#4095/5495 長編
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代償 第二部 18 リーベルG
★内容
18
9月12日木曜日晴れ。
とても悲しいできごとがあった。給食のとき、後ろの席の天野さんがあたし
のスカートのポケットに牛乳を流し込んだ。あたしがびっくりして立ち上がる
と、牛乳のしぶきが天野さんの給食にかかった。すると天野さんは、八宝菜の
お椀ををつかんで、中身をあたしの顔にかけた。
それから天野さんは、どうしてくれるのよ、と言ってあたしをなじった。あ
たしは、最初に牛乳をかけたのはそっちでしょう、と文句を言った。天野さん
は怒りだし、そこに朝倉が出てきてこういった。みんなでどっちが悪いか決め
ましょう。
あたしと天野さんは教壇に上がらされて、それぞれ言い分を言わされた。で
もあたしは本当のことを言ったのに、途中でみんながウソつき、とか、引っ込
めとか言い出して、全部しゃべることができなかった。天野さんは自分がやっ
たことは一言も言わず、ただあたしが牛乳をかけたことだけ言った。
その後、天野さんが悪いと思う人は手を上げて下さい、とクラスのみんなに
言った。誰も手をあげなかった。大菅さんが悪いと思う人、って言ったときは
全員が手をあげた。
朝倉はあたしに向かって、あんたはウソをついたんだから罰を与えなければ
ならない、といった。あたしは逃げようとしたけど、藤澤と岩田につかまえら
れた。
朝倉は藤澤と岩田に命令して、あたしの制服を脱がせた。男子は大喜びで、
前の方に集まって、あたしが制服を脱がされるのを見ていた。とっても恥ずか
しかった。ブラとパンツだけにされると、天野が残りの牛乳パックをもってあ
たしの前に立って、中の牛乳を頭からかけはじめた。
それが終わると、あたしは泣きながら教室を飛び出して、トイレに入った。
天野と朝倉と藤澤がついてきた。あたしがハンカチと雑巾で身体を拭き始めた
ら、外から天野の声がした。流してあげるよ、加代坊。
同時に上からバケツに入った水がかけられた。三人はげらげら笑うと、その
まま教室に戻っていった。
あたしは泣きながら身体を拭いて制服を着た。五限めがはじまるちょっと前
に教室に戻ったら、机の上には食べかけの給食が残ったままになっていた。パ
ンも八宝菜もフルーツゼリーもサラダも牛乳がかけられていた。
天野は、あんたがお腹を空かせてると思って、わざわざ残しておいてあげた
のよ。ちゃんと全部食べなよ、と言った。
あたしは全部食べた。食べながら泣いたけど、誰も助けてくれなかった。
今まで天野はあたしをいじめたりしなかったし、ときどき、あたしに親切に
してくれたこともあった。あたしのことを加代坊って呼んでいるけど、ばかに
して呼んでいるんじゃなかった。ひょっとして友だちになれるかもしれないと
か思ったこともあった。
でも、それは全部間違いだった。いじめられたことより、裏切られたことの
方がショックだった。
あたしは友だちができるかもしれないなんていう望みを持っちゃいけないの
かもしれない。あたしにそんな価値なんかないのかもしれない。あたしがそん
なことを思っていたから、ばちがあたったのかもしれない。
あたしには友だちがいない。あたしにいるのは姉さんだけ。