AWC 随筆(3) 「火縄銃の魅力」  /オークフリー


        
#291/1336 短編
★タイトル (GSC     )  94/ 8/17  21:20  ( 61)
随筆(3) 「火縄銃の魅力」  /オークフリー
★内容
 今年の文化祭に、火縄銃展示会というコーナーが設けられた。愛知県古銃研究会の
ご好意で、盲学校の生徒・職員に、火縄銃を見せて下さることになり、自由に触って
もよいとのことだった。歴史好きで全盲の私にとっては、またとないチャンスで、当
日は、鉄砲隊の隊長さん始め5人の方が展示及び説明の役を勤めて下さった。
 テーブルの上に並んだ十数丁の鉄砲は、いずれも江戸時代の製作で、作者の名前と
花押が彫刻してある。火縄銃の本体は、太い樫の棒に重々しい鉄の銃身を納めた物で、
湾曲した柄の部分を右手で持ち、銃身を左手で支えて、鉄砲を頬に当て、狙いを定め
てから引き金を弾く。どの銃もぴかぴかに磨いてあり、中でも、松本城に備え付けの
銃は、手伝ってもらって持ち上げてみたら、40キロはあった。
 銃の他、火薬入れ・火打ち道具・火縄などの付属品、そして鎧の陳列もあって、児
童生徒のよい勉強になったと思う。


 上の文章は、昨年の学校便りに掲載した原稿なので、ごく短く圧縮してあるが、本
当はもっと詳しく書きたいところである。銃の一つ一つを持ち上げて、その美しい形
と特徴を観察し、木製や鹿の角製の火薬入れ・火打ち金と火打ち石・火縄・兜・鎧・
ひた垂れなどの展示物についても、係りの人の熱心な説明を聞いた。

 鉄砲も刀も鎧も兜も、砦や城郭も、全て戦のための物である。それを思うと哀れで
悲しいが、歴史を探り、いにしえの人々の生活とロマンに触れるという意味で、深い
感慨を覚えるのも事実である。


 名古屋城夏祭りの出し物の一つに『火縄銃の実演』があった。
 夕方6時半からというので、二の丸庭園に設けられた柵の周辺には、大勢の人が集
まり、実演の開始を今や遅しと待ちかねていた。
 やがて太鼓の音とともに、20人ほどの行列が見え始め、妻や子供達の説明による
と、鉄砲隊の隊長と幟を持った人を先頭に、太鼓を担ぐ人と叩く人、そして火縄銃を
持った14人の人がゆっくりと行進して来て、柵の中の台の周りに並んだ。
 城の天守閣に向かって一礼してから、火縄に点火し、口で吹いて火を大きくする。
その10分くらいの時間が非常に待ち遠しく長く感じられた。なるほど、これでは鉄
砲といっても、昔の戦は準備が大変だ。

 さて、14人の射手が台の上に上がった。私にはその姿は見えないが、昨年の文化
祭で、実際に銃を持たせてもらい、構え方・照準の合わせ方・引き金の引き方まで丁
寧に教わっている。
 突然、隊長の号令とともに、一斉に火縄銃が発射された。
 じつは私は、「実演会とは言っても、どうせ構えや撃ち方を見せてくれるだけで、
実際に発砲まではしないだろう」と決め込んでいたので、びっくりするというよりも、
まことにうれしい限りであった。
 火縄銃は形も優雅であるが、その発射音は一段と素晴らしい!
 第二次大戦中、私は環縫射撃や高射法、機銃掃射や機関銃の音もすぐ近くで聞いた
ことがある。それらはただけたたましく恐ろしいのみだったが、火縄銃は発射音にも
また情緒がある。
 情緒と言ってもそれを言葉で表現するのは難しく、要するにスカッとする音質であ
る。かなり大きな音だが耳障りでなく、腹の底に響くというよりむしろ胸から肩の辺
りに伝わってくる。低音だが、ズドーンというのではなく、ポーンまたはストーンと
いう音色と言えようか。

 30秒から1分くらい間をおいて、第二弾、第三弾、第四弾と発砲される。勿論、
弾丸は込めてないが、撃ち方も轟音も実際の物と同じである。第二団からは同時発射
ではなく、いわゆる時間差攻撃のように、1秒内外の感覚をおいて、14人が順次一
人ずつ発射する。こうしてもらうと、銘々鉄砲により微妙に発砲音が違うことが分か
り、高めの音と低い音・濁った音と澄んだ音・硬い音と柔らかな音・くすんだ音やか
すれた音など、私はそれらを一生懸命聞き分けようとした。
 第五弾、第六弾とありがたい大サービス…、そして第七弾目にはまた一斉射撃があ
り、最後にもう一度一人ずつの発射を行なって終了した。
 一同は城に向かって一礼した後、行列を作り、群衆の間をしずしずと行進しながら、
不思議な余韻をとどめて帰っていった。
     OAK





前のメッセージ 次のメッセージ 
「短編」一覧 オークフリーの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE