#926/1336 短編
★タイトル (WJM ) 97/10/29 21:25 ( 83)
詩>(昔のノートから) κει
★内容
○
ただ見つめているだけで
見つめるものの心を
優しくしていくような人を
知りました
育ちの良さ
すこやかな成長
という言葉を思わせる人を
そしてまた
部屋で一人でいる時や
そのさらさらとした髪を
とかすとき
何を感じるものかと
知りたくなりました
それが僕の君への
初めでした
○
同じ方向だって
偶然装って
自転車を並べた
僕には遠回りの坂道
外灯に映し出される僕の影は
君の影と重なっていて
下ってくる自転車の通るたび
君のコートや体が触れるのを
何度も期待する僕でした
○
冬休み
自習室の休憩所のソファに
クラスの仲間たちと
座っているのが多かったのは
一度君が隣に座り
頭を僕の肩に少し
傾けてくつろいだりしたから
ねえねえと言って話しかけてくる君の
微笑みの滲む瞳が好きです
大きくやわらかく
輝きすらあって
僕には何か得られそうにないもので
たまらなく嬉しいくせに
時々そっけなく対応するのは
抱きすくめたくなる衝動に
罪悪を感じるから
質問されて君のペンをとる時
触れる手の僕のとは違う体温や形が
いつも君をいとおしくさせる
○
教科書を覗き込むようにして
僕に顔を近づけてきた君に
何でもないかのような態度で
僕は微分を教えているつもりで
けれどもまるで回らない頭の教える
微分は微分ではなくて
ふと君も
聞いているつもりであると
気がついた
胸のたかなり
<後書き>
荷物の整理をしていた際、でてきたノートに書かれてあった詩に、そのままでは稚
拙すぎて恥ずかしいので幾分かの手を加えたものです。捨てようかと思いもしました
が、何か懐かしかったので捨てられず恥ずかしげもなく幾つかまとめてみました。