#39/1336 短編
★タイトル (ZQG ) 93/ 5/19 4:12 ( 82)
<お題> 青空 (2) 【惑星人奈宇】
★内容
青い空を見ていたら、外に出たくなった。
眠気に誘われるような四月下旬の午後、春男はすうううっと吸い込まれそうに
なる空を見ながら、庭にある椅子に座ってそよ風に吹かれていた。
「何しているんだい。ぼおおおっと」
散歩がてらに寄った安男は春男がぼおおっと空を見ているのを見て話しかけた。
「空を見ていたんだ」
「無の青空か。空しいねえ」
「色づいているから無では無いよ」
「空気を見ていたのか。暇だねえ」
「真空ではないからな。えええっと酸素と窒素それに・・・」
「わかったよ。要するにエアを見てたんだろう」
春男は安男の来訪に喜びを感じ、この前の夢のような出来事を話し始めた。
「この前さ、狐が嫁入りをするから暫く家の中で静かにしていなさいと御告げが
有ったんだ。それで雨上がりの外をぼんやりと見てたんだ。優しくて色鮮やかに
生き返ったような花と葉、それに木の葉がそこには有ったんだ。見ていても目が
痛く成らない優しさやった。あれあれっ、ダイヤモンドが葉の上や先端に沢山見
えるでは有りませんか。びっくりしてしまってよ。5分程ドキドキドキドキして
静かに見ていたよ」
「お告げが有って、それから木の葉にダイヤモンドか!普通では無いよ」
「小豆くらいの大きさのが、虹色に黄金色に沢山輝いていたんだ」
「それ、勿論!木の葉から取って保管してあるんだろ」
「外出禁止解除の御告げがあって早速外に出たんだ。もうダイヤモンドは無かっ
たよ」
「そのダイヤモンドって葉に着いてた水滴だなんては言わないだろうな」
「勿論だよ。その時は狐の嫁入りの日だったから、狐が魔法でダイヤモンドを沢
山葉に付けて飾ってたんだよ。きっとそうだよ」
「狐の魔法だったのか」
安男は、春男が作り話のようなことをシャアシャアと言っているのに、真面目
に聞いていた。
「春男はダイヤモンドが好きなのか」
「ダイヤモンドを部屋一杯に飾ってさ、幻想的味わいを実感し、電灯料金を節約
するのさ」
「夢のような話だね」
「それで寒い時には、ダイヤモンドを火鉢の中に入れ燃やして暖まるんだ」
「えっ、燃やすの。もったいない」
「燃やすと七色の光を発するんだ。その光にはエネルギーが沢山含まれていて、い
つまでも身体を暖かく保つんだとさ」
安男は春男の話に驚いてひっくり返りそうであった。
「それで春男はダイヤモンド沢山持っているの?」
「いやあ、その・・・。ダイヤモンドが沢山有ったらなあと思ってたんだ」
「無いよ。でもダイヤモンドは炭素だから合成できるよ」
春男は安男の簡単に言う言葉にびっくりした。
「安男は、自分でダイヤモンドを作れるとでも思っているのか」
「勿論だ。聞きたいか」
「炭素の塊を圧縮すれば出来ることくらいは知っているよ」
「だろう。炭素を圧縮すると。た、ただよ」
「ただよでは無いよ。たそだよ」
二人は駄じゃれを言い合って青空に言葉を投げた。
「まず、炭素の塊である石墨を1000度にまで温めて、400気圧で押えるんだ」
「そなこと家では出来ないよ。安男こそ夢みたいなことを言って何なのだ」
「だからさ、海底火山のある海溝に沈めて作るのさ」
「成る程。それなら安男のダイヤモンドに期待だ」
「海底火山はちと無理だな。そうだな、台所で作る方法を教えるよ。ステンレス
パイプに角砂糖のような大きさの石墨を10個程入れ、アルゴンガスを200気
圧入れて封をするのさ。そしてこれを煉瓦で囲まれたガスコンロの上でゆっくり
と熱するんだ。三時間か五時間程でダイヤモンドの出来上りだ」
「危ない危ない。とても出来ないよ」
「だったら、狐に作って貰いなさいよ」
「だからあ。ダイヤ、も、ドンなのさ。ダイヤは雲みたいに遠い存在で手に取れ
ない物なのだ」
この時、青空に白いような輝かしい物が突然現れたような気がした。ダイヤモ
ンドの話に夢中に成りすぎて、夢を見てしまったのだ。春男と安男はふと不安に
成った。でも夜に成れば空一杯にダイヤモンドが輝いていることに思い到り広い
庭の見晴らしの良い所にある腰掛けから立ち上がった。青空がそよ風の上に広が
っていた。
********** 完 **********