AWC 「薄闇」/Tink


        
#460/1336 短編
★タイトル (DRH     )  95/ 5/25  14: 9  ( 45)
「薄闇」/Tink
★内容


 薄暗い部屋の中。
 全てを覆い隠す程に暗くなく、全てが見える程明るくはなく。
 ただ、灰色の空間にぼんやりと浮かぶ影が、視界の端に微かに見える。
 僕の目の前には君がいる。
 二重の大きな瞳、折れてしまいそうなほどに細い首。
 そして、衣服に隠された大きくない胸に、下腹部の小さな傷跡。
 全てが愛しく、全てが憎らしかった。
 動かない----動けない君の細い首に軽く手をかける。
 頬を伝う大粒の涙。
 泣いているのは君なのだろうか?
 それとも僕なのだろうか?
 視界を覆い尽くす赤い光、揺れる影。
 激しい動悸、小さな悦び。
 何よりも一緒にいたかったと言う欲求。
 軽く手に力を込めると、美しい君の顔が苦悶に充ちた表情になる。
 酸素を求め、開く口。
 そして、口から伝う唾液。
 何がそんなに君を----僕を追い詰めてしまったのだろうか。
 気がつくと、力一杯に君の首をしめていた。

     微かに
           きみの
                    口から
   漏れる
              音は
        声なのか?
    声帯の
           潰れる
                音なのか----?

 やがて、ぐったりと動かなくなった君。

   愛しい。
       憎い。
 可愛い。
                     醜い。

 乱れる感情。全ては、全ては何なのだろうか。
 リアリティの欠落。青白い君の顔。
 止まってしまった心臓。
 そう、愛しい、止まってしまった君の心臓----。

                                (おわり)




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