AWC 初体験                  $フィン


        
#750/1336 短編
★タイトル (XVB     )  97/ 1/26  23:22  ( 40)
初体験                  $フィン
★内容

 ぼくと兄貴が海に行ったときのことだ。ぼくたちが住んでいる薄暗い屋敷とは違
って、夏の海は若者たちが集うことで、滞在しているホテルにも若々しい気が天ま
で上がっていくようだった。
 それにしても夏の熱さは堪える。まぶしすぎる太陽の下では兄貴同様ぼくも少々
ばて気味で活動するのは五時以降にすることとなった。
 兄貴は7時頃浜でであったという色の白い女をホテルに連れてきた。ぼくは気を
きかせて外にでていった。

 海岸を歩いているとバイクに乗った男がぼくに声をかけてきた。
「ねえちゃん、そんなところにいないでこっちにきたらいいじゃん」
ぼくは無視して歩いていった。
「無視することはないだろ」男がぼくの腕をつかむ。
「放して」
「一人でこんなところを歩いている方が悪いのさ」
 男はぼくを岩場に連れ込むと、ぼくの服を乱暴に剥ぎとった。
「お願いだからやめて」男の一物が天に向かって膨張しているのが見えた。
「いやっ!」男はパンツの中に手を入れてぎゅっと指を入れてきた。
「暴れるな」男は頬を二度叩き、一物をぼくのあそこに差し込んだ。
 そして行為が終わった後、ぼくの股から、生理とは違う赤い血が流れ、糊とは違
う白い液が流れていた。

「許さない…」そう思ったとたん、犬歯が延びてきた。横で煙草を吹かし始めた男
の喉に犬歯を差し込み血を吸った。
 最初暴れていた男だが、体内の血がなくなるにつれて身体中の精気が徐々に弱ま
っていくのがわかった。そのかわりぼくの力が増していく。男が二度がぴくぴくと
痙攣を起こして死んでしまった。
 男の血はおいしかった。今まで食べたどんな食物や飲み物とは比べようとは及ば
ない暖かく甘い血。こんなことなら早くから知るべきだった。

 ぼくは傍に落ちていた洋服を急いで着ると兄貴が待つホテルに帰っていった。
 部屋には誰もいない。聞こえるのはシャワーの音だけだ。ホテルの部屋の中に血
の匂いが充満している。思い出せば兄貴もあの連れてきた女は白くて美しい喉をし
ていた。血を吸う前なら女の喉が白かろうか黒かろうかどっちでもいいところなの
だが、ぼくが人間の血を吸った後なら兄貴の気持ちもわかる。
 あの女もいない。おそらく兄貴もぼくがやったように人目のつかない場所に埋め
るかどうかして隠したのだろう。
 兄貴が浴室から出てきた。ぼくは濡れたままの兄貴に抱きついた。そして泣いた。
人間であった惜別の思いと吸血鬼になったことの喜びを込めて!





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