)最高傑作集49」に続く)





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