#925/1336 短編
★タイトル (PCN ) 97/10/28 21: 9 ( 85)
すーがくにまつわるエトセトラっ! 2 湯飲み茶碗
★内容
ここはとある学校の職員室前廊下です。今、職員室の中で久しぶりに
会った教師と生徒が話をしています。
ちょっとバレないように、そーっと近づいてみましょう。
「なんか全然、焼けてないな。家でずっと勉強でもしてたん?」
「そんな訳ないじゃないですかぁー」
話をしているのは主人公(!?)の倉本 慎と文系の折見 美里です。
(ちなみに倉本 慎は理系数学しか教えていません。)
「じゃあ、どっか行ったか?」
「あ、『もののけ姫』見に行きましたよ」
「『もののけ姫』かぁー、オレ見に行ってへんわー。あれで宮崎監督最後
やねんなぁー」
しみじみと語る彼。どうやらけっこうファンみたいですね。
「先生、宮崎 駿の映画でね『風の谷のナウシカ』ってあるじゃないです
か。あれは結局どーゆーイミなんですか?」
「あれは・・・お前、自然破壊はあかんってゆーのを訴えてるんちゃうん
か・・・」
「やっぱりそうなんですかぁ」
「そやそや、『魔女の宅急便』ってあるやろ。あれ、オレなぁー、キキが
飛行船から落ちそうになってるトンボを助けるシーンあるやん。そこで
オレ泣いたわー」
「はぁ・・・・」
どう反応してよいのかわからず戸惑う美里。そして意外にも、とゆーか信
じられないが倉本 慎は感激屋さんだった・・・しかし、そこは泣けるシ
ーンなのかっ!?
ギモンを残しつつも彼の宮崎映画に対する情熱は続く。
「オレ一番好きなんは『紅の豚』やな。あれはホンマかっこええわぁ−」
かなり陶酔しています。マジみたいですね。
「はぁ・・・『ブタ』ですか・・・」
彼女は『ブタ』のおもしろさがわからないようです。まー、今までと雰囲
気が違った映画でしたしね。しかし彼は『紅の豚』を「カッコイイ」とま
で言っています。この辺はガキの私達生徒にはわからない世界なのでしょ
うか?
それとも・・・おっと、話はまだ続くみたいですね。
「そういえば、8月30日から『演歌の花道』上演してますよね?」
話題を変えたのは美里。どうやら、さっきの雰囲気に絶えれなかったよう
です。
「オレはシャ乱Qより『キャッツ アイ』の方がええわ。イイ奴でてるし」
話題を変えられたことになーんのギモンも抱かない倉本 慎。
「え!? じゃあ、もしかして先生「内田 有紀」とかが、いいんですか?」
「内田 有紀ええやん」
「何を言うてんねん」と言わんばかりの顔つきで美里を見る倉本 慎。
「・・・・・・・・・」
あまりの意外な言葉に沈黙する美里。
この後、彼女は一礼をして職員室から出て行くことになる。
どうしてこのようなズレが生じたのでしょうか?
男と女の違いからなのか? 世代の違いからなのか? 美的・芸術セン
スの問題なのか?といろいろ私達には考えられますが、話をしていた折見
美里だけは倉本 慎の美的・芸術センスがおかしいと思ったでしょう。
どうしてかって? なぜなら『紅の豚』の話をしてた時に倉本 慎の目は
異様にキラキラ光っていたから・・・・だそうです。
おわり