AWC 「黄昏空の下でコケた優子」          かずいさ


        
#412/1336 短編
★タイトル (RXF     )  95/ 2/22  23:47  ( 43)
「黄昏空の下でコケた優子」          かずいさ
★内容

  「昨日転んだ時にすりむいたヒザが痛いノン」
 優子はこんな事をいいながら、すりむいた膝を私にみせるのである。「まったく
 なんで転んでんよ」と私は優子に問いかけると、優子はこう答えたのである。
  「そこにマンホール見えるでしょう。あそこにヒールのカカトがひっかかって
 しまい、こけたノン」
  「この場所でこけたんか。こけた後何か残ってないか」と私がいうと、優子は
  「何も残ってないってノン」といった。「あれ。これなにさ」と私がいうと、
 優子は「え?」としたような顔で、マンホールをみつめた。
  「ほれ。この赤いヒールのカカトの部分。」
  「私のと違うノン。だって、昨日はいてたのは白色のヒールだったノン」
  「という事はなんだ。この場所で、もう一人コケたヤツがいるかもしれないと
 言うことか」と私はつぶやいた。「そうかもしれないねー。だって、このマンホ
 ールの通気の穴に、ヒールのカカトが丁度スポっとハマっちゃうモン」と優子は
 言った。
  「しかしだ、何で一個だけ残っているんだろう。」私は疑問に思った。という
 のも、「生き残った片方のヒールのカカトだけ残して、もう片方のヒールのカカ
 トはとれたままほうってかえるのだろうか? どう考えても歩きにくいじゃない
 の」・・と。その時、優子はどうしたかと尋ねると「ああ、カバンの中にさ、丁
 度買ったばかりの今はいているこの青いヒールがあったから、これで帰ったノン」
 と答えた。「そうか。まあ、はいてかえる靴があってよかったな」と私はいい、
 再び赤いヒールのカカトに目をやったのである。しかし、この赤い靴の子はどう
 したのであろうか。
 「疑問は残るが、取り敢えずマンホールを後にしよう・・・」と思った丁度その
 時、大きな叫び声と共に物が落下するような物凄い音がした。私が振り向くと、
 優子が転んでいるではないか。しかも、マンホールにまたもやヒールの足を取ら
 れ、折角買ったばかりの青いヒールのカカトがマンホールの通気の穴にスッポリ
 はまってしまっている。「あーあ、まったくドンやなあ。昨日と同じとちゃうん
 か」と私は苦笑して、優子を起こした。優子は「いったいノンー。昨日擦りむい
 た膝の上から、また擦りむいたみたいだノン」と半泣きで私に訴えている。
  「しょーがないなあ。ほれ。のりな」と私はオンブの格好をした。優子は大丈
 夫だと言っているが、顔は笑っていない。・・とにかく強引に背中に背負った。
  「まったくー、2度も同じ場所でコケるか」と私は言った。 優子は黙ってい
 た。恥ずかしかったのか痛いのか。
  空を見上げると、とてもきれいな黄昏だった。そして、振り返り、ふとマンホ
 ールをみると、赤いヒールのカカトと、優子の青いヒールのカカトが、太陽の光
 をあびて、とても輝いていたのである。
  私は「あっ」と気付いた。何に気付いたかって? それは、赤いヒールのカカ
 トが何故に残されるハメになったか・・である。

                   黄昏空の下でコケた優子  fin.

                               かずいさ




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