#751/1336 短編
★タイトル (RVN ) 97/ 1/31 21:17 ( 60)
彼女の笑顔で世界が変わる
★内容
彼女の笑顔で世界が変わる
水口そうみ
「さあ、3時間にわたってお送りしております「1億人クイズ選抜」も、終盤戦になっ
て参りました。ここまで勝ち抜いてきたのは、A大クイズ研究会の会長、竹内光彦君と
、竹内君の大先輩、フリーライター戸塚忠さんの二人だけ。この二人でいよいよ決勝戦
を行います。A大現役大学生の若さが勝つか、それともA大OBの経験が勝るか。いっ
たい、勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか」
「ねぇ、またあんたのこと呼んでるよ、微笑んであげないと・・・・」
「えっ、またぁ?・・・・あーあ、もーやんなっちゃう、またテレビ番組じゃない!」
「あんた、なかなか人気あるんじゃないの?」
「いくら人気があってもねぇ、こういつもいつも微笑んでたら大変よ。この間のオリン
ピックの時なんか、顔がひきつりそうになったんだから」
「なんだか急に忙しくなったんじゃない、あんた」
「テレビが悪いのよ、何か勝負があるたんびに、「勝利の女神はどちらに微笑むのでし
ょう」ばっかり・・・・・・そもそもはねえ、私なんかはヒマな女神だったのよ。勝利なんて
もんは人間が自分でつかんでたんだから。それが、誰かがこんなコトバ流行らせるから
、こんなに忙しくなっちゃうのよ、まったく。みんなが私に頼ろうとしてるから・・・・」
「でも、女神が微笑むなんて、誰が考えたか知らないけどうまい言い方よねぇ」
「冗談じゃないわよ、よそごとだと思って・・・・・・そりゃ、あんたはいいわよ、「自由の
女神」だから・・・・」
「私だって大変なのよ、アメリカで立ちっぱなしなんだから。自由だなんて、笑っちゃ
うわよ」
「嘘ぱっかり・・・・立ってんのは建物だけでしょ、中身のあんたはいつもフラフラしてる
んだから・・・・・・」
「へへへ・・・・・・バレてたか・・・・あっ、なんか言ってるよ、「勝利の女神が迷っているの
か、なかなか決着がつきません」だって」
「はいはい、わかりましたよ。別に迷ってるわけじゃなかったのに・・・・こんなの、どっ
ちだっていいんだから・・・・・・・・」
「・・・・優勝の栄冠は戸塚さんの頭上に輝いたわけですが、戸塚さん、4度目の挑戦で初
の優勝、長かったですね・・・・・・・・」
「なんだかんだ言って、やっぱりよく見てるわね」
「なにが?」
「ほら、長い間がんばってた方を勝たせたじゃない」
「ああ、そんなの関係ないわよ。どっちが勝ったって私には関係ないんだから」
「じゃあ、何であっちの男に決めたの?」
「え、うーん・・・・強いて言うならねぇ・・・・・・あの人が、この間フられた彼氏に似てたか
ら、かな・・・・」