AWC 終焉              椿 美枝子


        
#86/1336 短編
★タイトル (RMM     )  93/ 7/13   1:48  ( 26)
      終焉              椿 美枝子
★内容
 二、三歩先を歩っていただけだった、それが不幸だった、それが不運だった。
ただ抱きすくめられた、鼓動は同じだった、別れの時間だった。
 私の歩く時間はあなたより先、あなたの望む時間に私はもういられない。そん
なすれ違いは最初からわかっていた、はじめから無理な組み合わせだった、だか
ら全てを止めようとした、鼓動だけが止まらなかった、止める術を知らなかった、
消費するだけの関係は、けれど行く先がないと、それだけ何よりもはっきりして
いた。
「出直してらっしゃい」それは優しさの積もり、「あなたには余裕がないわ」そ
れを見せられると私にだって余裕がなくなる、「今は辛くても人生なんて長いん
だから」今一番あなたが欲しいのは私も同じ、「だからさようなら」そう言わな
くてはならない、もう、決めてしまった事。
 唇の温もりはその時の絶対に思えるけれどやがて色あせてゆく、そして、どん
な快感も満足も、やがては終わる時の中。先に気付いて先に覚めたらそれで、お
しまい。
 恨んで頂戴。憎んで頂戴。やがて忘れて頂戴。そしてそれで、何も壊さずにす
むのなら、そう、私の為に。
 引き換えにするものが少ない内に、流す涙の量が少ない内に、呑み込む繰り言
と酒の量が少ない内に。少しづつ、別れが上手になるまで。やがて、恋をしなく
なるまで。

 後悔なんかしない。一度も名を呼べなかったのが少し、悲しいけれど。


                  了

                       1993.06.16.26:00




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