AWC おいしいハンバークの作り方 $フィン


        
#458/1336 短編
★タイトル (XVB     )  95/ 5/14  11:15  ( 89)
おいしいハンバークの作り方                $フィン
★内容

 公園の階段を仲良く登る子供たちは、良い子学習塾の帰りだったので、片手には学
習かばんを持っていました。
 「けんちゃん、今日の夜ごはんは何なの?」子供が一番背の高い男の子に聞きまし
た。
 「うーん、今日ママは週番だからハンバーグを作ってくれるっていってたよ」けん
ちゃんと言われた子供は心持ち嬉しそうにそう答えました。
 「わーいいなぁ、ぼく、ハンバーグは大好きなんだ」
 「ねっ、いいだろう」
 「いいんだぁ」暗い夜道を明るくしゃべりながら歩く子供たち、その足取りは若さ
に溢れ異様に軽いのです。
 公園の真ん中あたりに入ったころ、子供たちの足どりが少し変わっていきます。子
供たちの目の前に、新聞や汚い布切れをまとった乞食のおじさんが寝ていたのでした。
 「あんなところに乞食のおじさんがいるよう、ねえ けんちゃん、どうする?」い
たずらに満ちた目で聞く子供たちは、金持ちでかっこいいリーダー役のけんちゃんに
一斉に尋ねました。
 「う〜ん、どうしようかなぁ」けんちゃんはそう言いながら、ママにおねだりして
買って貰った金色の腕時計を見ました。その時計は8時45分をさしていました。
 「今日はママが帰ってくるのも遅いし・・・まだ余裕があるから、少しぐらいなら
いいだろうねっ!」けんちゃんはみんなに白い健康的な歯を見せて、笑います。
 「わーい、わーい、今夜は乞食のおじさんにあえると思って、ちゃんとこれを用意
してきたんだよ」数人の子供が、かばんから大きめのナイフを取り出して言いました。
 「みんな用意がいいんだねっ!」けんちゃんも笑いながら、学習かばんから真新し
い出刃包丁を取り出したのでした。
 「わー、すごいものを持っているのだぁ! けんちゃん、最初から乞食のおじさん
で理科のお勉強をするつもりだったのだろう」子供たちは、美しく輝く出刃包丁を見
て、うらやましそうに見ます。普通の家庭の子供はナイフは買えるのですが、けんち
ゃんが持っているような出刃包丁は高すぎて買えなかったのでした。
 子供たちはぐっすり寝ている乞食のおじさんが逃げ出さないように、そろそろと近
づいていきます。ナイフや出刃包丁を買えない可哀想な子供は公園の枝を切り取って、
野球のバットの代わりにしました。
 「うまくやるのだよ」これから起こることを想像しては、けんちゃんはにやにやと
笑いました。
 「うん」何人か子供が寝ている乞食のおじさんの手足を持って、動けないようにし
ました。
 「何をするっ」乞食のおじさんは驚いて、目が醒めて、暴れます。しかし、乞食の
おじさんは粗末な食べ物しか食べれないので、子供たちの戒めを解くことなど無理な
相談だったのです。
 「そうれっ! やっちゃえ!」一人の子供が野球バット代わりの枝を耳の中に差し
込みました。
 ぐちゅっ。耳から鼓膜が破れる音が聞こえてきます。
 「ぎゃぁぁぁぁ」耳から血を流して、乞食のおじさんはのたうちました。
 「一発でしめとちゃ駄目だよ」けんちゃんは賢かったので、忠告を忘れません。
 「うん、わかってる!」他の子供たちもこんなことは慣れたもので、いつものよう
にじわじわと乞食のおじさん虫けらのように痛めつける方法を選んだのでした。
 「命ばかりは助けてくれぇ」乞食のおじさんはとても哀しそうに悲鳴をあげます。
 「駄目ぇ、これからお勉強するのだもんっ!」けんちゃんは甲高い声でけらけら笑
いながら乞食のお腹に出刃包丁を差し込みました。
 ぐさりっ。
 どくどくどく、ぴゅー、真っ赤な血が輝く星空に高く舞い上がっていきます。
 「わーい、凄いなぁ、噴水だぁ、おじさんも血だけは出るのだね」顔面蒼白の乞食
に向けて、けんちゃんはこれまで以上にけらけらと笑い出しました。
 「このソーセージどれぐらい伸びるのだろう、そっち持っててね」それから乞食の
おじさんのお腹から腸をひっぱり出して遊んだりしました。
 「腸がぁ、腸がぁ」乞食のおじさんは息も絶え絶えに腹からこぼれでる腸を見、弱
々しくうめています。
 「こんなに伸びたよ。おじさん」けんちゃんはそう言いました、肝心の乞食のおじ
さんはもう遠い国に旅だった後だったのです。
 「ちぇ、つまんないの。いっちゃったんだ」
 ぴーぽ、ぴーぽ、ぴーぽ、そのとき、近くでサイレンの音が聞こえてきました。け
んちゃんのかっこいい顔が心持ち顔を青ざめて金時計を見ました。時間は9時を5分
だけ過ぎていました。
 「しまった。もうこんな時間になってる。みんな逃げろ」けんちゃんはみんなに大
きな声で叫びました。
 みんなばっと、蜘蛛の子が散るようにその場所から逃げ出しました。
 けんちゃんたちの世界では、良い子は9時頃までにお家に帰っていなくてはならな
かったのです。それを過ぎると悪い子になってしまって、処分されてしまうので、け
んちゃんは顔を青ざめたのです。
 白衣の大人たちが公園の中に入ってくると、逃げている子供たちに猟銃で狙いを定
めはじめました。
 ばずーん、ばずーん、ばずーん、大人たちが、全身に悪い血がまわらないように、
子供たちの頭を猟銃で一発で仕留めていきます。
 「怖いよぉぉぉぉ」
 「ママぁぁぁぁぁ」
 「まだ死にたくないよぉ」
 けんちゃんの仲間は叫びながら、脳天を打ち抜かれていきました。
 みんな殺されて、最後にはあのけんちゃんが残り、脅えきった目で白衣の大人を見
ました。けんちゃんの瞳の色はあの乞食のおじさんと同じ目の色でした。
 「どうしてなのママぁ、たった5分遅れただけなのに・・・」けんちゃんは、猟銃
を構えた大人が、けんちゃんを産んで育ててくれたママだとすぐにわかったのでした。
だってけんちゃんは今日はママが週番の食料調達係になっていたのを知っていたので
す。
 「おまえは悪い子だ」けんちゃんのママがそうつぶやくとけんちゃんのこめかみを
一発で打ち抜きました。
 こうして、けんちゃんはおいしいハンバークになったのでした。

 めでたし、めでたし。

                                                                $フィン




前のメッセージ 次のメッセージ 
「短編」一覧 $フィンの作品 $フィンのホームページ
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE