#676/1336 短編
★タイトル (CNM ) 96/10/26 13: 6 ( 59)
『BRACK・LIST(1)』北埜 轍
★内容
『BRACK・LIST』
Writed By Kitaya Wadachi
「楽しい登山」
まさる:何で・・・何でこんな目してまで山登りせんとあかんのや?
しんや:まーまー、そんな事言わんと。山頂の空気はおいしいし、自然もあるし、下
界と違って涼しいで。
まさる:ええいっ。下にも空気はあるわいっ。自然もちゃんとあるし、クーラーの効
いた部屋は山頂より涼しいわっ!
しんや:何も分かっとらんのやな。あの山登りを終えた時の清々しさと解放感は下界
では味わえんぞ。
まさる:道歩いてる途中に息切れする程、脳みそに酸素送ったら、そら、ハイにもな
るわっ!
しんや:そんな捻くれた事言わんとな?ほら、きれーな花にカナブンとまってるわ。
まさる:何が「な?」や。あほか、お前は。それはハナモグリとアザミの花や。
しんや:あっ、きのこや。何や、けったいな形してるなぁ。
まさる:こらあ、それに触るなっ。猛毒のあるワライダケや。なるべく派手なきのこ
には触らんようにしろよ。
しんや:おおうっ、へ、蛇や!
まさる:ヤマカガシや。いらん事せんかったら大丈夫やけど・・・
しんや:けど?
まさる:そいつ、毒持っとる。ちょっと噛まれただけやったら、ま、心配はいらんね
んけど、うんっと噛まれたらちょっとヤバイで。
しんや:そ、そーなんか・・・あっ、あれ?・・・これ野いちごやん。おいしそーや
なー、食べてみよ。
まさる:わ、あほ、食うなよ。それは野いちごやのうて、へびいちごや。食えんぞ、
それ。
しんや:お前・・・。
まさる:ん?
しんや:山登り嫌やとか何とか言いながら、やけに詳しいやん。
まさる:それでも、嫌なもんは嫌やの!
しんや:ほな、何でここにおるんや?
まさる:・・・・・。
しんや:ま、気にせんとこ。なあ、それより何や、この板は?
まさる:踏んでみれば?そしたら分かる。
しんや:何や、ニヤニヤして。気色悪いなぁ。
まさる:ええから、ポーンと飛び乗るねん。
しんや:うりゃっ!(メリメリメリメリッ・・・じゃぷんっ)
うわー、何や、これぇっ・・・。
まさる:これはな、「野ツボ」や。
「ブラック・リスト/楽しい登山より」
今回はちょいとばかし気分を変えて対話形式で書いてみました。(しかも関西弁)お
口に合うかどうか分かりませんが、どうかご賞味下さい。
山登り・・・登山遠足・・・声を大にして申し上げましょう。
「どこが楽しいねんっ!しんどいだけやろぉぉぉぉぉっ!」
そこで思いついたのが「楽しい登山」です。
今は「野ツボ」なんてあるんでしょうか?
ま、田舎の方に行きゃあ、あるんでしょうけど。多分。
「野ツボ」をご存じで無い方に御説明しますと、たんぼや山の畑の中にある、肥料
(主に糞尿)を溜める穴があるんですね。普段は板で蓋をしてあるんですが、うっか
りそいつを踏み抜くと大変な事になっちゃう訳です。迷信を信じる昔でしたら、うっ
かりこの野ツボにはまっちゃうと、名前を変えなきゃいけないって言うんですね。う
ちの婆ちゃんなんかも名前を二回程変えてるという事です。
(後記:北埜 轍)