AWC お題>僕は君だけは許さない        $フィン


        
#95/1336 短編
★タイトル (XVB     )  93/ 7/30  15:55  (133)
お題>僕は君だけは許さない        $フィン
★内容

 「神様募集中!」

 僕が、そんな変わった求人広告を見たのは、あてにならない気象台がうっとう
しい梅雨の終わりを告げた7月某日のことであった。
 家にある14型のテレビをつけると、国民のためといいながら結局自分の私財
を肥らすために日夜活躍している政治家のおじさんたちの姿が見ることができる
し、家の外では出ると夏の代名詞、巨大な入道雲を大口をあけて観察したり、夏
の間にしか鳴かず冬には死んでしまう騒がしいセミの声も聞くこともできる、何
の不安もない平穏な一般的日本国民の見本のような生活を営む僕にとって、その
神様募集中の広告は電気のコンセントに指を突っ込んだのと同じぐらい刺激的な
ものであった。
 僕は、その中で書かれている募集内容を目を皿のようにして見た。
 なになに、応募方法は下記のとおりです。
 ふむ下記か。僕は見た。
 「あなたもわたしも濡れ濡れです。」
 ん? なんじゃこりゃあ、これじゃQ2じゃないか。
 僕はもう一度見た。
 思ったとおりQ2の広告だった。僕はいつも見ているエロQ2のところを誤っ
て見ていたのだった。習慣とは恐ろしいものだ。
 それにしても僕は神様になれると思うだけでもかなり動揺している。僕はシャ
イな性格なのだろうか、それともただの抜けているだけか。
 僕はなんの脈略もなく大きく深呼吸して、頭をくしゃくしゃと掻いた。それだ
けで気分が落ち着いたような気がした。
 僕は再び下記を見た。
 そこには「104に電話してください」と書かれているだけだった。
 僕はさっそく104に電話した。
「もしもし」僕は104は番号案内と同じ番号だなと思いながら聞いた。
「はい、こちらは某有名企業です」
 思ったとおり1株100万単位で善良な国民に売り飛ばして、バブルの犠牲者
を大勢出した某有名企業のオペレーターのねえちゃんだった。
 僕はラッキー! 心が弾んでいた。
 おばんの声を聞くより若いねえちゃんの声を聞く方が、精神衛生上よろしい。
「あのう、神様募集中の広告を見たものですが」僕は言っても無駄だろうなと内
心覚悟して、声だけ美人のオペレータのねえちゃんに聞いた。
「ああ、あれですか、こちらから直接神様にお繋ぎします」ねえちゃんは僕の前
途を明るくさせるような、とっても明るい声(嫌みなほど明るい声だった)で言
った。
 プープープープー電話を接続する音が聞こえた。
 さすがは某有名企業やることが大きい。天界まで電話回線を通じていたのか。
うんうんと首を縦に振って感心する僕だった。
 感心している間もプープープーと鳴りつづけ、いきなりピーに変わった。
 どうやらうまくアクセスできたようだった。
「ようこそいらっしゃいました。天界の通信回線です。」股間をしびれさすよう
な美的に明るい声が聞こえた。
 さすがは天界、某有名企業のねえちゃんは、明るいだけだったが、天界のオペ
レータのねえちゃんはそれに美しさが混じっている。
「神様募集中の広告を見たものなのですが」僕は芸がないなと思いながら、先ほ
どの某有名企業のオペレーターのねえちゃんに言ったのと同じ台詞を言った。
「ああ、あれですか、こちらから担当のものにお繋ぎします。」これもまた、某
有名企業のオペレーターのねえちゃんと同じ台詞だった。
 プープープープー電話を接続する音が聞こえた。
 そして、プープープーからピーに変わった。
 どうやらうまくアクセスできたようだった。
「神様募集中の広告を見たものなのですが」僕はどんな声だけ美人がでてくるの
かほんの少し期待をしながら言った。
 はずれだった。
 僕の電話の相手はおじさんだった。
「やあやあ、待っていたよ。神様募集中の広告を出しても誰も応募が現れないか
らどうしようかと思っていたものだよ」僕があの広告が真面目なものであったの
なら、僕の相手は神様のひとりなのだろう。神にしてはこいつ変になれなれしい。
 僕の想像していた神は威厳があって近づくのも恐れおおいようなものであった。
 もしかしたら、僕は何かとんでもない間違いをおかしたのではないだろうか。
 僕はこのとき初めて背筋にぞっとするものを感じた。後になってこの直感が正
しく、このときすぐに電話をきればよかったとつくづく後悔するのだが、神なら
ぬただの平凡で善良な一市民であった僕には、この後どんなわなが待ち受けてい
るのか知るはずもなかったのだが。
「合格だよ」神様は言った。
「えっ、僕何にも言っていませんけど」
「神を甘くみちゃ困る。君が電話を掛けている間、君のことは調べさせて貰った。
君の性格は実に神様にむいている。だから合格だよ」
「ははははは・・・」僕は笑った。
 何故このとき笑ったのか僕はわからない。今にして思えば生贄になったものの
空しい笑いだったような気もする。
「何を笑っているのかね、さあ神について詳しいことを知りたいだろう、ドアを
あけてごらん」電話の神様は言った。
 僕はドアを開けた。
 ドアをあけると、永遠に続く白い階段があった。
「な・・・」僕は絶句した。
「驚くことはない。神は偉大だ。天界と地上の通路を開けることなどおちゃのこ
さいさい」
 神様の中にも一般庶民が使うような言葉があるのか。
 僕は神様に親密感を覚えた。
 天界に電話をかけることができるものが、神様の第一段階の資格を有するもの
だと後になって知った。
 親密感を覚えることそのものが、同僚に対するものだとこのときは気がつかな
かった。
 僕はすでに神となっていたのだった。
 僕は、電話をきり、天界へ続く階段を登っていった。

 それから後のことは僕は話したくない。
 考えただけで虫酸がはしる。
 どうしても知りたいという人がいるようだからかいつまんで紹介しようか?
 白い階段の先は、天界が待っていて、そこで神様のいいところばかりきいて、
僕は羊の皮で造った紙に血を滴り落として契約してしまった。
 血の契約したあと、違反した場合についての説明を受けた。
 その説明はえげつなかった。
 僕は何度も何度も吐いた。
 それでも説明は続けられた。
 死ぬほど吐いた。
 神の契約をしてしまった僕は死ねなかった。
 死んだほうがましだった。
 契約違反した場合の処罰は死んだほうがましだと思うほどえげつないものだっ
た。
 こうして僕は、神様募集中の広告を見て、軽い気持ちで電話をかけただけだっ
たのに、神様にされてしまったのだ。

 神様はいいものなのに、そんなに卑屈になっているのだって? そりゃあギリ
シャとか古事記で書かれている普通の神様だと僕も喜んでやるよ。
 でもねえ昔と違って、神々の世界でも男女平等とかいって、だれでもどんな神
にもなれるんだよ。便所の神でもね。
 そうだよ、驚かなくてもいいんだよ。僕は便所の神さまだよ。
 君、ほらそこで大と小以外のものを気持ちよさそうになにをしている君のこと
だよ。神さまにそんなものをかけて無事で済むと思っているのかい。
 僕はそのたびに、「僕は君だけは許せない」と言ってあげたいのだけど、僕は
右手と左手で大と小を掴めることはできても他のものは顔にかかってくるので何
もしゃべることができないのだよ。
 君と僕が反対の立場だと考えてごらん。おぞましいだろう。嫌だろう。僕はや
おいじゃないし、君もそうじゃないだろう?
 そんなもの欲しくないね。嫌だね。
 嫌だけど、僕は哀しいことに神の身を降りるわけにはいかないんだよ。契約違
反した場合の処罰の方がもっとげろげろなので嫌だね。
 それほど神様の世界は厳しいのだよ。

 あっ、そうそう君に言い忘れていたがあったよ。
 僕が便所の神様になったのは人より回数が多くて、前の便所の神様の推薦があ
ったといわれているんだよ。
 だから、僕の推薦を受けないように君もそれだけは止めた方がいいと思うよ。

                                $フィン

PS.便所の神について詳細を知りたい方は某SIG某ボードの某人のmsgを
   見てください。(ほんの少しCMしちゃおう 笑)




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