AWC 覆面>Poor Dish


        
#338/1336 短編
★タイトル (XVB     )  94/12/ 1   1:39  ( 56)
覆面>Poor Dish
★内容

Poor Dish
 男子たるもの、料理ぐらい作れなくては、ものの役には立たない。男子という
ものは国家存続のため、戦場で消耗されるために神が創りたまうた物だからだ。
食える物を作れなくては、戦場で何の役にも立たない。料理も出来ぬガキに、男
を名乗る資格はない。女に期待するようなガキは、マスでもかいてろ。食える物
を食って満足し、徐に鞘を払って死地に赴く。それが、日本の男なんだ。稀代の
忠臣・楠公の息子は、流石に天晴れであった。自軍に何層倍した敵を向こうに回
し、強飯(コワイイ:晒して固めた米)をかき込み、勝負をかけた。これぞ、男
子である。さぞ、旨い米であっただろう。自分の命と同じ味がしたはずだ。それ
ほどの味を堪能する機会は、残念ながら現在の日本には無い。望むべくもない。
しかし、旨い物というのは、ある。幾つか紹介してやろう。

 養殖もので良いから、鯛の刺身を買って来い。スーパーなら、八切ぐらい入っ
て400円ほどで売っている。米を炊け。半分は釜に残し、半分は杓文字でよく
切って冷蔵庫に入れろ。葱も必要だ。江戸葱なんて野蛮なものは買うな。京葱に
限る。3本で200円ぐらいだろう。京葱を5センチほど刻め。次に卵だ。一つ
で良い。カラザは、ちゃんと取っとけ。生卵にダシの素、小さい袋に入っている
なら、その半分を混ぜる。紫醤油をかけろ。混ぜたら、良い色になるだろう。釜
に入れた熱々の飯に鯛の刺身を3、4切、載っけろ。刻んだ葱を半分、そして、
溶いた卵をかけろ。混ぜてかき込め。さて、二膳目だが、鯛が残っているから、
飯に載せろ。さっき冷蔵庫に入れて、パサパサに晒した米だ。刺身のパックなら、
大根のツマが敷いてるだろ。それも、飯に載せろ。紫醤油をかけ、葱を載せろ。
シュンシュン沸いた湯をかけろ。半透明の鯛が、白濁し不透明になる。逆に大根
は、色を失い透明になる。米と湯の割合は、三、七ぐらいで湯を多くしろ。かき
込め。醤油の代わりに、海苔の佃煮をタップリ入れる手もあるぞ。

 箸置が欲しいな。玉葱を薄く刻め。刻んだら茶碗に入れて塩を一摘み、ぬるま
湯で濯げ。少しだけ揉め。揉んだら再び、ぬるま湯をかけろ。湯を捨てれば、出
来上がりだ。これの食い方には二種類ある。一はマヨネーズをかける。いま一は
鰹の削り節と酢醤油をかける。どちらにせよ、和えれば立派に一品だ。

 肉が食いたいなら豚にしろ。脂身の多いグラム100円程度の肉が、一番旨い。
フライパンに大匙3杯ぐらいの油、サラダ油でもオリーブ油でもバターでも良い
が、タップリ入れろ。好みで大蒜を油に入れても良い。白い煙が淡く立ち昇りは
じめたら、肉を敷け。その上にマスタードを小匙1杯載せろ。表の色が変わった
ら、マスタードを載せたまま、ひっくり返せ。油とマスタードは分離するから、
スケートのように、肉が泳ぐだろう。カリカリに焼け。身体には悪いが、カリカ
リに焼け。熱い飯に、フライパンに溜まった油をかけて、混ぜろ。本当は、この
段階で肉は捨てても良いのだが、もったいないから、米を食いながら、かじる。

 鶏は安くて旨いが、焼くのが大変だ。だから、煮ろ。煮るに当たって、鍋に玉
葱のみじん切りを入れて、油で炒めろ。この時、タップリの胡椒をかけろ。甘い
香りが漂うだろう。玉葱が茶色に変わったら、250ccの水を入れろ。沸騰し
たら鶏を入れろ。暫く放っておけ。真っ白く堅くなったら、肉を取り出し、灰汁
を取れ。キャベツを2、3枚ちぎって入れろ。同時にコンソメを1かけ入れろ。
更に煮て、キャベツが半透明になるまで待て。だいだい200cc足らずになっ
ているだろう。さて、肉の方だが大蒜を混ぜた油で炒めろ。焦げ目がつくくらい
に。皿に盛って、油をかけろ。鶏はパサついているから、この油で湿らせながら
食うと、ちょうど良いんだ。これで、スープと肉が食える。コンソメと一緒に、
トマトピューレを入れても良いが、少し高くつくから、思案が必要だ。味も濃く
なる。トマトピューレを入れるなら、唐辛子を刻んで半本入れたくなるな。ピリッ
として酔い覚ましに旨い。

 そろそろ腹が一杯になった。どうだ、旨かっただろう。それじゃぁな。ごちそう
さま。




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