AWC 詩>小さな灯火               κει


        
#960/1336 短編
★タイトル (WJM     )  97/12/16   1:23  (175)
詩>小さな灯火               κει
★内容



           . .. . Joy . .. .

           上空から落下する
           バレーボールに似た水の塊
           街にアスファルトにたたきつけられ
           歓喜の声をあげて
           拡散する

           苦難の時に天で集められていた
           その息吹すらまるで示すこともなく

           (意地悪!)


           強い陽射しが瞬間
           更に明るさを増して
           光の粒が
           自由な夢のように空中に満ちて漂い
           生命(イノチ)の舞いを舞う

                      その眩く懐かしい輝きが
            内なる時を
           
                      止めた



           . .. .  風  . .. .

           風がカーテンを音もなく膨らませ
           私を爽やかに包み 過ぎてゆく
           この体に静かにわななき始める
           名の知れぬ様々の興奮をみた

           はてしなく広大な空間に
           手を休め
           耳を一心にすませる

           喧噪の世界のなかにあって
           私も
           この私もまた
           大地の歌を
           歌いたい

           あの時の私の風はもう
           国境をこえただろうか
           幾千もの涙の意味を身に受けて
           もう
           大地の砂に紛れただろうか



           . .. .  和解 . .. .

           うなだれて歩く歩道
            けれども
           希望する内なる自分に気づく

            目を上げると溌剌とした少女の歩く姿
           軽やかに運動する肢体
           柔らかに希望する指先や
            快活なその瞳の語っているものとか
  
            明瞭な喜びへの模索
            飛翔を夢見る人々とペンギンとあなたと私
            あらゆるものを駆使し発揮しての
            邁進への陶酔だっていいじゃないか
            愚痴り罵った世界との和解
           静かで力強い融合の音を胸にきいていた
 
            無垢に笑う幼子のように率直に奔放に
            また独断と偏見の大いに入り交じった心で
            建て前ぬきのいのちをこの傷ついた腕に
           再び
            抱(イダ)く



           . .. .  a Tree  . .. .

           もしも自らの誇りとしてきたものが
           一つ一つと
           崩壊してゆくような音を耳にするとき
           私はそれを静かなる吟味のときに変えて
           寒冷な風を身にうける丸裸の木を思いたい

           変化なき日々が続く
           否、風は刻刻と
           冷たくなってゆくとしても

           境遇にうなだれはしない
            「死にいたる病」に負けはしない
           やがて訪れる日をりんとして待ち望み
           骸骨みたいなそのままの姿で
           立つ尽くしている
           一本の木のように

           私はひからびて腐らない
           足元の落ちたものに心を惑わされない
           今をありのままの姿で受け入れ
           張りつめた空気に両手を悠然と広げ
           澄んだ瞳で
           明日をみつめ続けたい



                      . .. .  a Tree (another version)  . .. .

                     葉のすべて落ちきった一本の木を
           前にすると
           私は敬けんな気持ちになる

           人々の視線に臆することなく
           骸骨みたいな姿で
           しっかりと根をおろし立っている姿が

           やがてくる時をりんとして待ち望み
           足元の過去よりも冷たい明日を
           受け入れるような力強い幹が

           そのひからびた枝が

           私を小さくする



           . .. .  耳を澄ませば  . .. .

           毎日は毎日は確かに繰り返す繰り返す
           波のようでさ
           ざぶんざぶんと単調な音は
           いつまでもいつまでも
           これからも続くよ続く恐らくいつまでも
           いつまでも波は続いていくんだよ
           けど
           日がなみなみの波を輝かせ
           波は喜んできらきらときらめいて
           月が静かに静かに内なる世界へと
           誘(イザナ)う イザベル
           耳を澄ませば
           いつだって違う世界の音色さ



           . .. . 戸惑い . .. .

           冷気をうけて
           氷のようになってしまった頬を
           手で三度こすり
           色褪せた明日を考える

            コートのポケットに両手を入れて
           ふと見上げた空から
           降ってくるものに驚いた

           降りてこないで!
           こんな場所に

           ここはとても汚れているんだ
           ほらぬかるみの上に落ちると
           あなたはもうあなたでなくなってゆく

           叫びは幾万もの結晶のうちへ消えて
           あとにはただ
           降りつむ愛





                         κει




前のメッセージ 次のメッセージ 
「短編」一覧 けいの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE