AWC K・K   出題者/永山


        
#529/1336 短編
★タイトル (AZA     )  95/10/31   2: 6  ( 72)
K・K   出題者/永山
★内容
*登場人物             山口伸(やまぐちしん)
片倉優右(かたくらゆうすけ)    春日菊江(かずがきくえ)
川上圭子(かわかみけいこ)     川上佳子(かわかみよしこ)
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 助手の本岡良一が謎の死を遂げて、老探偵の山口伸は少しばかり元気がなか
った。
「どうして死んだんじゃろうなあ」
「私にも分かりませんけど、いつまでも気に病んで家に閉じ込もっているのは
よくないですよ」
 時々訪ねてくれる、本岡の先輩だった川上佳子が慰めてくれた。そこで山口
は散歩に出る気になった。
「わざわざついてもらって、悪いね」
「いいえ。実は数日前まで叔母が来ていて、ここらを散歩したんです。それが
結構気に入って」
 ゆっくりついて来てくれる川上佳子。本岡の話では、彼女は人を怠けさせる
のが得意だ等と聞いていたが、そうでもないと山口は思っていた。
「お……。あれは何じゃ」
 悪くなりかけた目であるが、山口のそれは道端に落ちていた光る物を捉えた。
腰を曲げるのが億劫な山口は、川上佳子に拾ってもらう。
「まっ! きれいな指輪」
「指輪じゃと」
 山口は髭を一撫でして、彼女の手にある物をじっと見た。小さいが本物らし
い宝石が着いたリングがあった。しかもリングは金らしい。
「高価な落し物じゃな。何か手がかりはあるかの、佳子さん」
「何か内に刻んでありますわ。えっと、『5/28 K・K』ですって」
「ほほう。それだけのことが書いてあるなら、落し主もすぐに見つかるじゃろ。
警察に届けるだけでよいかの」
「はい」
 しかし近くに交番が見あたらなかったため、山口はすまないと思いながらも、
親しい片倉刑事に電話をした。
「何かあったんですか、山口さん?」
 急いで来たらしい片倉は、ボサボサ頭を気にしつつ聞いてきた。
「いや。大したことじゃないんだが、指輪を拾っての。交番が見つからんし、
わしもこの足じゃろう。悪いんじゃが君に来てもらった訳じゃよ」
「そんなことですか。まあいでしょう、もうすぐ敬老の日ですしね。川上佳子
さん、老人だからってこの人を甘やかしちゃいかんよ」
 そんなことを言った後、片倉は落ちていた場所等を詳しく聞いて、また戻っ
て行った。

 一週間ほどして、片倉刑事から山口の所へ連絡があった。持ち主が名乗り出
たと言うのだ。
「そりゃよかったではないか」
 思わず声が弾む山口。
「それがよくないんです。二人も一遍に名乗り出られちゃいまして」
 彼の話によれば、名乗り出たのは二人とも女性で、名前のイニシャルと誕生
日を根拠に自分の物だと主張していると言う。
 一人は川上圭子といい、何と山口の世話をしてくれた川上佳子の叔母であっ
た。イニシャルはK・Kで、5月28日生まれの41才だと言う。佳子が話し
ていた通り、数日前にあの散歩道を歩いた折に落としたのだと思う。そう話し
ているのだ。
「華道教室に入っていて、その会員証を証拠として持って来てます。確かに川
上圭子/41才とあるんですが、生年月日は分かりません」
 もう一人は春日菊江なる女性で、26才になるOL。婚約者が造ってくれた
物だから見間違えるはずないと言う。
「こちらはレンタルビデオ屋の会員証が証拠なんです。春日菊江/26才とあ
るんですが、これまた生年月日は不明。
 男なら免許証を取ることが多いから確認もすぐなんですが、女性の場合はね、
厄介ですねえ。二人ともまだ、言ってることが本当かどうか、確認していない
んです。ホント厄介事を持ち込んでくれますよ、山口さんは」
 ぼやく片倉刑事に向かって、山口は怒鳴った。
「何を言うとるんじゃ! 何も確認する必要なんてありゃせん。一人が嘘をつ
いているのは明白じゃ!」
「え? どっちですか?」
「川上圭子の方じゃ! 全く、あの娘め。ちょっとわしが隙を見せると付け込
みおって。大方、叔母に嘘の証言を頼んだんじゃろう。きつーいお説教とお仕
置をしてやってくれ」
 山口はそう言ってから、不機嫌そうに鼻を鳴らした。

−問題編.終わり

蛇足−−山口伸の助手・本岡良一が謎の死を遂げた事件は、「殺人事件殺人事
   件」に詳しくあります。お暇なときにどうぞ。




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