AWC コドクノ「人」ガエラレナカッタ、アタタカイ「宝物」3  しのぶ


        
#4472/5495 長編
★タイトル (PTN     )  98/ 4/19  18:19  ( 96)
コドクノ「人」ガエラレナカッタ、アタタカイ「宝物」3  しのぶ
★内容

 マユカが部屋にはいって、インストールを起き上がらせ背中を開いて
もまだインストールはマユカが来たことに気づいていない。
 もう気づくだけの力がないのか、それとももう力尽きたのか・・・?
 背中を開いて中にある予備のバッテリーを残しておき、もう一つの普
段使うバッテリーを取って、手にある新しいものと取り替えた。
 予備のバッテリーがあったということは、今までそれを使っていたと
いうことだ。おそらく故障か何かで気づかなかったのだろう。
「お願いだから神様・・・・・わたしのインストールを返して!」
 両手を握り締めてマユカは祈った。無事にもどったら毎日わたしが点
検するから、もう課題を手伝ってとか言わないから・・・・だから・・・
 やがて、マユカがゆっくりと目を開けると・・・・・・・・・・・・・
「ありがとう、マユカ」
 目のまえでインストールが笑っていた。
「・・・・・・!・・・・・・インストール・・・・・よかった・・・よかった・・」
 マユカはへなへなへなと力がぬけて座り込んでしまった。
「すいません、マユカ。心配をかけてしまいました」
「かけたわよ!もう!!」
 泣きじゃくるマユカにインストールは苦笑して
「泣かないでくださいよ。わたしはそんなにマユカが思ってくれて嬉し
かったですよ」
「泣いてなんかいない!けど・・・・インストール、戻ってきてよかった」
 インストールは無言でマユカを抱き締めて言った。
「ほんとにすいません。けどよくバッテリーを探せませたね。あんなに
ダンボール箱があったのに」
「へへ、あとで教えてあげる・・・・・あれ?インストール、箱が・・・・・開い
てる!」
「え?」
 マユカに言われてインストールが後ろを振りかえると、そこには倉庫
で見つけたマユカの祖父の箱が開いていた。
 マユカが近寄って箱の中身をのぞいてみると、そこには一つの手紙が
あった。
「これは・・・・・!」

 <  わが子孫よ・・・・おそらくお前はわたしの名を知っていると >
   思う。
    わたしは父に早くから死なれ、母は仕事にいそがしく、家
   族ですごす思い出と言うものがなかった。
    科学者でもあったわたしは、父と母の面影を思いえがきな
   がら二つの発明をした。
    ひとつはインストール。そしてもう一つはこの箱だ。
    わたしは母のように仕事ばかりになりたくはなかったが、
   世間がそれを許さないらしい。
    そこで息子に自分のかわりにインストールを授けようと思
   う。
    インストールは知ってのとうり、少しだが感情をもつロボ
   ットだ。
    そしてこの箱は、感情をよみとる箱である。
    強い、他人への思いを近くで感じると、自然に箱が開くよ
   うになっている。
    わたしはほとんど他人から思われたことがなく、また逆に
   思ったこともない。
    そんなわたしが造ったこの箱は、まだ学会に発表していな
   いものだ。
    わが子の中にこの箱を開けるほど思いが強いものがいたの
   なら、この箱を授けよう。
    学会に発表してもよし、しなくてもよし。
    おまえの自由だ。
    この箱を開けてくれたことに感謝する。
    この箱はおまえだけの箱だ・・・・・・

 <            ロバート・インストール      >
 

「そうだったのね」
 読みおえてからマユカつぶやいた。
「旦那様は寂しかったのですね」
 ふう、とインストールは三回目のため息をついた。
「それで、マユカはどうします?」
「何が?」
「この箱をです。学会に発表したら、また大騒ぎですよ」
「どういうこと?」
 またというところが気になってマユカは聞いた。
「わたしが学会にいった時も大騒ぎだったんですよ。まだマユカは生ま
れていませんが」
「ふ〜ん、おもしろい?」
「そりゃぁ、おもしろいです。おじさん達が慌てふためく顔が・・・」
 ぷぷ、と思い出したのか、インストールがしのび笑いをする。
「おもしろいのか〜、けどね、もう決めた」
「どうするんです?」
 インストールが興味津々に聞いてくる。
「わたしもおじい様みたいに手紙を書くの、またわたしみたいに箱を開
ける人がいるかもしれないでしょ?」
「なるほど、で、なんて書くんですか?」
「こう書くの
 わが子孫よ、おそらくおまえはわたしの名を知らないと思う。
 だが忠告を聞いてほしい。
 人を失ないそうになる時の悲しみは大変なものだ。
 だから・・・・・」
「だから・・・何ですか?」
 マユカがもったいぶっているので、インストールが我慢し切れずに催
促する。
 それにマユカは胸をはって言った。
「こんな風に言うのよ!
 『インストールのバッテリーを交換することを忘れるな』ってね!」





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