AWC 旅人                    聖 紫


        
#506/1336 短編
★タイトル (ALN     )  95/ 9/16  11:42  ( 90)
旅人                    聖 紫
★内容

    旅人


    優しい光りが降り注いで居ますね

    昨夜あなたの肩を抱いた

    冷たい露を乾かす様に

    暖かい風が吹き抜けて行きますね

    熱く激しく燃えたあなたの心を笑う様に

    涼しい空が高く遠ざかりますね

    あなたを独りぼっちで取り残す様に

    繰り返すだけの季節ですか

    繰り返すだけの悲しみですか

    時には立ち止まり安らぎに心を預けてはどうですか


    皺のふえた両手を広げて眺めてみては

    何もつかめなかったその手の平に

    溢れるものは重たすぎる

    形の変わらぬものに縋り付いて

    もう変えられないあなたの愛した人に

    何処まで行けば再びめぐり逢えますか


    疲れて仕舞う事が恐くは無くなったのですね

    日溜まりの中で風と話すあなたは

    昨日よりも強く見えます

    旅の終わりに気付いたのですね

    星の明かりの下で凍えることもなく

    静かに眼を閉じたあなたは

    昨日までの眠り顔よりもとても安らかに見えます



    流れ


    時には激しく

    時には優しく

    時には若く燃えて

    時には淀み

    流れて行く

    あの海原を目指して

    繰り返す事など考えちゃ不可


    春には岸辺の花と語り

    夏には激しい蝉時雨の沢を行く

    秋には木の葉の船を運び

    冬には白い雪の冷たい心を溶かし

    流れて

    流れて

    流れて

    振り向いちゃ不可


                       聖 紫




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