AWC 浅雨                    聖 紫


        
#511/1336 短編
★タイトル (ALN     )  95/ 9/23  20:47  ( 74)
浅雨                    聖 紫
★内容

    雨

    傘を持たない君の肩を 冷たい秋の雨が静かに濡らす 夕暮れ
    街には華やかな飾光が 灯り初めてアスファルトの色 隠して
    昨日迄の二人だったら 車を止めて君を呼び寄せるよ 苦いね

    ミラーに映る君の背中 小さくなって消えて行くけど 心には
    昨日までの君が微笑む 何時も唄っていた歌が聴こえ 痛いね
    寂しさは独り占めして 君にはあげられないよ此の侭 別離ら


    何故…

    雪が降って居ましたね 星は闇に凍えて居ましたね
    言葉なんて要らないと 分かって居たのは貴女だけ
    信じる事と疑うことを 教えてくれたのも貴女だけ
    時は巡り去る物ですか 例えば貴女が巡り去る様に
    寂しさは愛がなくても 癒せる事を知っていた貴女
    嘘の上に積み上げれば 明日の夢は何処かで崩れる
    誰よりも分かって居て 貴女は偽りの明日を信じた
    何故… 愛されたいの 何故… そんな悲しい顔で
    何故… 傷つくことも 総て分かっていて… 何故

    悲しすぎるよ…


    浅雨

    白いセーター 眩しいよ
    大きな廂の麦藁帽子は
    あの砂浜で忘れられたまま
    独りぼっちの波と何を話して居るのか

    揺れ惑う夢の色
    秋の陽射しが君を抱くよ
    恋する君の微笑は
    心切なく

    俯いた頬に
    やわらかい髪の色さえも
    枯葉色の光りに輝いて見えるのに

    瞳には涙
    悲しみは夏の小さな忘れ物

    目覚めたばかりの秋の陽射しの中で
    君の心に浅い雨が降る


    秋 1995

    小鳥達が忙しそうに空を行く
    悲しい程に美しく色づいた木の葉達の
    旅立ちの仕度を静かに見守る君は
    秋が来たわと悲しそうに呟いた

    美しい鳴の虫達さえ眠りに着くのね
    やわらかい陽射しの中にいても悲しい時には
    夏に集めた笑い声で秋を歌に変えて見ましょうか
    待ちわびる白い冬に遠い思いを寄せて静かに夢を見て

    黄金の海原を光りの風が渡り
    痛いほど濃い紫はやわらかい風に揺れて
    土耳古桔梗の鉢植えを抱えた君は
    秋が来るわと寂しそうに呟いた

    青い空さえ遠く離れて行くのね
    誰かの側にいても独りが寂しい時には
    夏に集めた光りの糸で秋を編んで見ましょうか
    白い冬に着飾るためのやわらかい陽射しを夢見て


                           聖 紫




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